文教委員会速記録第1号

2015年都議会文教委員会での論戦都議会質問

◆カヌースラローム競技を仮設施設で開催することを求める陳情について

○里吉委員 私からも、カヌースラローム競技を仮設施設にて開催することに関する陳情について幾つか質問を行いたいと思います。
葛西臨海公園内に新設予定だったカヌースラローム会場は、この葛西臨海公園が整備された歴史的背景に加えて公園の自然環境に配慮し、隣接する下水道局用地を活用して新設することになったとのご説明がありました。
葛西臨海公園内での整備には地元区や日本野鳥の会などを初めとする多くの都民から反対の声があり、変更になったことは重要だと認識しています。
陳情は、下水道局用地に新設したとしても周辺の自然環境や水環境に悪影響を及ぼす心配があることや、建設コストや大会後の維持管理費への懸念から、より負担の少ない仮設施設にすることを検討してほしいというものです。
変更になった理由は先ほど伺いましたので、環境問題について、まず伺います。
陳情者は、この近隣には環境省や都が発行しているレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている生物が周囲に複数生息し、環境保全のためのミティゲーションを考慮する必要があると述べておりますが、どのような生物が生息しているのでしょうか。
また、環境保全の対策はどのように考えているのでしょうか、伺います。

○荒井輸送担当部長 公園内での整備を前提といたしました初期段階環境アセスメントによりますと、環境省及び都のレッドリストにおいて絶滅危惧種として選定されているコアジサシなどの鳥類が施設整備エリアで観測されました。
今回、下水道局用地に配置変更したことに伴い、オリンピック・パラリンピック環境アセスメント指針に基づき、ここを新たな整備予定地として実施段階アセスメントを行うこととしております。この中で改めて予測評価を行い、必要に応じて適切な対策を検討してまいります。

○里吉委員 次に、水環境なんですが、淡水を循環させるような施設では、次亜塩素酸ナトリウム液などの消毒水を用いる可能性が高く、そのような人工水が大量に排水された場合、周辺域の生態系に悪影響を及ぼす危険があるということを陳情者は危惧しております。
この計画では、淡水の処理はどのようになるのか、それから、生態系に影響のない対策が考えられているのか、2点伺います。

○荒井輸送担当部長 カヌースラローム施設で使用する水につきましては、一般の遊泳用プールと同様に、循環利用することを想定しております。
排水につきましても、施設から海や川などへ直接流すことはなく、公共下水道へ排出し、水再生センター等で適切に処理することとしております。

○里吉委員 次に、初期段階環境アセスメントなんですが、先ほどもご答弁の中にありましたとおり、葛西臨海公園内に設置するという想定で、さきの初期段階環境アセスメントは行われました。
場所を下水道局用地に変更した上での環境アセスメントはどのように考えているのか、また、都民や周辺区民、江戸川区などの関係者の意見なども聞いて取り組むべきだと考えますが、対応について伺います。

○荒井輸送担当部長 先ほどご答弁したとおり、下水道局用地をカヌースラローム施設の整備計画地として、実施段階オリンピック・パラリンピック環境アセスメントを行ってまいります。
オリンピック・パラリンピック環境アセスメント指針に定めたとおり、評価書案の作成後、案に対する意見を都民から聞いた上で、評価書案を取りまとめてまいります。

○里吉委員 それから、冒頭の現在の状況のご説明では、環境面のお話はありましたが、建設コスト、維持管理費の説明はありませんでした。恒久施設にした場合の、大会後の維持管理費についてはどのように考えているのか伺います。

○小室連絡調整担当部長 先ほど答弁しましたとおり、都は、大会後の効果的、効率的な施設運営を図るため、新規恒久施設等に関するアドバイザリー会議を設置しております。民間企業のノウハウや競技団体、地元自治体の意見なども踏まえながら、後利用の検討を幅広い視点から進めているところでございます。
この検討内容を基本設計に生かすとともに、今後、基本設計を踏まえた収支見込みや運営形態の検討につなげてまいります。

