文教委員会速記録第3号

2016年都議会文教委員会での論戦都議会質問

◆海の森水上競技場について

○里吉委員 資料ありがとうございました。
それでは、3つの施設の契約案件に対する質疑を行います。
我が党は、オリンピック・パラリンピックのそれぞれの競技場について、アスリートファーストは大前提ですが、その上で、整備費は必要最小限に抑えること、また、大会後は、競技団体はもちろん、都民スポーツの場などの拡充となることを求めてきました。
この視点から3つの施設について質疑を行いたいと思います。
まず、海の森水上競技場についてです。
我が党はこれまで、この場所は海風があり、波が立つという立地条件がボート、カヌーの競技場としては適切でないこと、491億円という整備費も都民の納得は得られないこととして、別の場所、彩湖など、仮設会場として使用することを提案してまいりました。
まずお伺いしますが、風対策として盛り土や防風林を行うというふうにされていますが、防風林は全体の4分の1程度の風しか軽減できないというふうに書かれております。まず、この風対策で十分という認識なのか伺います。

○花井施設輸送担当部長 海の森水上競技場につきましては、これまでもたびたびご議論をいただいてございますが、改めてお答え申し上げます。
風の対策につきましては、これまで国際、国内競技団体と協議しながら取りまとめを行ってまいりました。
その結果、風速シミュレーションを踏まえまして、競技水域内でほかの場所よりも風速の大きな区間に対しまして効果的な位置に防風林を設置することといたしました。
防風林の設置によりまして、競技水域内の他の場所と比べて風速の大きい区間を含む2000メーターコース全体の約4分の1程度の範囲で風速が低減すると予想しており、国際競技団体から一定の理解を得ているところでございます。
引き続き、効果的な対策につきまして競技団体と協議し、後利用も含め、よりよい競技環境の確保に努めた対応を行ってまいります。

○里吉委員 一定の理解を得られているということでしたが、一方で、引き続き効果的な対策を協議していくというご答弁でした。
これ、オリンピック・パラリンピックの特別委員会の方には配られたと思うんですが、この基本設計の概要を私も読ませていただきましたけれども、まだ風対策ができていない地域が残されていることは明らかになっておりますし、新聞などでもこの問題が持ち越しされているということが報道されております。
同じように、波対策ですけれども、これも垂直護岸だと波のはね返りが強いので、傾斜をつけたこういう護岸にするべきというのが当初から競技団体から要望が出されていました。
しかし、基本設計では、消波装置というんでしょうか、波を消す装置をめぐらせることで対応することになっています。これで不十分だということで、特別委員会でも議論されたと思うんですが、この装置を使って競技を行った会場、オリンピック会場として使ったところはあるんでしょうか、事例についてお伺いいたします。

○花井施設輸送担当部長 ボート競技会場で類似の消波装置を設置している例といたしましては、世界ボート選手権等の競技会場になっておりますスロベニアのブレッド湖などがございます。
なお、波の対策につきましては、これまで国際、国内競技団体と協議しながら取りまとめを行ってまいりました。
その結果、護岸におけます反射波を低減させるために、国際競技団体から紹介された事例を踏まえまして、消波装置を護岸沿いなどに設置することといたしております。この消波装置の設置によりまして、波の高さが約6割程度低減すると想定しております。
引き続き、効果的な対策につきまして競技団体と協議し、後利用も含め、よりよい競技環境の確保に向けた対応を行ってまいります。

○里吉委員 五輪会場としては使ったことはないということでしたね。そして、6割の軽減でいいのかということも課題として残ると思います。引き続き効果的な対策について、よりよい競技環境の確保に向けた対応を求めていくというわけですから、引き続き考えていくということだと思うんですね。
そうすると、問題になるのが事業費です。今でさえ、当初予算から比べれば7倍の491億円という総事業費になっていますけれども、この内容について伺います。

