議員の発言権侵害について語る 

活動報告

日本共産党都議 福手ゆう子・原のり子対談

「議員の発言権侵害について語る」

 

こども基本条例にもとづき、朝鮮学校への補助金復活を要求した福手都議

都民ファ・公明・自民が発言取り消しの動議を可決

議員の発言権・質問権を侵害 取り消しに応じず

 

 

 都議会第1回定例会で異常な事態が起きました。予算特別委員会の最終日(3月26日)でのことです。

東京都こども基本条例についての福手ゆう子都議の質問(3月13日)に対し、都民ファ・公明・自民が発言の取り消しを求める動議を提出し、原のり子都議が共産党都議団を代表して、動議の撤回を求める意見表明(※)を行いました。 

※ 意見表明の内容はこちら https://www.jcptogidan.gr.jp/report/7875/

動議は可決されましたが、福手都議は発言の取り消しに応じず、議事録として残りました。都議会で何があったのか。福手ゆう子都議と原のり子都議が語り合いました。

 

 

■何を質問したのか

 

福手ゆう子 私は、こども基本条例の「学ぶ権利」について質問しました。質問の背景には、朝鮮学校の補助金問題があります。

東京都は都内に10校ある朝鮮学校に対してだけ補助金(私立外国人学校教育運営費補助)を出していないんですね。石原元知事の時代から14年間も停止したままになっています。

都のこども基本条例(2021年4月施行)、人権尊重条例(2018年10月施行)に照らせば、朝鮮学校の子どもたちだけを排除するのは許されないことだ、補助金支給をただちに再開すべきだ、ということを明らかにするための質問でした。

 

原のり子 質問のなかで福手さんは、署名のことを紹介していましたね。

 

福手ゆう子 はい。朝鮮学校保護者のみなさんが取り組んでいる補助金復活を求める署名がものすごい勢いで集まっているさなかの質問でした。

「僕たちを仲間はずれにしないでと集まった署名は、1万8127筆、2月に生活文化スポーツ局に提出した後も、どんどん集まっています」と紹介しました。4カ月余りという短期間に集めたもので、「東京都の対応、注目されている証拠です」と訴えました。

 私と原さんが総務委員として活動していた昨年3月には、朝鮮学校に通う子どもたちが「自分たちの声を直接、都に届けたい」ということで、こども基本条例ができたもとで初めて、子どもたち自身が自分たちの声を都に直接手渡しました。文書質問で私は、直接受け取った子供政策連携室に「ちゃんと読んだのか」と質問して、読んでいることを確認しました。

 

原のり子 その声も予算特別委員会の質問で紹介していましたね。

 

福手ゆう子 こういうふうに言いました。

「子どもの声の中には、自分たちは条例の対象外だ、私たちが接する日本人の中には、私たちに対して嫌な感情を持っている人が多い、ネット上では私たちを差別する人が多い、そういう声が載っています。子どもたちは、日常的に差別や偏見の中で生活をしているんです」と。

 同時に、こども基本条例ができたことについて、「自分が住む東京ですばらしい条例ができた」「とてもうれしくて心強い気持ちになった」という声があることも紹介したんです。

 

■「すべての子ども」とは

 

原のり子 質問の肝になるのが、こども基本条例の第8条にかかわることでした。

「都は、こどもの学ぶ意欲や学ぶ権利を尊重し、こどもの可能性を最大限に伸ばすことができるよう、一人一人の個性に着目し、自立性や主体性を育むために必要な環境の整備を図るとともに、こどもに寄り添ったきめ細かな支援に取り組むものとする」というのが第8条です。

ここで言う「こども」を都はどう認識しているのか。そこを福手さんが問いました。

 

福手ゆう子 こども基本条例は前文で、「全てのこどもが誰一人取り残されることなく」と書いています。また、条例の基本理念を定めた第3条でも「全てのこども」が対象だと明記しています。そのことを踏まえて、質問したのです。

 

原のり子 昨年9月の第3回定例会・代表質問では、共産党都議団の白石たみお政調会長が、「こども基本条例及び人権条例は、子どもの学ぶ権利を尊重し、差別など人権侵害を許さない立場です。2つの条例に照らしても、朝鮮学校への補助金停止は整合性がとれません」と指摘しました。

私たち共産党都議団は代表質問で、こども基本条例と人権条例を一緒に議論し、問題提起をしたのです。そのうえで、「こども基本条例には朝鮮学校の子どもも当然含まれると考えますが、いかがですか」と質問しました。

