文教委員会速記録第17号

2016年都議会文教委員会での論戦都議会質問

◆定時制、通信制課程の高校生のための奨学金制度の拡充を求める陳情について

○里吉委員 それでは、質疑を行っていきたいと思います。
定時制、通信制課程の生徒のための入学時から卒業時まで利用することのできる奨学金制度の整備拡充を求めているこの陳情ですが、今ご説明にもありましたように、現在、高校生が使っている奨学金制度では、育英資金の貸付制度があります。
そこで、まず、過去3年間の都立高校の定時制、通信制の生徒に対する育英資金の貸付人数について伺います。

○加藤私学部長 都立高校の定時制、通信制における育英資金の貸付者数でございますが、平成25年度、155人、26年度、139人、27年度、133人でございます。

○里吉委員 2年前から、2014年度、平成26年度から、実は高校生に対しては国の奨学給付金の制度が始まりました。しかし、これを借りている方がそんなに減っていないというのが私の率直な感想なんですね。
国の奨学給付金の金額は、公立高校の場合、生活保護受給者世帯でも年額3万2300円、非課税世帯では、第一子で定時制の場合、年額5万9500円、通信制の場合は年額3万6500円ですから、これではなかなか足りないと、もしくはこの奨学給付金の対象外の方でも生活が苦しい方がいて、そういう方が借りているんじゃないかというふうに想像いたします。
奨学給付金の所得制限は、区市町村民税所得割非課税と厳しいため、生活保護の6割程度の所得しかない家庭でも受給できない場合があるということで、今年度で国の制度は3学年全体を網羅することになりましたけれども、この制度があってもなお、こういう育英資金を借りる高校生がいるとしたら、この部分こそ、今検討されている都独自の給付型奨学金で救うべき対象だと思います。
また、本陳情では、入学時の諸費用の納入が困難なケースがあるということで、できるだけ早く育英資金の貸し付けを開始してほしいという要望だと思いますが、育英資金を貸し付けるまでの事務の流れについてお伺いしたいと思います。

○加藤私学部長 育英資金貸付事業の一般募集では、高校に在学する生徒が年度当初に申し込み、審査を経て、その年の8月に、4月からの5カ月分をまとめて貸し付け、以降は毎月貸し付けを行っております。
一方、予約募集では、中学3年次に申し込みを行い、高校入学決定後に、在学確認及び住所確認を経て5月から貸し付けを行っております。

○里吉委員 定時制、通信制の場合は、合格発表の時期が遅い学校もありますので、3月末という場合もありますので、手続が4月以降となって5月からの貸し付け開始となるのは、入学を確認してから貸し付けを開始するという制度のもとではやむを得ないと思いますが、一方で、今、義務教育の小中学生向けの制度では就学援助というのがありますが、これは、今までは入学準備金が7月に出されていたものを、世田谷区も含め幾つかの自治体では、入学準備にお金がかかる小学6年生の3月に出すように改善してきているんですね。ここはちょっと、義務教育とそうではない学校ということで研究課題だと思いますが、ぜひ研究していただきたいと思います。
また、今ご説明にもありましたように、ちゃんと予約募集に申し込めば、5月には貸し付けが開始できるわけで、それをもししないと、夏休みまで全く貸し付けが受けられないということになりますので、その違いは大変大きいと思います。
必要とする生徒が予約募集を利用できるように、積極的な制度周知をお願いしたいと思います。
また、育英資金の議論でいつも問題になるのが、借りるときに連帯保証人を探すのが大変なので、せめて1人にできないかという問題です。こういうご相談は私もよく受けます。
育英資金では、なぜ連帯保証人を2人立てなければならないのか、見直す考えはないのか伺います。

○加藤私学部長 育英資金貸付事業においては、返還金が新たな貸付原資となることから、適切に債権回収を行う必要があり、第2連帯保証人制度は、第一連帯保証人である親権者以外に連帯保証人を立てることで、より確実な債権回収を可能とするために設置しているものでございます。
平成27年度包括外部監査においては、第2連帯保証人の設定をさらに促進するための方策を検討されたいとの指摘もあり、現在、その要件等、制度のあり方について検討を進めているところでございます。