○花井施設輸送担当部長 整備費につきましても、これまでたびたび取り上げていただいてきております。改めまして、経緯なども含めましてお答えいたしますので、少々答弁が長くなりますが、ご容赦をお願いしたいと思います。
立候補ファイル時の整備費は、本体工事費のみを計上したものでございました。開催決定後、本体工事費の見積もりを実勢に合わせて精査したことや、基本設計等の調査委託費、上下水道等のインフラ整備費や支障物の撤去、移設経費等の周辺整備費を計上いたしますとともに、着実に会場整備を進める観点から、今後の建設物価上昇分や工事中のセキュリティー経費、消費税の増分も見込んだものでございます。
さらに、開催決定後に実施いたしました地質調査の結果を踏まえまして、締め切り堤の構造変更や、廃棄物処分場に建物を整備するために必要な基礎構造の変更などを行いました。この結果、整備費が1038億円と大きく増加することがわかりました。
そこで、整備内容の抜本的な再検討を行いまして、競技団体の協力のもと、競技コースやウオーミングアップエリアを初めとする会場レイアウトを大幅に変更することに伴いまして、新設締め切り堤の延長を縮小すること等により、整備費を491億円に縮減いたしました。
基本設計におきましては、締め切り堤につきまして、経済性を考慮した比較検討を踏まえまして、構造形式の見直しを行うなど、コスト縮減に努め、追加工事費等が生じた場合の対応費を確保しております。
引き続き、実施設計などを進めていく中で整備費の縮減に努めてまいります。

○里吉委員 今、私、聞いていないこともいろいろお答えいただきましたけれども、そもそも廃棄物処分場につくるということで、土壌としてどうなのかということ、これ以外にも特別委員会の方でいろいろ議論されてきたと思います。
だからこそ、途中経過の中では1千億円を超える試算も示されて、ここまで縮減したというご説明だと思いますが、立候補ファイルで、幾ら本体工事だけだといっても、そこから現在でも7倍もの予算に膨れ上がっている。縮減、これからも考えていくといいますけれども、アスリートファーストの立場に立てば、風対策も波対策も不十分であり、レースの公平性という点からもさらなる対策が求められると思います。
そうなれば、さらなる整備費がふえる可能性もあるということで、この場所での整備は見直すべきだということを改めて申し上げたいと思います。

◆アクアティクスセンターについて

次に、オリンピックアクアティクスセンターについて伺います。
アクアティクスセンターの観覧席なんですが、IOCの基準では1万2000席で整備すればよいことになっておりますが、改めて2万席で計画したのはなぜか伺います。

○根本競技担当部長 オリンピックアクアティクスセンターの計画につきましても、これまでもご質疑をいただいているところでございますが、改めてご答弁をさせていただきます。
水泳につきましては陸上競技、体操と並んでオリンピックの中でも主要競技といわれておりまして、競泳会場の観客席は北京大会で1万7000席、ロンドン大会で1万7500席を用意しておりました。
これら過去大会の状況や競技団体の意向を踏まえますとともに、日本におきましては水泳はメダルも期待され、非常に人気のあるスポーツであり、多くの観客を見込めるということから2万席の計画としているところでございます。

○里吉委員 しかし、大会のときは2万席だけれども、その後は1万5千席を減築するということになっています。残るのは5千席ですよね。
大規模な工事となると思いますが、どのような工法が考えられているのか伺います。

○小野寺施設整備担当部長 アクアティクスセンターにつきましては、大会後の建物の規模の適正化や将来の維持管理費の低減等の観点から、約2万席の観客席を約5千席に縮小する計画でございます。
基本設計段階におきましては、約1万5千席の仮設席部分を撤去いたしまして、撤去した部分の外壁を新たに設置する設計としております。

○里吉委員 仮設の座席を撤去して、そこに外壁をつくるという簡単な説明でしたけれども、将来の維持管理を考えて減築するというご説明でしたけれども、減築にかかる費用、現在のところ74億円かかるといわれています。具体的な工法をこれから決めていくわけですから、その金額でおさまるのかどうかということも心配されるところだと思います。
観客席が2万席埋まるのは、オリンピック・パラリンピックのときしか考えられないと。世界大会でも5千席あれば十分だと。だから5千席に減らすということだと思うんですね。
しかし、だからこそ開催国に多大な負担とならないように、IOCの基準も1万2千席となっているわけです。それを仮設も含めて2万席分整備するということ、そのために減築費用に74億円もの費用がかかるということでは都民の理解は得られないと考えます。

◆有明アリーナについて

次に、有明アリーナについて伺います。
これもメーンアリーナの問題なんですが、バレーボールコートが4面分とれる広さがあるということなんですが、床がコンクリートとなっているということで、改めてこの理由について伺います。

○小室施設調整担当部長 有明アリーナの後利用につきましては、これまでも特別委員会にて質疑されておりますが、改めてお答えいたします。
有明アリーナは、国際大会を含みますスポーツ大会に加え、コンサートを初めとする各種イベントなど、都民がさまざまに楽しめる多目的な活用を想定しております。そのような用途を考慮し、メーンアリーナの床は、アリーナ内に車両が直接乗り入れ、資機材の搬出入や設営が容易に行えるコンクリート床仕様としております。