○里吉委員 今いろいろ聞いてまいりましたが、葛西臨海公園の自然の豊かさについては皆さんもご承知のことと思いますが、日本野鳥の会によれば、葛西臨海公園では226種の野鳥のほか、昆虫140種、クモ80種、樹木91種、野草132種を記録しています。
その中には、トラツグミ、チョウトンボ、コガネグモ、ウラギクなど、東京都23区では絶滅危惧種に指定されている生物26種も含まれているとのことです。
海側の葛西海浜公園には、冬には2万羽のスズガモが飛来するなど、ラムサール条約湿地にも匹敵する、そういう状況です。
重要なのは、これらが一つの生態系として豊かな自然が形成されていて、どれかが欠けると他の動植物にも大きな影響を与えてしまうということです。やはり葛西臨海公園の自然はさらに豊かに大きく育てていきたいというのが都民の願いだと思います。
排水はそのまま海へは流しませんということでしたが、全体として環境アセスメントもこれからということなので、どのような施設にすれば環境への影響を抑えられるかは慎重な検討が必要だと思います。  大会後の利用についても、ご答弁にありましたアドバイザリー会議では、全体として採算をとるには単体のスポーツ施設ではなく、集客のできる多機能複合型の施設にすることが必要だという意見が出され、カヌースラローム施設もカヌー競技場として活用するとともに、家族で楽しめるレジャー施設にしてほしい、また、飲食店やショップなどを併設した1日滞在型の施設にしたらどうかなどのアイデアが出されていました。そうした場合は、環境にはどれだけの影響があるのかが懸念されますし、また、そうしなければ維持管理費がかさむという裏腹な側面も懸念されます。
また、カヌー競技にもレガシーを残し、振興していかなければならないということでは、この問題についてはすぐに結論を出さず、環境アセスもこれからですから、さまざまな角度から調査、検討していくことが必要だと思います。
したがって、この陳情は継続審査とすることを要望し、私の質問を終わります。

◆私立高校での40人学級推進を求める請願について

○里吉委員 それでは、請願審査、まず、私立高校から始めていきたいと思います。
私立高校での40人学級の推進についてです。
都立高校では、工業高校など専門課程の高校については35人学級となっていますが、それ以外は4人学級です。東京の高校生の6割が私立高校に通っていますから、私立高校でも40人学級を推進するということは、教育環境の整備という点で重要だと考えます。
そこで、私立高校に対する40人学級推進特別補助、この制度の目的、単価について、またその補助を受けているクラスの全学級に占める割合はどれくらいになるのか、あわせて伺います。

○武市私学部長 40人学級編制推進補助は、私立高等学校における40人以下学級の編制を推進するため、実生徒数が40人以下の学級の数に応じて、1学級につき60万円を補助するものでございまして、平成25年度は、全学級の71・7%に補助を行っております。

○里吉委員 都としても40人学級を推進するために取り組んで、現在、全学級の71・7%まで進んできましたというご答弁でした。
最初の説明でも、状況を踏まえ、充実に努めているといわれましたが、具体的には、請願にあるように、現在、1学級につき60万円という補助金の増額や、助成金の評価項目、評価方法の改善が必要だと考えます。ぜひその方向で取り組んでいただきたいと思います。

◆私立高校の財務状況を利害関係に公開することを求める請願について

次に、私立高校の財務状況を利害関係者に公開するようになった経緯について伺います。

○武市私学部長 平成17年4月に私立学校法が改正され、学校法人に対し、財務情報の利害関係人への公開の義務が課せられることとなりました。
これは、社会経済状況の変化等を踏まえ、学校法人が公共性の高い法人としての説明責任を果たし、関係者の理解と協力を一層得られるようにしていく観点から行われたものでございます。

○里吉委員 実際には現在、財務情報は利害関係人への公開が義務づけされているということです。請願では、より詳細に行われることを促進する制度を検討することを求めています。
私、私学関係者の方からお話を伺ったんですが、公開は義務なので、情報を出さない私立学校はもちろんないそうですが、出されてきたものが、黒塗りが多くてよくわからない資料だったとか、閲覧は認めるが、書き写すことは禁止しているなど、今ご説明いただいた法の趣旨に照らしても、説明責任を果たしているとはいえない対応が幾つもあるそうです。
今答弁で、法改正は学校法人が公共性の高い法人としての説明責任を果たし、関係者の理解と協力を一層得られるようにしていく観点から行われたものと述べていますが、そのためには、現在の情報公開がより詳細に、また適切に行われるように、私学部にも対策をしていただきたいということを求めておきます。