○里吉委員 より確実な債権回収を可能とするためというご答弁でしたが、これは本当に入り口のところでなかなか借りることが難しいという生徒の方はたくさんいらっしゃるということがありますので、ぜひ検討していただきたいと思うんですね。
それと、先ほども述べましたけれども、本来であれば高校卒業とともに修学に必要な借金を背負うということがなくなるのが一番いいわけで、今議論しております東京都独自の給付型奨学金でこうした育英資金を借りなくて済むようにしていただきたい。このこともお願いしておきたいと思います。
そして、この陳情は趣旨採択を求め、私の質問を終わります。 ◆教育施策大綱について ○里吉委員 それでは、質疑を始めてまいります。
教育施策大綱は、地教行法の改定により知事が策定することが義務づけられました。東京都では、ちょうど1年前の昨年11月に策定されたばかりですが、今回、知事が舛添知事から小池知事になったことにより、つくり直すことが法的に決められているわけではないけれども、小池知事としては策定し直すということだというふうに伺っております。
政治が、また知事が教育に果たすべき責任は、条件整備などにより、教育の営みを支えることです。政治が教育に介入したり、知事の特定の思想や価値観などを持ち込む、または政治の目的を遂行するための教育を行うなどして教育をゆがめることがあってはなりません。
教育の目的は人格の完成であり、平和で民主的な社会の形成者としての国民の育成でありますから、教育施策大綱の策定に当たっても、そのことを大前提として踏まえて、そのための条件整備などを重視していくべきだと考えます。
そう考えたときに、昨年の議論でも私、申し上げましたが、この教育施策大綱は人格の完成よりも人材育成に重点が置かれているという問題を指摘せざるを得ません。大綱骨子案では、グローバル化の進展に伴い、世界中の人々とコミュニケーションを図る能力が必要、新たな価値を創造する能力を持つ人材が必要、そして能動的に社会を生き抜く力が必要だということが強調されています。
新たな価値とは現在の教育施策大綱にはない新しい言葉だと思いますが、どういう意味なのか。新たな価値を創造する力とはどのようなものなのか伺います。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大綱骨子では、加速度的に変化する社会にあって、知識や技能を活用し、新たな価値を生み出す創造的、論理的な思考力、探求力の育成などが重要とされており、重要事項Ⅱとして、新しい価値を創造する力を育む教育の推進が位置づけられております。
10月27日に開催されました総合教育会議では、新しい価値を創造する力について、知事からは、加速度的に変化する社会にあって、東京や日本の成長を支えるイノベーションを生み出せる力や、未知の状況にも対応できる力、答えが一つではない問いに対応できる力との発言があったところでございます。

○里吉委員 東京や日本の成長を支えるイノベーションを生み出せる力。イノベーションとは、調べましたら、オーストリアの経済学者、シュンペーターによって初めて定義された言葉で、新しいものを生産する、新しい方法で生産するという意味だということですが、大綱ではそうした経済成長をつくり出すことのできる人材が必要だといっているわけです。
そして、大綱骨子案では、世界中の人とコミュニケーションを図るためには英語教育だよ、新しい価値を創造する力をつけるためには理数教育だよということが強調され、そのための教育に重点を置く特定の高校、中高一貫校、小中高一貫校をつくっていくということが書かれております。まさしく経済のグローバル競争に勝ち抜くための人材育成、エリート養成です。
しかし、現在、多国籍企業や国際金融資本が利潤を求めて動き回るグローバル資本主義のもと、貧富と格差の拡大や中間層の疲弊、タックスヘイブンを利用した税逃れなどが大問題になっています。グローバル競争を野放しにしていたら人類は幸福にはなれないと、その是正と規制を求める新しい流れが世界中には広がっています。
教育の役割とは、ただ今のシステムに乗って競争に勝ち抜くための能力を育てるのではなく、今起きているさまざまな世界の動きを多角的に捉え、多様な考えがあることを知り、一人の人間としてどう生きるかを、一人一人が自分の頭で考えていく手助けをすることではないでしょうか。
また、子供たちの成長の方向として、英語や理数系だけでない、さまざまな道があると思います。経済界の要請に応えた人材育成だけに重点を置くのではなく、まず全ての子供たちの主体的な成長を支える普通教育のための条件整備を重視していただきたいと思います。

◆道徳教育について

次に、道徳教育に関連して伺います。
民主的な市民道徳を子供たちにきちんと伝えていくことは重要です。しかし、子供の心や価値観を評価することや、特定の善悪や規範を押しつけることは憲法に反します。大綱骨子案では、日本人としてのアイデンティティー、我が国の礼節を重んじてきた伝統、互いに助け合って生活する国民性、日本人のよき行動規範、日本人としての規範意識など、日本人としてという言葉が随所に出てきます。
私は、日本人としての規範意識という言葉、余り聞きなれないんですが、規範意識というのは法律や社会のルールを守ろうとする意識だと思いますが、日本人としてルールを守ろうという意識というのはどういう意味なのか伺いたいと思います。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大綱骨子では、礼節を重んじ他者を思いやり助け合う日本人の行動規範は海外からも高く評価されており、日本人のよき行動規範を子供たちに確実に伝え、守ることが大切であるとの認識が示されており、重要事項Ⅳ、社会的自立に必要な力を育む教育の推進の中に、他者を思いやる心や日本人としての規範意識を醸成するため、道徳教育を推進することが今後の取り組みの方針として位置づけられております。
先日の総合教育会議の中で、日本人としての規範意識について、知事からは、日本には礼節を重んじお互いに助け合うという国民性、美徳があり、このよき日本の伝統を家庭や地域と連携しながら、子供たちにしっかりと引き継いでいくことも重要との発言があったところでございます。