○里吉委員 コンサートを初めとする各種イベントなど、多目的な活用を想定しているというお答えでした。
つまり、メーンアリーナは一般都民のスポーツ利用は考えていないということでしょうか。資料を出していただきましたが、これ、見ていただきますと、同じような大きい体育館、東京体育館のメーンアリーナの稼働率は今年度99・7%、駒沢オリンピック公園の体育館も96・7%と、ほぼ満杯ですよね。
ですから、有明アリーナのメーンアリーナも、大会後、都民がスポーツ施設として使えるようにするべきだと考えますが、いかがでしょうか。見解を伺います。

○小室施設調整担当部長 有明アリーナのメーンアリーナは、1万5千席の観客席を有することから、国際的なスポーツ大会に加え、コンサートを初めとする各種イベントなど、都民がさまざまに楽しめる多目的な活用を想定しております。
有明アリーナのメーンアリーナにおきましては、1万5千人規模の大人数の観客を擁するような都民利用の大会を催す頻度は少ないと考えております。都民のスポーツ利用に応える場としましては、主にサブアリーナを想定しており、メーンアリーナの可動席の観客席をサブアリーナの応援席として利用可能とするなど、小規模なスポーツ大会でも、皆で楽しめる工夫を講じております。

○里吉委員 小規模なスポーツ大会を楽しめるような工夫もしていただくのは大事なことなんですが、大規模なスポーツ大会も、アマチュアのスポーツ団体も開きたいと思っているんですね。  都民のスポーツ利用はサブアリーナで十分だということではありません。確かに1万5千席もの観客席は必要ないと思います。しかし、一度にたくさんの試合を一堂に行える会場として、このメーンアリーナと、それからサブアリーナを使って、アマチュアのスポーツ団体が大会を開く場所としてだって使ってもらいたい、使わせてあげるべきだというふうに思うんですね。こういう要望が出てくると思うんです。
床をコンクリートにすると、スポーツ仕様に一々張りかえる必要があるわけですから、お金がかかります。世界大会など大きな大会、そういうものでなければ使えないというふうになるんじゃないかと思いますね。
ほかに床がコンクリートの施設、調べてみましたら、さいたまスーパーアリーナが該当するということで、お話を伺いました。床をスポーツ仕様にかえる料金、普通のスポーツ団体が出せる金額ではないと。いろいろな軽減を使っても、2桁違うと。百万円台だということをおっしゃっていました。
私は、オリンピック・パラリンピックの競技会場として東京都が新しく整備する施設なのだから、やはり一部の興行とか世界大会も大事ですが、それだけじゃなくて、それよりももっと大事にしなければ、一番大事にしなければいけないことは、都民がさまざまなスポーツの大会を開ける会場、そういうものとして整備することが大事だと思うんですね。
近くの有明コロシアム、ここもスポーツ以外の利用をふやしておりますけれども、資料を見ていただくとわかりますように、稼働率は6割台です。この資料を見ますと、今スポーツ以外の利用が25ということで、ほかのものに比べて一番多くなっています。それでも稼働率はまだ6割台という、60%ということですから、ここで十分対応できると考えます。
すぐ近くの有明アリーナをイベント会場というようにする必要はありません。都民がもっとスポーツを楽しめるように、体育館として整備するべきだと考えますが、改めて見解を伺います。

○小室施設調整担当部長 有明コロシアムはテニスのための全天候型コートとして整備されたものであり、有明アリーナのように、各種イベントなど多目的な活用を想定した仕様の施設ではございません。
そのため、結果としてイベント会場としての稼働率は必ずしも高くない状況でございます。有明アリーナは、国際大会を含むスポーツ大会に加え、コンサートを初めとする各種イベントなど、都民がさまざまに楽しめる多目的な活用を想定しており、そうした用途にふさわしい仕様を備えた施設として整備してまいります。

