子どもの虐待防止へ—どうする!?児童相談所~田中まさや区議会議員が区政リポート9月6日号を発行しました
自治権確立特別委員会に渋谷区の現状を報告
子どもの虐待防止へ—どうする!?児童相談所
2010年1月、江戸川区で発生した当時小学1年生の虐待死亡事件は、全国的にも大きな衝撃を与えました。最近でも、隣の目黒区、千葉県や鹿児島県でも虐待死亡事件が相次いでいることからも、子どもを虐待からどう守るかは、国民的な課題となっています。子どもを虐待から守るために役割の発揮が求められているのが児童相談所です。
2010年の事件をきっかけに、国は、2016年に児童福祉法等を改正し、特別区でも児童相談所が設置できることになりました。2020年4月には世田谷区、江戸川区が、7月には荒川区が開設予定で、港区などでも計画が進んでいます
私が委員長を務める自治権確立特別委員会では、9月3日の委員会で、所管の子ども家庭部(児童相談所移管準備担当課長)から、渋谷区の取り組みの現状について報告を受けました。(左記参照)
児童相談所(児相)とは
児童相談所は、児童福祉法に基づき「子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護する」ための行政機関で、子どもに関するあらゆる相談に応じ、親とともに問題解決にあたる役割を果たします。基本的機能として、①市町村援助機能、②相談機能、③一時保護機能、④措置機能があり、親権停止の請求など民法上の権限も有します。現在、都内には、東京都が設置する11の児相があり、渋谷区では、子ども家庭支援センターが中心となって、都の児相と連携をとっています。
各区で児童相談所を設置するためには、こうした機能を果たす施設と体制を整備する必要がありますが、区の検討経過にあるように、「人とお金、場所の確保」は大きな課題です。また、区が児相を整備・運営するための財源については都と区の調整さえついていおらず、先行区は、全額区の負担で整備を進めていのが現状です。
子どもを虐待から守る自治体の役割
貧困や子育て困難、孤立、暴力容認など、虐待の原因となりうる課題を解決するには一定期間が必要です。しかし、子どもを虐待から守り、すべての子どもの健やかな成長を保障する自治体の役割を考えれば、いまできる最大限の努力が求められます。
江戸川区は、「児童相談所開設に向けた計画書」で、「全ての子どもが等しく持つ権利(生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利)を保障し、区民生活に密着した基礎自治体として、地域住民、関係機関と連携し、いかなる支援、措置においても子どもの最善の利益を優先した相談援助活動を実施」を目指すと、区独自の児相を整備する目的を明記しています。
妊娠届・母子手帳交付、保育園・幼稚園、小中学校などは区が実施する事業です。子どもに最も身近な自治体だからこそ、虐待の防止、根絶に大きな役割が果たせるはずです。
児童相談所移管に係る検討経過について
9月3日 自治権確立特別委員会資料より
1.これまで検討結果
⑴平成28年6月 児童福祉法等の一部を改正する法律公布
特別区においても中核市同様、児童相談所の設置が可能となる。
⑵平成29年2月 特別区長会
選考設置モデル3区(世田谷区、荒川区、江戸川区)を選定し、都と児童相談所設置計画案の確定作業を開始することを決定。
⑶令和元年6月 児童福祉法等の一部を改正する法律公布
児童福祉司の配置数や専門性の確保など、児童相談所の更なる体制強化が規定された。
2.児童相談所設置に向けた課題
⑴児童福祉司など職員の確保と育成
令和元年の法改正により、児童福祉司の配置数が増えるとともに、医師・保健師・弁護士等の専門職の配置が義務付けられたため、さらに人材の確保が困難。
また、児童福祉司や児童心理司の専門性確保のため、任用前後の研修が義務化されたが、研修機会の確保や派遣研修の受け入れ先確保が困難。
⑵児童相談所と一時保護所などの施設整備
今後予想される児童相談所と一時保護所などの施設整備の質的向上を踏まえたうえで、土地の確保と建築費に多額の財源が必要。
3.渋谷区の取組み
⑴「渋谷区子育てネウボラ」体制強化による虐待予防の徹底
今年度から開始した「渋谷区子育てネウボラ」体制により、妊娠期から虐待をさせない子育て環境を整備して、虐待の原因となる育児の悩みを早期に解消する相談支援体制を強化する。
⑵専門スキルをもった職員の確保と育成
福祉職・新離職の育成においては「渋谷区子育てネウボラ」をはじめ、それぞれの専門性を活かして働ける職場への配置やキャリアアップ支援を行うとともに、引き続き児童相談所設置予定の近隣区や東京都と連携して人材育成を行うことで、児童相談所業務を担うことができる職員を育成する。