○里吉委員 礼節、すなわち相手に敬意を持って接することや他者を思いやる心は大切です、重要です。しかし、それは日本人だからとか、それが日本の伝統だから大切にしなさいと教えるのは、私は子供たちに本当に敬意や思いやりを教えることにはならないと思います。
伝統といいますが、かつては身分による序列で、目下の者は目上の者に従うのが社会のルールだった時代もありました。また、戦前の教育勅語のように、夫婦仲よくなどという言葉もありながら、結局は天皇のために命をささげることが日本人の美徳規範とされていたこともあります。  私は、やはり規範意識や思いやりの心というのは、日本と世界の歴史の中で確立され、フランスの人権宣言や日本国憲法にうたわれている基本的人権や平等を子供たちがしっかり理解してこそ育まれるものだと思いますし、それがナショナリズムといわれず国際的にも通用するものになると思います。
また、政治が日本人としてといった場合、国家に都合のよい特定のものを指すことが危惧されます。私も愛国心は十分持っているつもりですが、それは私の心の中の自由なもので、誰かに強制されるものではありません。道徳は必要だと思いますが、それは政治や行政が強制するものではありません。大綱で日本人としての道徳を強調することは、特定の価値観を押しつけることになり、するべきではないと考えます。

◆給付型奨学金について

次に、貧困と格差の解消を求めて、給付型奨学金の問題について伺いたいと思います。
今回の教育施策大綱骨子案には、給付型奨学金の創設が盛り込まれました。子供たちの教育を受ける権利を保障するものとして重要だと思います。東京都独自の給付型奨学金の必要性について都教育委員会の方に、これは知事の考えだということで伺いました。
私たちも、日本共産党都議団としても知事にも提言も行っておりますので、これはぜひ実現していただきたいと思うんですが、その前提として、総合教育会議で配布された資料データ集に、文部科学省の子供の学習費調査に基づく学校種別学校教育費の現状のグラフがありまして、公立高等学校は大変お金がかかっているということが示されております。高等学校の学校教育費は年間で24万2692円となっています。
この項目の内訳とそれぞれの金額について伺います。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成26年度における全日制公立高等学校の1年間の学校教育費の主な内訳は、通学費が4万5253円、制服代が2万236円、修学旅行や遠足等の費用が3万436円、部活動やホームルーム活動などの教科外活動費が3万9840円となっております。

○里吉委員 これも資料をいただきましたけれども、2014年度の調査なので、1年生で高校無償化に所得制限が導入されて授業料を払った生徒もいます。平均すると7595円ということです。したがって、24万2692円、ほとんどが授業料以外にかかっている学校教育費ということです。
一方、現在、国の奨学給付金、高校生向けの返済不要の奨学金、国の制度ですが、これは、公立高校生の場合、生活保護世帯で3万2300円、市町村民税所得割非課税世帯の場合は5万9500円、所得割非課税世帯で兄弟、大学生などのお兄さん、お姉さんがいる場合は12万9700円です。つまり最高でも13万円弱しかもらえません。学校教育にかかる費用が24万円ですから、奨学給付金だけでは学校教育全てを賄うことができないということです。
私たちが保護者などに伺ったお話では、年間所得160万円の母子家庭でも住民税所得割をほんの少し払っているため奨学給付金の対象外になってしまったということです。1カ月13万円ですから、余りにも所得制限が厳しいと思います。
ぜひここを今具体化しているこの給付型奨学金、都独自の制度では解決していただきたいと思いますが、ここでいう給付型奨学金の創設について改めてお伺いしたいと思います。 ○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都独自の給付型奨学金の検討につきましては、第3回都議会定例会の知事所信表明において示されました。その後に開催されました総合教育会議においても、知事からは、現在、一定の給付制度があるが、保護者の教育費負担の現状などを踏まえ、都立高校や私立高校の実情に応じた都独自の制度について検討を進めてまいりたいとの発言があったところでございます。

○里吉委員 現在の奨学給付金では金額も所得制限も不十分であることは明らかで、私もいろいろな家庭の話を聞きましたが、部活の道具が買えずに、お古を譲ってくれる人を探し回っているだとか、修学旅行に参加しない友人がいたなどの話が現在でも幾つも聞けるわけですね。
小中学校の教育にかかる費用を支援する就学援助は、所得制限を生活保護の1・2倍程度としている市区町村が多いので、中学校では約3割の生徒が受給をしています。改善を国に求めることも重要ですが、同時に都独自の給付型奨学金の実施に当たっては、こうした状況を考慮して、所得制限を高く設定するとともに、高校生活を送るのに十分な金額を支給することを求めます。
また、高校生の学費負担軽減では、高校就学支援金の所得制限も改善を求める声が上がっています。子供が複数いても扶養控除は16歳未満は廃止され、16歳以上でも控除額が33万円から45万円ですから、実際にかかる生活費や学費に比べて所得制限の傾斜がつかず、負担感が多いというご意見を伺っています。
本来、国連人権規約の批准国として、所得に関係なく学費無償にすれば、こうした問題は生じないわけですが、そうなる前でも、国と力を合わせて実情に合わせた改善策を検討していただきたいと思います。