○里吉委員 稼働率が高くないのは、多目的を目的にしたものではないからというお答えでしたが、でも、これ、見ていただくと、スポーツ以外の利用、単位は件数ですから、何日間やったのかというのはちょっと比べられませんが、東京体育館から5つ、今、東京都の体育施設でスポーツ以外の利用を見せていただきましたが、資料をいただきましたが、25件で一番多いじゃないですか、これ、活用しているんじゃないですか。24年度6回、25年度17回、26年度25回ということで、ふえていますから、これからここをもっとそういうふうに使えるようにしていけばいいんじゃないかと思いますよ。
それからもう一つ、交通の便もあるんじゃないかと思います、稼働率が低いということは。私も世田谷からここに何回か行きましたけれども、そういうふうに感じました。その近くにもう一つ同じような施設をつくる必要はないと思います。
それから、私が気になっているのは、この予定地のすぐ近くに小学校、中学校、それから私立の中学校、高校、たくさんの学校があるということが大変気になっております。この場所をスポーツ、文化やにぎわい機能を配置するとしていますが、すぐ近くに小中学校などがある地域にさまざまなイベント、興行が中心となる施設はふさわしくないと考えますが、見解を伺います。

〔発言する者あり〕

○植木委員長 ご静粛に願います。

○小野寺施設整備担当部長 有明北地区のまちづくりの指針でございます臨海副都心有明北地区まちづくりガイドラインでは、有明アリーナの敷地について、公共公益系用地として位置づけており、土地利用の基本方針といたしましては、東西両入り江の周辺にはウオーターフロントの景観を生かした公園や公共公益施設を配置する、公園はにぎわい機能を初め多様な機能を備えるものとして整備していくとしております。
また、都市計画区域マスタープランでは、有明北地区は、緑豊かな旧防波堤や海の眺望、景観を生かし、潤い豊かな都市型住宅と活力とにぎわいのある商業・業務機能、魅力あるスポーツ、文化、レクリエーション機能、学校などの公共公益機能、都市型工業、流通機能などがバランスよく複合した市街地を形成することを地区の将来像としております。
有明アリーナの整備に当たりましては、これらの方針を踏まえ、まちの活性化やにぎわいの創出につなげ、地域にふさわしい施設となるよう計画しております。

○里吉委員 今いろいろおっしゃいましたけれども、にぎわいですとか文化、レクリエーション機能というのが、すなわち1万5千席もあるコンサートなどの興行を中心に行うための施設だということにはならないと思います。小学校、中学校のすぐ近くにこういう施設ができるというのは、私は子供たちが日々学ぶ環境としてふさわしくないと思います。
さらにいえば、この有明アリーナの建設予定地は第1種住居地域です。有明アリーナの施設用途は体育館、観覧場等となっておりますから、江東区の用途地域を見ますと、使えないということになっていますよね。
今後、都市計画審議会を行って有明アリーナの建設予定地を使えるようにするということだと思うんですけれども、この都市計画審議会はことし5月の開催予定ですから、まだ決定されていないと思うんですね。
都市計画審議会でまだ議論されていないところにこういうイベント中心の施設をつくるということで、先に契約までして行ってしまうというのは、私は手続上も問題があるのではないかと考えます。
体育施設として一度にバレーボールコートが6面もとれる都立の体育館であれば、基本は体育館として整備するべきであり、床をコンクリートにして、メーンアリーナを一般都民が使えないような施設はつくるべきではないと、これからスポーツを楽しむ都民をもっともっとふやしていく、その受け皿として整備するべきだということを申し上げまして、私の質問を終わります。

◆3つの施設についての意見表明

○里吉委員 それでは、意見を述べます。
第95号議案、オリンピックアクアティクスセンターについて。
観客席数が仮設を含めてIOC基準から見て大幅に多くなっていること、その分、建築費は増大する。さらに、その観客席を2万席から5千席まで減築するのに74億円かかる。整備費は当初見込みより大幅にふえている。5輪の他の経費の膨張も懸念され、都民の心配の声がある。開催都市の経費節減を目指したアジェンダ2020の方針をどう実行していくかは、今後の五輪開催都市にも影響を与える重大な問題である。
以上のことからこの議案に反対いたします。
第96号議案、有明アリーナについてです。
バレーボール競技場であるのに、床がコンクリートとなっています。後利用として国際大会など大きな大会は開けるが、アマチュアのスポーツ団体はメーンアリーナを使えません。周辺は住宅地で学校が多い地域であり、興行イベントを誘致することを中心とする施設はふさわしくありません。床を木製にするなど、体育施設として整備するべきです。  以上のことから反対いたします。
第97号議案、海の森水上競技場について。
海風があり波が立つという立地条件がボート、カヌーの競技場としては適切ではありません。当初の立候補ファイルでは整備費について69億円でしたが、総事業費491億円、7倍にも膨れ上がりました。しかし、風対策、波対策などまだ不十分であり、場所を変更すべきです。
以上のことから反対いたします。