◆私立高校生の学費負担軽減を求める請願について

次に、学費の負担軽減について伺ってまいります。
私立高校生に対して、国の高校就学支援金や都の授業料補助、いわゆる特別奨学金、これらの充実や奨学給付金の新設により補助額がふえました。
しかし、生活保護世帯以外は、年収250万未満は授業料全額補助には今なっていません。また、年収250万以上350万未満の世帯などは奨学支援金の対象にもならず、支援はまだまだ1分とはいえません。補助を拡充するべきではないでしょうか。
都として、少なくとも授業料全額補助となるようにすべきと考えますが、都の見解を伺います。

○武市私学部長 都では、国の就学支援金に加え、所得に応じて区分を設け補助する特別奨学金により、保護者の授業料負担軽減を図っております。
平成26年度には、年収250万円以上350万円未満の低所得者層の世帯について、就学支援金制度の見直しを踏まえ、所得区分ごとのバランスを勘案し、補助率を2分の1から3分の2に引き上げるとともに、250万円未満の世帯については、奨学給付金を創設し、さらに充実を図っております。

○里吉委員 今、いろいろ拡充しているというご答弁をいただきましたけれども、最初にも述べましたが、実際には、生活保護世帯以外は年収250万円未満も授業料が全額補助になっていないわけです。
今年度から国が低所得者の就学支援金を増額しましたが、このことに伴い、年収250万円未満の世帯は、都の授業料補助である特別奨学金が13万9400円から8万8000円に、5万1400円も減らされました。
就学給付金、新しく新設されたこれは、学用品や修学旅行費など、授業料以外の教育に必要な経費の負担を軽減するためのものですから、これがあるからよしとはいえません。
授業料が全額賄えないだけではありません。この授業料の中には施設費など、学校に必ず納めなければならないお金が含まれていませんから、負担はさらに大きいわけです。生活保護世帯も授業料は全額補助となっていますが、国の就学支援金の増額に伴って、都の補助は5万9400円減らされています。
そこで伺いますが、私立学校の教育に係る費用のうち、授業料として徴収すべきもの、施設費やその他の名目で徴収すべきものという公的な区分があるのかお答えください。

○武市私学部長 授業料、入学料、その他費用徴収に関する事項は、学校教育法施行規則により、学則に記載することとされておりまして、これに基づいて各学校が定めております。

○里吉委員 学則で定めるということですから、学校がそれぞれの判断で決めていいというご答弁でした。つまり明確な区分はないということなんですね。学校それぞれで判断できると。
それで、これまでも何度もいってまいりましたけれども、都の授業料補助である特別奨学金の対象に施設費なども含めるべきではないでしょうか。なぜ施設費が含まれないのか、改めて伺います。

○武市私学部長 都は、これまでも私立高校に対し全国でも高い水準となっている経常費補助を通じて授業料や施設費等学校納付金の抑制に努めてまいりました。
また、国の就学支援金や都の特別奨学金により、授業料の保護者負担軽減を図るほか、育英資金や今年度創設した奨学給付金により、授業料以外の教育費負担についても軽減を図っております。
都といたしましては、こうした幅広い施策を総合的に活用し、保護者負担の軽減に努めており、今後もこの考え方に基づき実施してまいります。

○里吉委員 東京都がさまざまな施策を使って私学助成を行っているのは、私、1分理解しております。
しかし、現実は、生活保護以外の年収250万円以下の方は授業料が発生している。それ以外に入学金も施設費も払っている。この現実をどう考えるのか、それを聞いているんです。
先ほど授業料と施設整備費の明確な区分はないと答弁がありました。どちらも高校で学ぶためには必ず納めなければならない費用ですから、あわせて必要な学費と捉えるべきです。
東京都の授業料軽減助成の対象に施設費を入れることは本当に理にかなっていると思うんですね。だからこそ、私立高校が独自に行っている減免制度、これについては、その対象にことしから施設費も加えることになったのではないでしょうか。これは本当に一歩前進だと思います。
しかし、この対象になるのは学校が独自に授業料減免を持っていて、それを使っている生徒さんだけなんですね。ですから、来年度は、都の特別奨学金、授業料補助も、その対象に施設整備費も加えて、学費全体を補助対象に広げることを強く求めておきます。
次に行きます。
今年度から国の高校就学支援金制度に所得制限が導入され、新たに生活保護世帯や低所得者への給付制奨学金が設けられたことにより、私立高校の学費は、国の高校就学支援金、都独自の授業料軽減補助、また、国が補助金を出し都の事業として行っている奨学給付金事業の3つの制度を通じて、全体として負担軽減が図られることとなりました。
それぞれの申請方法について、まず伺います。