◆小中学校の不登校の増加について

次に、大綱骨子では、東京都の小中学生の不登校の問題について触れております。不登校者数は2013年度から増加していることに触れておりますが、都教育委員会として、不登校の増加の原因について分析していることがあれば伺いたいと思います。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 小中学校の不登校の数につきましては、不登校の児童生徒の出現率が、中学校では全国平均を上回っておりまして、小学校では全国平均と同等というふうなことが調査結果で判明しております。
この要因でございますが、児童生徒をめぐるさまざまな課題がいわれておりまして、現在、はっきりとしたところまでは特定できていないという状況でございます。

○里吉委員 さまざまな原因があるということで、これから不登校の問題の解決に向けて、今も都教委としていろいろ対策をとっていることは私もよく理解しているつもりですけれども、やはり今の対応が対症療法的になっているような感じがするんですね。
私は、やはり不登校がなぜふえているのかという原因をきちんと分析することが必要だと思うんです。私が受けるご相談などでも、1年生から毎日5時間授業で、朝読書やドリル、体力づくりのためのマラソンや縄跳び、朝から休み時間、放課後まで、やることが全部決まっていて子供が休む時間がないとか、学校スタンダードで挨拶の仕方、手の挙げ方、教科書の出し方など、細かく決められている。学校が息苦しい。こういった子供たちにとって学校が楽しい場所ではなくなっているとの声が本当に多いわけです。
知事と教育委員の皆さんで大綱骨子案を議論した10月27日の総合教育会議でも、教育委員の方から、例えば学校でどうしても評価という枠組みが出てくる場合に、偏差値のあり方であるとか、点数の意味であるとか、学力とは何であるかといったときの中身であるとか、そういう大きな、いわば哲学を考え直すところから始めていかなければいけない、それを原因としたいじめや不登校が根本的に解決できないのではないか、こんな意見も出されておりました。
たくましく生き抜く、競争を勝ち抜くこと、上からの道徳、価値観に従うことが強要されるような学校では、子供たちは伸び伸びと育つことはできません。都教育委員会がどのようなメッセージを発しているのか、改めて考え直していただきたいと思います。
最後に、大綱骨子案の子供たちの学びを支える教師力、学校力の強化について、これは意見を申し上げたいと思います。  私は、先生たちが子供たちの学びを支えられるようになるためには、第一に、教員の長時間過密労働を解消すること、そのために35人学級の拡大や正規教員の増員を図ることを行うことが必要だと考えます。
中学校の先生の持ち時間を18時間にすることや、副校長先生の事務仕事を軽減し、授業の準備や研究、自主的な研修などの時間の保障ができるよう、条件の整備に努めていただきたいと思います。
これらは校長先生や副校長先生、また現場の先生から切実に、繰り返し要望されている問題です。総合教育会議でも、教師の多忙化のしわ寄せは子供たちに来ます、教員が子供たちの声を丁寧に聞く環境を保障することが大切という意見ですとか、また、ICT教育で教員の手が省けるという意見に対し、ICTは人間的に身につける部分が一緒になって初めて効果を上げるもので、教員の手を省くためのものではないと、教員の多忙化の解消や役割の重要性についての議論も交わされておりました。
教員が教育の専門家として子供たちの教育に直接責任を持ち、生き生きと働ける環境づくりをお願いし、私の質問を終わります。

◆都立江北高校定時制「廃校計画」の決定の凍結・見直しを求めることに関する請願について

○里吉委員 それでは、都立江北高校定時制「廃校計画」の決定の凍結・見直しを求めることに関する請願について質疑を行います。
我が党は、都内4校の夜間定時制高校の廃止計画が明らかになったときから、計画の撤回を求めてきました。
夜間定時制高校は、高校に行きたい生徒にとって、最後のセーフティーネットの役割を果たしています。募集人員に達していなければ、基本的には申し込んだ生徒全員を受け入れてくれるのが夜間定時制です。不登校や中途退学の経験者を初め、さまざまな困難を抱えた子供たちが通っています。だからこそ、どの地域に住んでいても、通いやすい場所にあることが大切です。  しかし、都教育委員会は、かつて100校以上あった都立夜間定時制高校を、生徒や保護者、都民の反対を押し切って次々廃止してきました。現在半分以下にまで減っているのを、さらに4校減らすというのが今回の計画です。
今回は、江北高校定時制の廃校の見直しを求める請願ですので、まず初めに、なぜ江北高校定時制課程を閉課程の対象に選んだのか伺いたいと思います。

