文教委員会速記録第8号

2016年都議会文教委員会での論戦都議会質問

◆大学生等奨学給付金条例案の提案理由の説明(共産党議員団の提案)

○里吉委員 議員提出議案第10号、東京都大学生等奨学金給付条例案の提案理由の説明をいたします。
今日、都民生活が厳しさを増す中、大学などに進学の意欲がありながら、家庭の経済状況により諦めざるを得なかったり、非正規雇用の増大などで卒業後、低賃金の仕事につかざるを得ず、奨学金を返済できなくなるなどの深刻な事態が社会問題になっています。
日本の高等教育の学費は世界的に見ても高く、学生の教育を受ける権利を脅かしています。新入生が大学に払う学費は、国立大学が年額約83万円、私立大学は平均で年額131万円にもなります。4年間の学費と生活費は、私立大学生の場合、自宅通学でも732万円にもなります。
世界の少なくない国々は大学の授業料が無償で、そうでない国も返済の必要のない給付制奨学金制度を持っていますが、日本はそのどちらもありません。そのため、学生の半分が奨学金を借り、その半分以上が有利子です。奨学金を借りた若者は、社会人の一歩を踏み出すときに、既に平均300万円もの借入金を抱えなくてはならないのです。
子どもの貧困対策の推進に関する法律は、その目的の中で教育の機会均等を掲げ、第13条では、国及び地方公共団体が経済的支援を講じることを求めています。
全国では、長野県や沖縄県が独自の大学生向け給付制奨学金に踏み出しました。
安倍内閣は、ニッポン一億総活躍プランで、大学生などを対象にした給付型奨学金を検討するとしていますが、実施時期などは決まっていません。
東京都が国に先駆けて大学生などへの給付型奨学金を実施することが、学費無償の流れを前進させ、学生の学ぶ権利を保障するためにも大変重要になっています。
今回提案する条例は、東京都出身の大学の学部、短期大学、専修学校の専門課程、高等専門学校の4年生以上の学生に月額2万円の返済不要の奨学金を給付するものです。  所得制限は、年収350万円未満で、対象者は約5万人、必要経費は約120億円と見込んでおります。実施は、来年4月を予定しております。
大学生などへの給付制奨学金の必要性につきましては、各会派の皆様一致しているところだと思います。国に先駆けて東京都が実施することにより、未来ある若者に希望を与えることができると確信するものです。
ぜひ各会派の皆様のご賛同を求め、提案理由の説明といたします。ご審議のほどよろしくお願いいたします。

◆都立臨海地区特別支援学校(仮称)新築について

○里吉委員 私からも第137号、都立臨海地区特別支援学校(仮称)新築請負契約について伺ってまいります。
さきの文教常任委員会で、特別支援学校の教室の確保を求めることに関する請願が全会一致で採択されました。子供たちに必要な教育環境をどう保障していくのかという立場から質疑を行っていきたいと思います。
まず、この都立臨海地区特別支援学校は、知的障害部門の小学校、中学校ですが、新しい学校は、児童生徒数は何人ぐらいを予想しているのでしょうか。また、通学区域はどこになるのでしょうか。伺います。

○浅野特別支援教育推進担当部長 臨海地区特別支援学校(仮称)の児童生徒数は、基本設計の段階においては230人程度を想定しております。また、通学区域につきましては、城東特別支援学校と鹿本学園の通学区域を中心に、児童生徒の在籍状況を勘案しながら、近隣の都立特別支援学校とも調整の上、設定する予定でございます。