○武市私学部長 国の制度である就学支援金は各学校を通じて、都の制度である特別奨学金及び奨学給付金は保護者が直接公益財団法人東京都私学財団へ申請書類を提出することとなっております。

○里吉委員 国の高校就学支援金は、今年度から年収910万円の所得制限が導入されました。保護者は学校に書類を出し、学校を通じて支給される仕組みです。所得の基準となる住民税額が6月に決まるため、1年生は4月から6月までの課税証明と7月以降の課税証明の2枚を出さなければなりません。
それから、都独自の授業料軽減補助は、申請は7月に東京都私学財団に直接郵送で行い、補助金は12月に保護者の銀行口座に振り込まれます。課税証明の添付は国の奨学支援金を申請していれば省略できますが、世帯人数によって所得制限の額が異なるため、住民票の提出が必要です。
奨学給付金は、申請が9月から10月にかけてで、就学支援金と授業料軽減補助を申請していれば課税証明と住民票の添付は省略できますが、23歳未満の姉、兄がいれば健康保険証の写しが必要だと。そして、給付金は2月中旬に保護者の銀行口座に振り込まれるということです。
申請の時期も違えば、提出先も必要な書類も違うものを3回出さなければならないということなんですね。また、自分は3種類のうちどれがもらえるのか、細かい書類を理解して、申請するかどうかの判断をしなければなりません。
家族構成など、所得制限に影響する要素が国と東京都で違うので、国の高校就学支援金には該当するけれども、東京都の授業料軽減補助には該当しない、こういう世帯もあれば、逆に国の就学支援金には該当しないが、東京都の授業料補助には該当する、こういう世帯も出てきます。各家庭では両方よくよく確認しなければならないということです。
しかも、両方とも住民税額を基準としているといいますが、何と国の就学支援金は区市町村住民税、東京都の授業料補助は都民税と区市町村住民税の合計額と、違うものが使われている。これも私、この間説明を聞いて初めてわかったんですが、本当にわかりにくくて複雑な制度だなというふうに思います。
より支援を必要としている低所得者ほど、時間的にも他の面でも余裕のない場合が多いわけですが、そういう世帯ほどたくさんの書類を読んで理解して、申請を何回も出さなければならないと。
私がお話を伺ったある私立高校の事務の方は、今は親御さんが外国人の生徒さんや、祖父母が保護者となっている生徒もふえていて、入学後に細かい文字の書類をどんどん渡されて、1回出せばよいと思ってしまったり、支給を受けられるのに受けられないと思ってしまう保護者もいるなど、本当に心配だとおっしゃっていました。
経済格差が教育格差につながらないようにしようと、高校生の学びを支えようという制度なのに、余りにも書類の煩雑さで制度がよくわからない。十分利用できないようなことがあってはならないと思うんですね。
制度がわかりにくい、何度も出すのは大変という声や、1回出せば3つの制度に対応してもらえるなど、手続を簡素化してほしいという要望に応えた改善が必要だと思いますが、今後の対応について伺います。

○武市私学部長 創設の経緯が異なる3つの制度が併存しているため、それぞれに申請が必要となっております。その中でも共通する証明書類等の添付は1枚でよいとするなど、申請手続については簡素化を図っているところでございます。
保護者負担軽減の制度が充実することにあわせ、複数の制度が存在することで複雑な面もあろうかと思いますが、都としては、申請者や学校の負担軽減、審査の迅速化などの視点で、事務の工夫をできる限り行っているところでございまして、今後も引き続き適切に対応してまいります。