○増田教育改革推進担当部長 夜間定時制課程を志望する生徒が減少し、各学校の在籍率が低下している中、23区東北部の足立区、葛飾区周辺にある複数の夜間定時制課程についても、入学者の減少に伴う学級減により、小規模化の傾向がございます。
一方、チャレンジスクールや昼夜間定時制高校は高い応募倍率が続き、都民の希望に十分応えられていない実態があることから、都立高校改革推進計画新実施計画において、足立区内にある荒川商業高校をチャレンジスクールに改編することとともに、桐ヶ丘高校、浅草高校等の既設の昼夜間定時制高校等の学級増を行うことといたしました。
このことに伴い、足立区南部に位置し、足立高校、飛鳥高校、南葛飾高校、葛飾商業高校普通科等の夜間定時制課程設置校に囲まれている江北高校定時制を閉課程することとし、23区東北部の夜間定時制課程全体の規模の適正化を行うことにしたものでございます。

○里吉委員 これ、2015年5月の数なんですけれども、都教育委員会にいただいた資料では、江北高校定時制の生徒、どこに住んでいるかという資料をいただきましたが、180人中142人が足立区でありました。足立区は広いですけれども、どこからでも江北高校は通いやすい場所にあるんだなというふうに思いました。
自転車通学の生徒も多いと伺いましたが、電車でも3路線使えてアクセス便利と学校のホームページでも宣伝をしておりました。綾瀬駅徒歩10分、五反野駅徒歩15分、青井駅徒歩7分ということがホームページにも書かれておりました。
いろんな学校を今挙げていただいて、かわりに受け入れる学校があるよと示されましたけれども、繰り返しになりますが、定時制高校に通うお子さんは、元気なお子さんばかりではありません。一般的にこの距離だったら通えるだろうという距離が、そういう子にとって、4年間通い切ることが大変だということもぜひ理解していただきたいと思います。
また、夜間定時制は、募集倍率が下がっている。一方で、昼夜間定時制やチャレンジスクールの倍率が高いから、チャレンジスクールなどをふやしていくと。そういう学校で受け皿をつくるんだというお話だと思いますけれども、私は、これまで再3、学年制でクラスがある定時制と、自分で科目を選んで履修する単位制、3部制、学校としての特徴が違うというお話をしてまいりました。  夜間定時制高校とチャレンジスクールなども含めた昼夜間定時制高校のそれぞれの特色、どのようなものか、また、どのような生徒が通っているのか、改めて伺います。

○増田教育改革推進担当部長 夜間定時制高校には学年制と単位制があり、また、学科は普通科のほか、専門学科もございます。
全日制課程と併置されているため、ほとんどの学校が午後5時30分ごろに始業し、1日4時間の授業を4年間かけて学ぶ教育課程をとっていますが、高等学校卒業程度認定試験等、単位認定することで、3年間での卒業を可能としている学校もございます。
当初は、主として勤労青少年を対象としておりましたが、現在では、全日制課程の高校などへの進学希望をかなえられなかった生徒、不登校や中途退学を経験した生徒、外国人の生徒、学習習慣や生活習慣に課題がある生徒など、多様な生徒が在籍しております。
一方、チャレンジスクールを含む昼夜間定時制高校は、単位制、多部制の定時制独立校であり、学科は普通科のほか、新宿山吹高校に情報科が設置され、また、チャレンジスクールは選択科目の幅が広い総合学科としております。
生徒は、午前部、午後部、夜間部の時間帯の中で、自分の所属する部での授業を年間20単位まで履修でき、他の部の授業を受けることで3年間での卒業が可能となっております。
主として不登校を経験した生徒を受け入れているチャレンジスクール以外の昼夜間定時制高校には、夜間定時制高校と同様に、多様な生徒が在籍しております。

○里吉委員 チャレンジスクール含む昼夜間定時制高校は、単位制、多部制の定時制独立校というご説明が今ありました。
単位制だと、大学のように、好きな科目を自分で選んで授業を受けるということで、クラスのまとまりがないということも課題としてありまして、最近では、ロングホームルームなども行っていることは知っておりますが、やはり夜間定時制とはクラスのまとまりが違うんですね。
ここで、我が党の白石議員の例を挙げたいと思うんですが、我が党の白石議員は、夜間定時制高校の卒業生です。少なくとも4日学校を休んだら、クラスの友人から携帯に電話が来る、メールが来る、さらに心配してバイト先に来てくれて、どうして来ないのかと声をかけてもらったといっておりました。先生の方は、さらにバイト先に電話をかけて、上司に、学校に行くように話してくれというふうに頼んだということもいっておりました。はっきりいって、この仲間や先生がいなかったら、僕は高校を卒業できなかったといっております。
また、別の、これは最近定時制高校を卒業した女性の方ですけれども、彼女は小学校から不登校だった。定時制高校が初めてちゃんと通えた学校だったとおっしゃっています。4年間の学校生活の中では、彼女自身ももうやめてしまおうと、もう無理だと思ったことも何度もあったけれども、少人数でコミュニケーションがとれていたこと、ゆっくりと学べたこと、気軽に通える場所にあったこと、こうしたことで最後まで通うことができた。だから、これ以上定時制高校をなくさないでほしい、こういうメールを寄せてくださいました。
チャレンジスクールや昼夜間定時制とは違う夜間定時制高校の存在意義があるということを、都教育委員会の皆さんには改めて認識していただきたいと思います。
さて、私は先日、江北定時制高校を視察してまいりました。現在、独自のスクールカウンセラーも配置され、また、自立支援チームも継続的に派遣され、丁寧な指導が行われていると感じました。  ことしの4年生は特に優秀でと校長先生がおっしゃっていたんですが、もう今の時点で、半分以上が正規の就職が決まっている、推薦枠で大学進学が決まっている子もいるというふうに伺いました。  さらに、私がお話を聞いて感心したのが、江北高校定時制課程で、近くの都立城東職業能力開発センターと連携をしているというお話でした。この連携とはどのような内容であるのか伺います。