 これに子供政策連携室長は、「こども基本条例の基本理念に掲げられているとおり、全ての子どもが健やかに育っていけるよう、社会全体で子どもを育む環境を整備していくことが重要です」と答弁しました。

 

福手ゆう子 その代表質問に先立つ昨年3月13日の総務委員会で、私は子供政策連携室に、「こども基本条例の全ての子どもに朝鮮学校に通う子どもは含まれていますか」という質問をしています。

 これに担当部長は、「こども基本条例に規定されておりますこどもとは、全ての子どもであると認識しています」と答弁しました。朝鮮学校に通う子どもは含まれていないなんていう答弁はできないわけです。

こうしたことを踏まえて、私は今回の予算特別委員会で、「学ぶ権利の尊重の対象となる子どもは、どういう子どもだと認識していますか」と聞きました。条例を所管する子供政策連携室の室長が「全ての子どもであると認識しております」と答弁しました。

そこで私は「子どもに国籍は問わないということですね」と確認しました。室長は、「条例の理念と施策の性質を踏まえて判断されるべきもの」としか答えない。これには驚きました。「国籍は問わない」と答えるのが当然だと思っていたからです。

 

原のり子 福手さんの国籍についての質問にも前段があって、確認のために質問したんですよね。

昨年3月13日の総務委員会で福手さんが子供政策連携室に質問した2日後の15日の総務委員会で、私は総務局に、「こども基本条例もヘイトスピーチをなくしていく取り組みの中で重要と思いますが認識をうかがいます」と質問しました。

これに対し、人権部長は「人権尊重条例の前文では、東京に集う多様な人々の人権が誰一人取り残されることなく尊重されており、子どもの人権についてもここに含まれております」「こども基本条例の趣旨も踏まえ、施策に取り組んでいる」と答弁しました。

 つづけて私は、「在日朝鮮人の方たちも含めて人権を守る取り組みをしていく対象だというふうに捉えていらっしゃるのかどうか」と質問しました。人権部長は「人権尊重条例の前文では、東京都に集う多様な人々の人権が誰一人取り残されることなく尊重されるとしており、国籍は問いません」とはっきり答弁しました。

 

福手ゆう子 人権尊重条例とこども基本条例では、当然国籍を問わず、すべての人、すべての子どもが対象である、これが東京都としての基本認識だ、というのが今回質問するうえでの前提でした。

だから私は今回の質問で、「子どもに国籍は問わないということですね」と念押しをしたんです。ところが、子供政策連携室長は、そう答えない。

そこで私は、総務委員会での質疑で答弁された「国籍は問わない」という答弁を示して、「条例に照らし合わせれば、朝鮮学校の子どもたちだけ排除するなどは許されません」と言ったんです。

室長は、「国籍を問わない」と答えたら、補助金支給停止の根拠がなくなると思ったんでしょうか。

 

■異常な答弁

 

原のり子 異様な事態も起きました。

福手さんが「補助金支給再開、強く求めて質問を終わります」と言ったときに、子供政策連携室長が手をあげました。福手さんが「質問していません」と言っているにもかかわらず、委員長は室長を指名して発言させました。そこで室長は、朝鮮学校の補助金停止を正当化する意見を述べました。

 こども基本条例を所管するのは子供政策連携室です。しかし、補助金支給を所管しているのは生活文化スポーツ局です。そこをとびこえて子供政策連携室長が発言するのは、きわめて異常です。

 

福手ゆう子 そんな姿勢をいつまで続けるのか、と言いたいです。都の施策に一貫性を貫くことができないではないですか。

こども基本条例と人権尊重条例、2の条例の趣旨を踏まえて、国籍を問わずすべての子どもの権利を守るために、朝鮮学校への補助金を早急に復活させるべきだと思います。

 

■発言の取り消しを求める動議

 

福手ゆう子 予算特別委員会の最終日に、私の発言の取り消しを求める動議なるものが、都民ファ・公明・自民の議員から出され、可決されました。これもきわめて異様です。共産・立憲・ミライ会議は反対しました。

「虚偽の発言を執拗に繰り返し、議事を混乱させた」「こども基本条例第8条の解釈に係る質疑に関する全ての発言の取り消しを求める」というものです。議事録から削除せよ、ということです。