○里吉委員 事務の簡素化に今も努めているし、これからもその方向で努めていきたいというご答弁でしたので、低所得者の方が特に多いわけですから、ぜひ3つの制度を生徒さんがちゃんと使えるように改善していただきたいと思います。
例えば、制度は3つだけれども、書類は学校に1回まとめて出せばいいようにする。1枚出せば所得に応じて該当する制度が受けられるようになるのが1番ですが、3つ書くにしても、まとめて学校に出せば保護者は多分楽になるのではないでしょうか。プライバシーが心配なら封をして出すようにするなど、やり方はあると思います。3つの制度とも結局東京都私学財団で処理をするわけですから、いろいろ工夫ができると思います。
国の就学支援金の年収250万円以下の世帯と、就学支援金の対象となる世帯は同じなわけですから、自動的に2つ支給できるようにするなど、その部分も簡略化できないかと思います。ぜひ検討をお願いします。
また、学校側の事務の手続も大変だと伺っています。所得制限がなかった昨年までは、就学支援金の対応では11万8800円に生徒数を掛ければ支給の計算ができたわけです。そのため、6月には支給額が学校に給付されました。ですから、生徒からは授業料と就学支援金を相殺した金額を徴収すればよかった。
ところが今年度は、所得制限があるために支給額を概算することが難しい。学校に支援金が来たのは11月末だと伺いました。各家庭が申請して、就学支援金センターが審査して、誰が幾ら支給されるか確定して、決定通知があったのは10月末、実際にお金が来たのは11月末。
学校としては、それまでお金が入らないと教育に支障が出るので、一旦生徒から授業料を全額徴収して、11月末にその分を各家庭の口座に返す。支給額も4段階に分かれているので、一人一人振り込み額が違う。手間もかかる。振り込み手数料もばかにならない。こんな事務で本当に苦労しているということです。
東京都では、高校就学支援金に係る事務費の助成を行って、来年度予算案では増額もされていますが、この一層の充実をお願いするとともに、就学支援金もできるだけ早い時期に学校に渡せるように、国とも協力して工夫していただけるように要望します。
請願項目にも、高校就学支援金の所得制限の廃止ということがあります。これまで何度も申し上げてきたように、学費無償化は世界の流れです。国際人権規約の中等教育の漸進的無償化を日本は批准したわけですから、教育を受ける権利を保障するために所得制限を廃止するのは当然です。
同時に、所得制限を導入したことが手続をふやし、煩雑さをふやし、困難な家庭を制度から遠ざけかねない心配を生じさせているのではないか。
就学支援金の申請に当たり、保護者が離婚している場合は、何年何月何日に離婚したから、課税証明は1人分しかありませんと書くように指示されていることも、思い出したくないプライバシーをなぜそこまで書かなければならないのかと、国会でも問題になりました。
書類の難しさや手続の煩雑さを初め、そういうこと一つ一つが子供たちを制度から遠ざけかねず、都としても、所得制限の撤廃、それから、請願にあるように加算額の増額、加算対象の拡大をぜひ国にも求めていただきたいと思います。

◆私立幼稚園への更なる支援拡充を求める請願について

それでは、次に、幼稚園について幾つか伺ってまいります。
私立幼稚園について伺います。
幼稚園に通うおおむね3歳から6歳というのは、本当に日々心も体も大きく成長する時期です。幼稚園というのは初めて家族以外の大人や同年齢のお友達と過ごす場所です。仲間とのかかわりを通じて、みんなで遊ぶことの楽しさや自分の思いを伝えること、相手の意見を受け入れることなども少しずつ学んでいきます。
他人の役に立つうれしさや何かをやり遂げたときの心地よさなど、人間形成の基礎をつくるのが幼児期であり、幼稚園は重要な役割を担っている。そして、東京都内では、その幼稚園児のうち90%以上が私立幼稚園に通っているわけです。
そこで、この私立幼稚園の経営にとって欠かせない、私学助成の中でも基幹的な補助である、都内の学校法人に対する経常費補助は、園児1人当たりの単価が幾らになったのか、また全国平均は幾らなのか伺います。

○武市私学部長 文部科学省の調査によりますと、平成25年度における私立幼稚園への経常費補助の園児1人当たり単価は、東京都が16万9662円、全国平均では16万7741円となっております。

○里吉委員 昨年もこの質疑を行ったんですが、そのときは、東京都が6万31383円、全国平均が16万5906円、全国平均より約2500円少なかったわけですが、今お伺いしましたところ、やっと全国平均を1921円上回ったということがわかりました。
この経常費補助については、標準的運営費の2分の1を補助するという基本的な考えに基づいて、その充実に努めるというご説明がありましたが、どのような項目で増額したのか伺います。
また、物価の高い東京の条件も考えれば、さらなる充実を図るべきと思いますが、都の見解をあわせて伺います。