○里吉委員 児童生徒数は230人程度とのことでした。普通教室は、議案の図面でも確認できますけれども、48ございます。2012年6月に作成した基本計画を読ませていただきましたが、ここでは40学級185人程度としておりましたから、45人ふやしたということだと思います。
また、通学地域と設置場所についてですが、ここは臨海地区特別支援学校の設置場所、臨海部副都心の青海地区、テレコムセンターの南側です。私は先日、予定地を視察してまいりましたが、すぐ近くには倉庫が建ち並び、大型トラックなどがひっきりなしに走っておりました。
また、コンテナビル、コンテナターミナル、大江戸温泉物語、こういうものがあって、住宅や商店などのお店はありませんでした。もともと学校をつくるような地域ではなかったので、地区計画を変更したと伺いました。
先ほどの質疑で、具体的な用地の選定に当たっては、複数の都有地について検討したということでしたけれども、その都有地とは、どの地域に何カ所ぐらいあったのか、どこと比べたのか、そしてその結果、なぜこの場所になったのか、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。 ○浅野特別支援教育推進担当部長 具体的な用地選定に当たっては、有明地域も含めて江東区南部及び江戸川区南部の複数の都有地について比較検討を行ったところでございます。 ○里吉委員 1カ所しか場所が出てこなかったんですけれども、複数の都有地、さまざま比較検討したということでした。  先ほどの答弁でも、いろいろ安全性についても検討したということでしたけれども、安全性という点では、どこと比較したのか、具体的に1カ所しか場所をいっていただけませんでしたが、私が訪問した平日の午前中でしたけれども、学校の隣の敷地にコンテナターミナルがあって、トラックだけではなく、大型トレーラーなども頻繁に通っていた、そういう道で、大変心配です。
さらに、周辺環境という点では、文部科学省の特別支援学校施設整備指針では、地域の生涯学習やまちづくりの核として、地域と連携した施設環境の整備が求められております。
ここでは、どうやって他の公立学校との交流や地域の方々との交流を行うのか--このことが大切とされていますが、この学校ではどうやって実施をしていくのかお伺いいたします。

○浅野特別支援教育推進担当部長 臨海地区特別支援学校(仮称)におきましては、立地特性を生かした交流方法等の工夫に努めてまいります。
具体的には、近隣の施設を生かした交流活動のほか、スクールバスを活用した交流機会の確保などを予定しております。
また、周辺に多くの企業が立地する環境を生かし、企業と連携した就業体験学習などができるような工夫を検討してまいります。
加えて、児童生徒の居住地域において、副籍制度による交流を推進し、地域とのつながりを充実させてまいります。

○里吉委員 今、ご答弁の中にスクールバスを活用した交流機会の確保というご答弁がありましたけれども、要するにスクールバスに乗っていかなければ、いわゆる地域社会というものに触れられないということだと思うんですね。
私は、特別支援学校の設置場所は、地域の人たちにも気軽に学校の行事に参加してもらって、子供たちの成長を一緒に見守っていただくような環境がふさわしいと思います。
公立小中学校は、そもそも地域の中に建っていますから、このような問題は発生いたしません。障害のある子供たちがこれから地域の中で暮らしていくためには、さまざまな体験を社会の中で積み上げていくことが本当に大切になるわけですから、こういう地域の中に学校があるということが重要だということを指摘しておきたいと思います。
それから、通学地域は、今の城東特別支援学校と鹿本学園、つまり、江東区と江戸川区の子供たちが通うことになりますが、学校の位置、地図で見ましても江東区の南西の、本当に大分端っこの方だと思うんですね。江戸川区からも、また江東区の住宅地からも少し離れたところにあると思います。
スクールバスで通学することになると思いますが、バスの台数は、先ほど想定台数7台、具体的な台数はこれからというお答えがありましたけれども、通学時間は、都教委が掲げている1時間以内ということで、守れるということでよろしいのか確認したいと思います。 ○浅野特別支援教育推進担当部長 通学時間につきましては、在籍状況に応じたコース等の設定により、長時間にならないよう配慮してまいります。

○里吉委員 長時間にならないように、今も一生懸命配慮していただいていると思うんですが、ほかの学校では、残念ながら1時間を超えているところがまだ残っていると思うんですね。ですから、ここは絶対にそうならないように頑張っていただきたいと思います。
私たちは、立地については、この場所が教育環境としてふさわしいのだろうかとずっと疑問を呈してきました。同じ臨海地域だとしても、有明北地区の方が近くに公立、私立の小中学校や住宅もあって、バスの乗車も短時間で済みます。
特別支援学校の新設はずっと求めてきたことでもあり、もっと必要だという立場ですから、この契約案件も反対はいたしませんが、子供たちの安全確保、地域社会との交流などに最大限の配慮をお願いいたします。
また、小学校低学年の、しかも障害のあるお子さんが毎日何十分もバスに乗って学校に行くというのは本当に大変なことだと思います。スクールバスは1時間以内といわれていますが、くれぐれもこの時間内に、通学時間は長時間にならないように要望いたします。
さらに、震災のときなど緊急時に家族が迎えに行くことができるのか、交通の便が悪いので心配する声も聞きました。今後、新設の学校建設の際には、設置場所についてもこうした声に応えていただくよう要望いたします。  次に、学校の大きさについてですが、臨海地区特別支援学校の敷地面積、そのうち建築面積、また、建物の延べ床面積を伺います。