○増田教育改革推進担当部長 江北高校定時制課程では、今年度から体験学習等を通じて自己の適性を知り、就労に対する興味や関心を引き出すことを目的に、4年時の必修選択科目として、学校設定科目キャリアデザインを設置しております。
このキャリアデザインの授業の一部で、城東職業能力開発センターと連携し、センターが開講している訓練科目の内容を体験できる授業を年6回実施しているところでございます。

○里吉委員 城東職業能力開発センターが主催する訓練科目の内容を体験できるということでした。  この都立城東職業能力開発センターは、本当にさまざまな資格が取れて、就職率も100%と聞いております。いろんな訓練科目を体験し、自分に合ったものが見つかれば、例えば、卒業後にセンターに通って資格を取ることもできるのではないでしょうか。
学校から歩いて行ける距離にこの城東職業能力開発センターがあるので、授業時間を使って体験できるというお話でした。今年度からということですが、すばらしい取り組みだと思いました。改めてこういう定時制をなくさないでほしいという思いを強くいたしました。
都教育委員会が、こういう定時制4校を廃止すると、夜間定時制課程の閉課程計画を決定されたわけですけれども、その後も計画の凍結を求める署名が続々と集められて、この文教委員会ではなくて、都教育委員会の方に2万8千筆を超える署名が提出されたと聞いております。
このことについて、都教育委員会はどのように受けとめているのか伺います。

○増田教育改革推進担当部長 本年9月下旬に、都教育委員会に提出された請願は、これまでの都教育委員会への請願や都議会への陳情等とほぼ同じ趣旨でございました。
この請願に対しては、昨年度から説明してきた夜間定時制課程の入学者選抜の状況や、生徒の在籍状況には改善が見られず、夜間定時制課程をめぐる特段の事情変更が認められない中にあって、都立高校改革推進計画新実施計画を着実に実施していく旨を請願者に回答したところでございます。
このように、都教育委員会としては、これらの意見に対し、これまで説明を尽くしてきていると考えております。

○里吉委員 入学者選抜の状況や生徒の在籍状況に改善が見られない。つまり応募人数がふえない、特段事情変更が認められないので、計画は実施するというお答えでした。
私は、以前の質疑のときにも申し上げたのですが、夜間定時制高校のPRが本当に不足していると思うんです。都教育委員会の発行している定時制課程、通信制課程の入学案内の冊子には、あなたが行きたい学校はどのタイプとありまして、日中働きながら高校に通いたいな、それなら定時制高校ならできますと、こういう説明なんですね。現在の状況とも全く違うんじゃないかと思うんです。
中学校の先生や、周りに今の夜間定時制高校の特徴をよくわかってくれる方がいれば、丁寧に説明して、夜間定時制高校を勧めてくれる、そういうこともあるでしょう。でも、そういう人が近くにいなければ、選択肢の中に入ってこない可能性もあります。
かつて定時制に通うような生徒が、今、通信制高校と連携したサポート校に通っているという話をよく聞きます。こうした学校は、全日制の入試の合格発表の日に、その学校周辺のサポート校のきれいなチラシを配布して、もし全日制に受からなかった方はこっちに来てください、こういうPRをしているわけです。
しかし、通信制高校とサポート校と、事実上2つの学校に通うだけのお金を払わなくちゃいけないわけで、私が話を聞いた方は、年間80万円かかるといっておりました。
経済的な心配もなく学べるセーフティーネットの学校としての夜間定時制高校を、もっと広く都民に知らせる努力をしていただきたいと思います。
そして、今回、請願にある高校をぜひ廃止を凍結して見直していただくこと、これから皆さんがきちんとPRしていただければ、こんなにすばらしい実践を行っている学校ですから、入学する人もふえるんじゃないかと思います。そうすれば、見直すこともできるんじゃないかと、私、今の答弁を聞いて思いましたので、ぜひそういうことを検討していただきたいということを求めて、江北高校定時制の廃止は凍結していただくことを求め、請願の採択を主張して質問を終わります。

◆定時制課程の給食について(陳情)