私は「虚偽の発言」などしていません。動議には法的拘束力はありませんので、当然、私は発言の削除には応じませんでした。立憲民主党の関口健太郎都議の発言の取り消しを求める動議も可決されましたが、関口都議も削除には応じませんでした。当然です。

 

原のり子 福手さんへの動議に対して、私が動議の撤回を求める意見表明をしました。議会は言論の府です。その役割を遂行するために、議員はだれからも拘束されず、自らの責任で自由に発言することが保障されています。地方自治法132条では、議員が発言してはならないこととして、無礼の言葉を使用し、または他人の私生活にわたる言論の禁止などに厳しく限定しています。これが議会の大事な原則の1つです。そこをはっきり示した上で、こうのべました。

 「わが党の発言は、地方自治法に照らしても、東京都都議会会議規則に照らしても、削除する理由はまったくありません。議員は、自らの責任において、すべての子どもの最善の利益を最優先とし、子どもの学ぶ権利を守ることについてただしました。動議は、質問の内容に立ち入って、虚偽と決めつけて削除することを求めており、議員の発言権、質問権の侵害そのものです」

 「議会の多数派が自分たちの意見と相容れない発言の削除を多数決の数の力で求めることができるなら、議会における発言の自由は保障されません。今回の動議は、都議会の歴史に取り消すことのできない重大な汚点を残し、都議会の権威と品位を著しく失墜させるものです」と。

 動議の趣旨説明をしたのは、都民ファの議員でした。趣旨説明では、総務委員会で「国籍は問わない」という答弁があったときの質問者は福手さんではない、その時答弁したのは子ども政策連携室長ではなく人権部長だった、また、こども基本条例についてではなく人権尊重条例の議論だったから、福手さんの発言は虚偽だと言いました。

しかし、福手さんが、総務委員会での質疑の到達点にたって質問していることは先ほど話した通りで、虚偽なんてことはまったくありません。そもそも人の質問の組み立て方に立ち入るのは間違っています。

 

福手ゆう子 しかも、都民ファの趣旨説明では、「国籍を問わないという答弁を本委員会で引き出そうとしたことは極めて悪質」とまで言いました。

 人権尊重条例は都知事が提案して成立し、こども基本条例は議員提案として出されて全会一致で成立したものです。その内容をどうやって豊かに実現していくか。すべての議員にとって大事な課題であるはずです。その立場に立てば、こんな乱暴な動議は出せないと思うんです。

私と関口さんへの動議に対して、共産、立憲だけでなく、動議の対象になっていない会派であるミライ会議も、反対しました。ミライ会議は、動議は民主主義への挑戦であるという立場を表明しています。予算特別委員会に参加できないひとり会派の議会終了後の談話でも、グリーンな東京が「発言取り消し動議は議会の自殺行為」と指摘し、自由を守る会・東京維新の会も議員の発言権の侵害は二元代表制の危機と述べていることは非常に重要だと思います。

 

■福手質問に寄せられた声

 

原のり子 共産党都議団は、朝鮮学校への補助金支給復活を一貫して求めてきたんです。本会議の代表質問でも取り上げていますし、とや英津子都議が文教委員会で繰り返し取り上げてきました。福手さんも私も、総務委員会などで質問してきました。

 今回の福手さんの質問でも、運動している人たちがたくさん傍聴してくれて、「福手さんの質問が本当によかった」「それで都議会が紛糾するなんておかしい」と言っているんですよ。署名を集め、議会を傍聴し、各会派に一生懸命働きかけている人たちなんです。こうした、各会派に対して平等に働きかけている人たちが、「こども基本条例にもとづいて質問した福手さんの質問を封じ込めるようなことは許せない」と声をあげてくれました。

 

福手ゆう子 朝鮮学校の保護者の方からメールが来ました。

「こども基本条例で尊重されるこどもに、国籍は関係ないと言えない都に、恐ろしさを感じました」「朝鮮学校の子どもたちは、今この瞬間にも傷つけられ、仲間外れにされています。そのような異常な状況となってもう14年です。私たちは、そして子どもたちは、差別に『なれる』ことはありません。この間深く傷ついてきましたし、傷つけられてきました」「差別なき朝鮮学校の子どもたちへの権利保障を求める都議会議員の皆さんのご尽力が都の焦りと本音を引き出したと思います」と書いてありました。

 

原のり子 共産党都議団として、都民の方々、運動している方々と連帯を強めて、補助金支給の復活を実現したいと思います。

 

福手ゆう子 はい。その気持ちでいっぱいです。