○武市私学部長 文部科学省の調査では、経常費の対象範囲などが都道府県によりまちまちであること、また、都においては、私立幼稚園の他の補助制度も充実していることから、この園児1人当たり単価のみをもって評価することは適切ではないと考えますが、私立幼稚園に対する経常費補助は、東京の幼児教育に大きな役割を果たしている私立幼稚園の運営を支える基幹的な補助でありまして、これまでも教職員手当の算入率を引き上げるなどの充実を図ってまいりました。
今後とも、私立幼稚園の振興を図るため、これまで同様、適切に対応してまいります。

○里吉委員 教職員手当の算入率を引き上げたというご答弁でした。人件費を充実したわけで、これは大変重要なことだと思います。
今、保育園の保育士の低賃金が問題になっていますが、幼稚園も同様で、本当はベテランと若手、男女の先生がそろっていれば、教育内容もより豊かにできるけれども、実際にはなかなか長く働けない。特に男性教諭は結婚したら生活できないと、結婚を機に退職してしまうという話もよく聞いております。
かつては、東京の私立幼稚園経常費補助の園児1人当たりの単価は、47都道府県中3位でした。教育のかなめとなる先生が安心して長期間働いて、幼稚園教育に情熱を注げるよう、ぜひ、さらなる充実に努めていただきたいと思います。
次に、3歳児保育の拡充について伺います。
3歳児保育の拡充のため、保育者の増員など、補助の拡充を図ることとの請願に対して、経常費補助、振興事業費補助に3歳児就園促進補助を設けるなど、その拡充に努めるというご回答でしたけれども、そもそも幼稚園で3歳児1クラス35人というこのことが、小学校1、2年生と同じで多過ぎるのではないかという声が出されていますが、この基準はいつからなのか、まず伺います。

○武市私学部長 平成7年に幼稚園設置基準が改正され、1学級の幼児数については、幼児一人一人の発達の特性に応じ、行き届いた教育を推進するため、原則として35人以下に引き下げられました。

○里吉委員 約2年前から同じ基準だということです。
国は数年前、小学校1年生を35人学級にしたわけですから、幼稚園の基準もそのときにあわせて見直すべきだったのではないかと考えます。
東京都は、経常費補助で3歳児特別補助を行っていると伺いましたが、どのような目的で行っているのか伺います。

○武市私学部長 3歳児就園促進補助は、少子化などの社会の変化や3歳児からの就園に対する保護者のニーズを踏まえ、私立幼稚園における3歳児からの受け入れを促進するための補助でございます。

○里吉委員 3歳児からの受け入れを促進するための補助というご説明でしたが、補助額を伺いましたら、3歳児1人当たり年間3000円ということでした。仮に35人いたとしても年間10万5000円です。
経常費補助と、それから3歳児就園促進補助を設けるなど、その拡充に努めるという回答でしたけれども、経常費補助の対象は35人に1人の教諭分のみですよね。あとは幼稚園として3クラスに1人の加配があるだけです。これでは余りに少な過ぎるのではないでしょうか。
私、幼稚園の先生にもお話を伺いましたが、やはり3歳児クラスというのは、おむつが十分にとれていない子もいて、お漏らしをしてしまうこともあるそうです。その子の対応をしていると、今度は別の子が転んで頭をぶつけたなど、本当に同時にいろんなことが起こると。先生は忙しくて朝出勤してから帰るまで1回もトイレに行けない。これが普通になっているとおっしゃっていました。
3歳児保育の拡充のために、3歳児1クラス35人という基準を見直すことを国に求めるべきです。
また、同時に、3歳児就園促進補助は、金額を抜本的に引き上げるなど、都としての補助を拡充することを求めておきます。
そして、入園料補助についても伺います。
私立幼稚園の入園料への自治体補助は、区部に比べて多摩地域ではなかなか進んでいません。入園料の金額を比べてみましたが、東京都私立幼稚園連合会の調査で、2012年の調査ですが、区部平均では11万5678円、市部では9万1610円です。多少市部の方が入園料は低いとはいっても、平均10万円近い入園料を払っているわけです。
こうしたところで、東京都が補助制度を設けて全体の負担軽減を進めるべきと考えますが、見解を伺います。

○武市私学部長 都は、これまでも私立幼稚園に対する経常費補助を通じて保育料や入園料の抑制に努めるとともに、私立幼稚園等園児保護者負担軽減事業により、保育料に係る保護者負担の軽減を図っているところでございまして、入園料補助の実施は考えてございません。