○里吉委員 それでは、定時制課程の、まず給食について伺います。
定時制課程の高校の給食は、勤労青少年の在籍割合の低下や生徒のライフスタイルの多様化、外食産業等の変化に伴い喫食率が低下しているというご説明でしたが、定時制高校の先生に伺うと、生徒たちと給食を食べることでいろいろなコミュニケーションがとれるとか、おいしい給食を食べることを楽しみに頑張って通ってくる生徒も多いと伺いました。
さらに、高校生は体をつくる大切な時期であり、食育という点でも、夜間定時制高校の給食は大きな役割を果たしていると考えます。
バランスのよい食事など工夫していただいていると思いますが、現在の都教育委員会としての工夫について伺います。

○初宿都立学校教育部長 都教育委員会は、学校給食法に基づく学校給食実施基準に従い、栄養バランスを確保し、多様な食品を組み合わせた食を提供し食に関する指導や食の内容の充実を図っております。
具体的には、季節感のある献立の作成や都内産食材の使用とともに、あわせて献立表の配布や掲示物などを活用し、学校給食を通した生徒の食に対する理解の推進に取り組んでおります。

○里吉委員 季節感のある献立、都内産食材の使用など、大変努力しているということがわかりました。
先日、江北高校に伺ったときにも、ちょうど給食を食べているところだったんですが、みんなきれいに食べて残菜はほとんどありませんでした。
自校方式の温かいおいしい給食で、おいしそうだなと思って生徒さんに声をかけたんですけれども、皆さん笑顔でおいしいですというふうに答えておりました。
それでは、なぜ喫食率がこれだけ低いのかということになるんですが、もちろんさまざま理由はあると思いますが、私がいろいろな定時制高校で、先生たち、校長先生から話を聞くのは、やはり費用負担の問題なんですね。特に、1カ月分まとまって先に払ってからその次の給食を食べるという、こういうやり方だと思うんですが、まとまった費用負担が大変で、給食を食べない生徒も多いと聞いております。
この点で、喫食率を改善するための都の取り組みについて伺います。

○初宿都立学校教育部長 給食費は、学校ごとに期間を定め、他の学校徴収金とともに納入することになっております。
都教育委員会では、徴収回数の設定に関して、保護者に過度の負担がかからないことに留意するよう各学校に指示をしております。
学校では、生徒、保護者からの申請により、分納の取り扱いも行われております。
また、夜間定時制課程の夜食費補助金制度により、就労中の者や求職中の者等を対象に給食食材費の一部を補助し、給食費負担の軽減を図っております。
現在、給食の提供に当たりましては、調理した給食を冷却や再加熱しないで配送するシステムを導入するなど、メニューを豊富にし安全を確保した上で、鮮度や味の保持にも努める給食の改善に取り組んでおります。

○里吉委員 先日視察した江北高校でも、徴収回数は月2回に分けて、1回の納入金額を少なくする努力をしておりました。また、今、お話にもあったように、おいしい給食を提供する努力もしていただいているということです。分納することで助かっている生徒さんもいると思います。しかし、まだ喫食率が低いことを考えますと、ここへの財政支援も検討するべきではないかと思います。
高校生向けの奨学金制度の創設が検討されていますが、大事な食事への支援も、ぜひ検討していただきたいということを要望しておきます。

◆定時制課程の就学支援、就労支援の拡充について(陳情)

次に、就学支援、就労支援について伺います。
定時制高校に通う生徒の中には、不登校経験や中途退学を経験している生徒、また、家庭にさまざまな困難を抱えている生徒も少なくありません。そのため、スクールカウンセラーなどの支援が重要です。
全日制と夜間定時制を併置している高校では、昨年度まで1人のスクールカウンセラーしか配置されていませんでした。今年度から、それぞれの課程に1人ずつ配置されるようになりました。
そこで、昨年度までの相談実績とスクールカウンセラーを拡充した理由について伺います。

○出張指導部長 全日制課程と夜間定時制課程を併置している都立高校42校におきまして、スクールカウンセラーが平成27年度に生徒、保護者、教員等から受けた相談件数の合計は1万2525件でございます。
そのうち、生徒からの主な相談内容については、多い順に友人に関すること、学習や進学に関すること、家庭や家族に関することなどとなっております。
今年度から課程別にスクールカウンセラーを配置した理由は、それぞれの課程に在籍する生徒等からの相談に当てる時間を十分に確保することにより、学校教育、相談体制の一層の充実を図るためでございます。

○里吉委員 今までは全日制、定時制で1人のスクールカウンセラーの方に両方お願いしていたのを、1人ずつ配置されたということで、大きな前進だと思います。
しかし、今回出ております陳情では、週に1回、各課程に1人の配置では、まだ相談に応じ切れないということも書かれております。実績を見てからだと思いますけれども、さらに必要であれば、拡充も検討していただきたいと思います。
次に、自立支援チームの派遣について伺います。
今年度から、都教育委員会にスクールソーシャルワーカー等から成る自立支援チームを新たに設置して、2、3人で一つのチームをつくると伺いましたが、在校生に対する進路決定等の支援に加えて、中途退学後の就労や再就職に向けた支援を行ってきたと伺いました。
現在、定時制のうち、自立支援チームが継続的に派遣されている学校は幾つあるのでしょうか、また、具体的にはどのような取り組みが行われているのでしょうか、伺います。

