都議会 総務委員会報告(その1)

活動報告

東京都第一回定例都議会が2月16日から3月25日まで開かれています。

総務委員会が4日間開かれ質問をしました。

1日目は選挙管理委員会に係って、私は障害のある方の投票環境について質問をしました。昨年も質疑で取り上げましたが、改善されない部分が残ったままです。

昨年の衆院選後、私は視覚障害のある方から実際に、投票する時に不自由を感じたことや自分たちの参政権が守られているか、改善すべき点等お話を聞いていたので、そのことについて質問しました。

衆院選と同時に行われる裁判官の国民審査は、視覚障害がある方の点字投票は目が見える人の投票と違って、不信任の場合は候補者の名前をすべて点字で打たなければなりません。そのこと自体が障害者差別ですから、国に法改正を求めることを東京都に求めています。

 

【障害を持つ方の投票環境についての質問】

〇福手ゆう子 視覚障害の方が点字で投票する際、投票所には6行書きの点字板が用意されています。裁判所の国民審査は11名が審査の対象なので11名書けるようになってないといけませんが、6行書きの点字板だと1行に1名でなく、名前をつなげて点字をうたなければならず、そうすると、少しでも手を離したらわからなくなってしまった、という声がよせられました。

16行書くことができる点字版に買い替えをしてほしい、携帯版は使いづらいので卓上型にしてほしいとの声があります。要望に応える予算にしていただきたいが、いかがですか。

東京都選挙管理委員会は、区市町村選挙管理委員会に「事務処理の手引き」に基づいて障害者対応用の備品を配備することを求めていることと、その手引きには標準型の点字器(16行の点字板)が掲載されていて、説明もしていると答えました。また、区市町村選管が配備した障害者対応のための資機材の経費は交付金が出るということも答えました。

16行の点字板(写真)

〇福手ゆう子 昨年の衆院選、国民審査の期日前投票では、点字の候補者名簿がなかった自治体がありました。何の情報ないため読み上げてもらった人や、また投票をあきらめた人もいたそうです。参政権を保障するため、障害者への合理的配慮の点でも、初日から点字の名簿を置くのは最低限必要ですが、認識と対応をうかがいます。

東京都選挙管理委員会は、選挙や国民審査で、点字版の候補者氏名等や裁判官一覧は、区市町村選挙管理委員会の要望に応じて作製し配布したのですが、立候補の届出を締切り、立候補者が確定してからの作成となるため、配布まで通常1週間を要すると答えました。

また、点字版の名簿ができない間は各投票所で、読み上げや備え付けの状況を問い合わせるようホームページなどで周知していると答えました。

点字の名簿が配布されるまで1週間もかかるのでは、視覚障害者が投票するのに情報が本当に不十分だという実態がわかります。希望者を事前に把握し、いち早く届けるなどの工夫をするよう求めました。

〇福手ゆう子 投票箱の点字の徹底がされていない自治体があります。都選管はシールを作って各区市に配布していますが、全自治体で貼るように徹底することが必要と思いますがいかがですか。

東京都選挙管理委員会は、投票箱に点字シールを貼付することを事務説明会や会議等を通じて周知していきますと、答えました。

今年は夏に参院選があります。選挙区の投票と比例代表の投票と2回投票があるので、箱に点字シールが貼られているかどうかを徹底してほしいとお願いしました。

〇福手ゆう子 投票所の入口に段差がある、または投票所が別のフロアにある投票所は全部でいくつありますか。そのうち、簡易スロープ設置していたところはいくつですか。現状の到達と、改善するための予算を求めてうかがいます。

東京都選挙管理委員会は、昨夏の都議会議員選挙で、入口に段差のある投票所は1038か所、入口と同一フロアにない投票所は95か所あると答えました。

さらに、入口に段差のある投票所のうち、簡易スロープを設置した投票所は855か所で、この他183か所の投票所は、人的介助や手摺の設置などの対応を図っているとのことでした。

障がい者団体が行ったアンケートには、「電動車いすを持ち上げてもらい心苦しかった」という声が寄せられていました。やはり、人的介助や手すりがあるだけでは不十分だということだと思います。改善のための検討を求めました。

【知的発達障害者の選挙と投票支援について】

狛江市では、知的発達障害のある方の投票支援の取り組みが行われています。https://www.city.komae.tokyo.jp/index.cfm/46,92842,c,html/92842/wakariyasuitebiki.pdf

狛江市は市内の親の会や特別支援学校の先生や作業所の職員の方等との協同で、「知的発達障害者のためのわかりやすい主権者教育の手引き」が作られ、それは、総務省の優良事例普及推進事業として全国の特別支援学校に配布をされています。

わかりやすく選挙のしくみなどを教える教材としての活用もありますが、知的発達障害者が投票することの認識や、当事者の意思決定に対する認識を、当事者でなく周囲のひとに向けて伝える中身でもあることが非常に重要だと私は思いました。知的発達障害のある方が「投票できるのか」という声がまだあるのが実態です。

〇福手ゆう子 知的発達障害者が選挙に参加するには、障害者理解が何より重要だと思いますが、このことについての都選管の認識と取り組みを伺います。

東京都選挙管理委員会は、知的・発達障害を有する方の障害の状況は、障害の種別や程度、障害の生じた時期により一人ひとり異なるものと認識し、投票所の事務を担う区市町村の事務従事者が、有権者の個々の状況を理解し、障害の状況に沿って対応することが必要と、答えました。都選管としては、区市町村選管の職員を対象に研修や、東京都心身障害者福祉センターの講義「投票所における障害のある方への接遇」を行っています。

障害者団体の行ったアンケートでは「投票に行くとじろじろ見られる」など声があげられていました。物理的なバリアを解消するだけでなく、理解が全体的に広がることが重要です。

 私が、この狛江市の手引きでとても印象に残ったのは、知的発達障がい者の当事者団体の方が主体となり「わかりやすい選挙公報誌」を作っているところでした。さらに調べてみると「わかりやすい政見動画配信」もやっていました。

これらの内容はシンプルで読みやすく、当事者が立候補者のページを切り取って投票所に持参できる工夫などもされていて、とても画期的でした。公選法の下でできる、柔軟な取り組みが非常に印象に残りました。行政の協力も欠かせないことを実行委員のメンバーの方から伺いました。狛江市の取り組みがテレビや新聞などで取り上げられ、それを見た方から「知的障害がある孫に伝えたい」と連絡があったようです。当事者周辺だけでなく、みんなの取り組みにしていくことが非常に重要で、そのうえで都選管の役割が非常に重要です。

参政権は全ての人に等しく保障された権利です。参政権を行使して、よりよい社会に変えていく力です。障害のある方への差別をなくす社会を作っていくために力を合わせましょう。