ウクライナ難民が支援

トルコ大地震 「命が尊重される世界に」
 トルコ南西部アンタルヤに暮らすウクライナの人々が、被災者に支援物資を届けていると聞き、20日に当地を訪れました。ロシアの侵略に苦しむ自分たちの境遇を、被災したトルコの人びとの苦しみと重ねながら、ともに生きる隣人として支援する姿がありました。(アンタルヤ〈トルコ南西部〉=秋山豊 写真も)

(写真)トルコ大地震の被災者の支援活動に参加しているハザイエさん(左)とジョージ君=20日、トルコ南西部アンタルヤ

(写真)ハザイエさん(左)とジョージ君(左から2人目)、ハンドスさん(右)、ビビクさん(右から2人目)ら。傍らに積んであるのは被災者への支援物資=20日、トルコ南西部アンタルヤ
本紙ルポ
 アンタルヤは、地震で大きな被害を受けている南部ハタイ県などから数百キロ離れた所に位置しています。
 ウクライナ文化芸術協会の事務所にはお菓子やお茶、服などが保管されていました。6日の地震発生後、トラック2台分の物資をハタイ県の被災者に届けました。
 「トルコの人びとが直面している困難は、ロシアに侵略されているウクライナの人びとの苦しみを思い起こさせる」と語るのは、同協会での救援活動に参加しているヤハニヤ・ハザイエさん(45)です。ロシアが侵略を開始した後、アンタルヤに逃れてきました。息子ジョージ君(9)とともに避難生活を送っています。
 ハザイエさんは言います。「ロシアの侵略を終わらせるため、国際社会にさらなる支援を訴えたい。侵略が続く限り、ウクライナの人びとの苦しみは増します。同時に、トルコの人びとへの緊急の国際援助を求める。人間の命がもっと尊重される世界になってほしい」
「助けたい」思いで連帯
 ハザイエさんは「トルコの人びとの苦しみに共感します。私たちは被災者を支える」と語ります。「地震が建物を崩し、人びとの命を奪った。生き残った人も全てを失い、避難生活を送っている」と心を寄せました。
 ハザイエさんは、ウクライナの首都キーウに暮らしていた当時を振り返りました。ロシア軍による爆撃の音がやまず、ジョージ君はおびえていました。ハザイエさんも精神的に追いつめられました。隣家が爆撃されたとき、ウクライナから逃れることを決めたといいます。
 「ジョージはトルコに来たとき、精神的に大きな問題を抱えていました。プーチン(ロシア大統領)が自分のところまで来て、殺されてしまうのではないかと恐れていた」
 3カ月もすれば戻れると思っていたハザイエさん。しかし、間もなく、ロシアが侵略を始めて1年がたとうとしています。
 ウクライナ文化芸術協会理事のデミトロ・ビビクさん(44)によると、トルコには数万人のウクライナ難民がおり、およそ3分の1がアンタルヤで暮らしています。
 ビビクさんは「トルコの人びとは隣人だ。トルコを襲っている災害も、ウクライナで続いているロシアによる侵略も、解決には連帯と団結が必要だ」と語ります。
 同じく理事のタシアナ・ハンドスさん(35)は「ロシアに侵略された後、トルコの人びとがウクライナ人を受け入れ、支えてくれたように、ウクライナ人もトルコの被災者を助けたいと思っている」と強調します。
 同協会は、ウクライナの文化を促進するために6年前に設立されました。ロシアによる侵略後は、これに抗議するデモと、ウクライナ難民への支援活動を行ってきました。
 トルコで地震が起きた後は、アンタルヤに暮らすウクライナ難民に加え、戦火のなかで母国に暮らしているウクライナ人からも被災者への寄付が寄せられています。
 ハンドスさんは、トルコの人びとが、ウクライナの苦境を思って涙を流しながら支援物資を受け取ってくれたと言います。さらに物資を集め、被災地に届ける予定です。