○浅野特別支援教育推進担当部長 臨海地区特別支援学校(仮称)の敷地面積は1万4960平方メートル、建築面積は6697平方メートル、建物の延べ床面積は1万5475平方メートルを計画してございます。

○里吉委員 特別支援学校の教室不足は、学校を設置するための最低基準となる設置基準が特別支援学校にないからだと指摘をさせていただきました。
しかし、公立学校の校舎は、建設するときの国庫補助の上限である必要面積というものが定められています。国が、これぐらいの広さは必要でしょうから、ここまでは補助の対象にしましょう、こういう面積なんですね。
特別支援学校の必要面積については、障害区分ごとに、学級数に応じて面積を算出することになっております。
そこで伺いますが、臨海地区特別支援学校の建設に当たり、国庫補助を受けることのできる必要面積は幾らでしょうか。また、実際の面積は幾らでしょうか。伺います。

○浅野特別支援教育推進担当部長 義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令に基づき算出される必要面積は1万545平方メートルであり、また、現在計画している建物延べ床面積は、先ほど答弁いたしましたとおり1万5475平方メートルでございます。

○里吉委員 国庫補助の対象となる必要面積の約1・5倍の延べ床面積の学校を建設しようとしていることがわかりました。
それでは、次に、公立学校施設実態調査報告、ここには小中高等学校、そして特別支援学校の必要面積、保有面積などが書いてあるわけですが、それぞれの学校、小中高等学校、特別支援学校の必要面積に対する保有面積、実際の面積ですね、この割合はそれぞれ何%か伺いたいと思います。

○浅野特別支援教育推進担当部長 文部科学省の平成27年度公立学校施設実態調査報告によると、必要面積に対する保有面積の割合は、全国では小学校106%、中学校111%、高等学校85%、特別支援学校66%でございます。
また、都内公立学校では、小学校116%、中学校123%、高等学校103%、特別支援学校87%でございます。
なお、都内の公立特別支援学校につきましては、全国を21ポイント上回っております。

○里吉委員 必要面積に対する保有面積の割合は、都内公立小中高等学校では100%を超えていますが、特別支援学校では87%ということでした。
先ほど、特別支援学校は全国より21ポイント上回っているというご答弁をいただきましたが、小学校、中学校、高等学校では全て全国平均より上回っているわけですよね。財政力もある東京で、残念ながら特別支援学校だけ100%を下回っているというのは、やはり大きな課題であると思います。
また、今回の案件であります臨海部に建てます都立臨海地区特別支援学校(仮称)、ここでは、必要面積の1・5倍の保有面積の学校を建てるわけです。これは、都教育委員会の皆さんが、都教委としてはこれくらいは必要だろうと判断していることだと思うんです。
ところが、東京全体で見ると必要面積に達していない。これは、その分、狭いところに押し込められているということになるわけです。このことについては、国会でも我が党の質問に馳文科大臣がこのままでいいとは思いませんと答弁をしています。
障害児の人口もさらにふえることが予想されます。教室不足の解消だけでなく、重度重複学級の教室確保、狭い敷地に増築して子供たちを押し込む大規模化を解消するために、さらなる学校の新築も含めた計画が必要です。
そこで、特別支援教育推進計画について、現在の計画は今年度で終了します。新たな計画についてはいつまでに策定するのか、保護者や都民の意見はどのように反映するのか伺います。

○浅野特別支援教育推進担当部長 新たな特別支援教育推進計画は、今後10年を計画期間として年度内に策定いたします。
策定の過程では、これまでの計画と同様に文教委員会に報告させていただき、委員の先生方からご意見をいただくとともに、パブリックコメントも実施し、都民や保護者の意見を伺う予定でございます。

○里吉委員 新たな計画を年度内に策定するということですが、障害者差別禁止法施行後に策定する新たな計画ですから、決定する前に、学校現場や保護者などに説明をしていただいて、十分に意見を聞いていただきたいと思います。
そして、その法律にふさわしい、障害のある子供たちの教育を受ける権利を保障する計画としていただくよう要望いたしまして、意見といたします。