○里吉委員 23区で入園料補助がないのは1代田区、中央区、港区と3区だけです。23区で20区が入園料の補助を行っているというのは、やはりこれが保護者負担が重いと判断しているからではないでしょうか。
多摩地域の保護者の皆さんだって負担は大変だと思うんですね。経常費補助を通じ入園料を抑制しているといいますけれども、結局、実際には平均10万円を超えているわけです。
この幼稚園の署名、24万人以上の都民の署名が出されているわけですから、こうした都民の声を受けとめて、少なくとも都として、入園料補助の必要性について検討すべきではないでしょうか。このことを強く申し上げておきます。

◆私立小中学校の授業料軽減を求める請願について

最後に、私立小中学校の授業料軽減について伺います。
請願では私立小学校、私立中学校の授業料を軽減する制度を新たにつくることを求めていますが、それに対して、経済的に困窮している家庭には区市町村が就学援助を実施しているというご説明がありました。
そこで伺いますが、私立に通う小中学生は区市町村が行う就学援助の対象になるんでしょうか、お答えください。

○武市私学部長 学校教育法では、経済的理由によって就学困難と認められる小中学生の保護者に対し、区市町村は必要な援助を与えなければならないとされております。

○里吉委員 与えなければならないとされていますということですけれども、それは義務なんでしょうか、お伺いします。

○武市私学部長 小中学校は義務教育でございます。そして、学校教育法では、経済的理由によって就学困難と認められる小中学生、この保護者に対し区市町村は必要な援助を与えなければならないとされております。

○里吉委員 もう一度お伺いしますが、私立の小中学生を就学援助の対象にすることは区市町村に義務づけられているのか、全ての市区町村で私立小中学校が対象になって支払われているのかお答えください。

○武市私学部長 就学援助は区市町村の事業として行われております。

○里吉委員 事前にお伺いしたときにはちゃんと局の方も知っていたんですけれども、知っていらっしゃると思うんですけれども部長さんも。これは区市町村の事業なので、私立の小中学校を対象にするかはそれぞれの判断に任せられているわけですよね。義務じゃないわけですよね。
ですから、私も今ホームページなどでちょっと調べたんですけれども、各自治体でどうなっているか。23区では、私立小中学生が対象になっていない--ホームページでわかるだけで16区、市部でも少なくとも15自治体は公立または国公立のみとなっていました。少なくとも半数以上の自治体では私立小中学生には就学援助は使えないということです。
先日、お子さんを私立小学校に通わせているお母さんたちからお話を伺いました。うちの子は軽度の発達障害があって、特別支援学校なども考えたが、今通っている私立が丁寧な指導をしてくれるということで、経済的には苦しいが、私学に通わせることにしたというお話でした。お子さんは今、毎日楽しく学校に通っているそうですが、経済的な負担は本当に大きいと。
小中学校から私学に通わせていると経済的余裕があるように思われがちですが、決してそうではない家庭のお子さんも通っているわけです。授業料など軽減する制度をぜひつくること強く求めます。
また、少なくとも就学支援制度、就学援助の制度を持っているところ、この自治体に対して少なくとも私学に広報していただきたい。また、都としても、私学に通う小中学生も就学援助の対象となるように区市町村に求めていただきたい。このことを強く要望しておきます。

◆私立専修学校、各種学校の学生への授業料軽減制度について

最後に、私立専修学校、各種学校の学生への授業料軽減制度をつくってほしいという大変強い要望、繰り返し請願で出されています。
私も昨年の請願審査で都としての対応を求めましたが、なかなかこれは難しいと、国の事業だということでした。
私立専修学校修学支援実証研究事業というのが国の方で始まるということで、いよいよ専修学校、各種学校への授業料支援も出されるという流れが出てきました。詳細はまだ未定ということでしたが、専修学校は、職業等に必要な知識、技能を習得する場であり、職業人の育成等の面で大きな役割を果たしています。ぜひ、東京都内の専門学校生、各種学校に通っている生徒の皆さんが活用できるように要望しておきます。
今るる述べてまいりましたけれども、私学助成の制度、まだまだ改善しなければならない点がたくさんあって、数十万という都民の皆さんから請願が出されています。ぜひ一つ一つの制度を少しでも拡充するために頑張っていただきたいということをご要望いたしまして、私の質問を終わります。