○粉川地域教育支援部長 都教育委員会では、今年度から、全ての都立学校を対象として自立支援チームを派遣しており、そのうち継続的に定時制課程に派遣している学校数は23校でございます。
自立支援チームは、面談等を通して生徒の状況把握や助言などを行うとともに、教員等と連携したケース会議を実施するなど、生徒一人一人の自立に向けきめ細かく対応しております。

○里吉委員 教員とも連携してケース会議まで開いて、一人一人の自立に向けて対応しているということで、中途退学をふやさない、また、もし退学となっても、その子たちがきちんと社会に出られるような支援をしていくということで、大変重要な取り組みだというふうに思いました。
江北高校のときにもこの話について伺ったんですが、同じ方が継続して学校に来て相談に乗ってくれるので、本当に信頼関係が生徒たちとできているし、やむを得ず退学することになっても、高校に相談すれば、こちらのチームの方につないでもらえる、就労相談にも乗ってもらえる窓口があるということで、学校をやめても、学校と関係を切らない努力がされているということで、今後そういうことがあっても、子供たちが社会に出ていくための手助けができる、そういう体制ができたというふうにおっしゃっておりました。
これは、継続派遣校以外にもきちんと対応しているということで伺ったんですが、要請があれば、このチームが訪問するということで、現在どれぐらいの学校に派遣を行っているのでしょうか、また、そのうち定時制高校への訪問は何校あるのでしょうか、相談内容とあわせてお伺いします。

○粉川地域教育支援部長 都立学校からの要請に応じて自立支援チームを派遣した学校数は、現時点で16校でございます。
そのうち定時制課程に派遣した学校数は5校であり、就職を目指す生徒には、進路決定に向けた支援や、家庭環境への働きかけが必要な生徒には、関係機関と連携した福祉的支援などを行っております。

○里吉委員 就労相談も福祉的支援も両方を実施できるということで、本当にきめ細かい支援ができているというふうに感じました。
家庭の問題についても支援できるスクールソーシャルワーカーの存在は本当に大事で、なかなか学校の先生、そこまでできませんので、これが本当に大きな対策になるというふうに期待しております。
特に定時制高校の先生たち、校長先生にもよくいわれるんですが、本当にここに通ってくる生徒の多くが家庭に困難を抱えている生徒が少なくない。正規雇用で働けるように支援すること、家庭の経済的困難を乗り越えられるように相談に乗る、そういう丁寧な対応が本当に求められている学校だというふうにいわれておりました。
一人一人に寄り添った支援で、就学、就労支援に引き続き取り組んでいただきますよう要望して、陳情については趣旨採択を求め、質問を終わります。

◆陳情への意見表明

○里吉委員 陳情28第80号、東京都内の公立小・中学校における「和楽器の表現活動」の推進に関する陳情について意見を申し上げます。
この陳情は、都内公立小中学校において、豊富な洋楽器系指導内容の存在と、授業時間数削減の影響から、和楽器の指導について十分でないようだと訴えております。
その上で、学校にどれだけの和楽器があるのか、どれくらい教えているのか、どのような指導内容なのか等を調査して、その改善を求めております。
全都各地の中学校で三味線を教えている三味線のお師匠さん、私、知り合いにいるんですが、その方にお話を聞きました。そうすると、授業での和楽器の扱いは、学校によって本当に全く違うそうです。
特に熱心な音楽の先生がいると進むけれども、その先生が転任してしまうと、せっかく楽器がそろっていても、倉庫にしまいっ放しになってしまうというのはよくある話だとおっしゃっていました。
また、ある学校に近隣住民の方が、そのときは三味線をわざわざ張りかえて贈呈したのに、全く使われていなかった。私がお話を伺った三味線の師匠がそれを知って、引き取って、今、別の中学校で使っているそうです。
このお師匠さんは、音楽の先生に直接三味線を教えたり、クラブ活動の時間など、さまざまな機会を活用している方で、年1回は全都の中学生を集めての発表会なども主催をしております。
陳情者の方も、これまで邦楽普及の鍵は学校教育にありを信条として取り組んできたと、関係者の皆さんと和楽器が学校教育の中で取り組まれるよう努力をされてきた方です。
今、学習指導要領にも示されているわけで、中学校では必修になっているはずなんですが、この日本の古くからの三味線やお琴、こういう音楽はなかなか私たちは聞く機会がないというのが現状だと思います。
専門の方々が熱心に働きかけて、和楽器を学ぶ音楽の先生も少しずつふえているという ことですが、まだ全体の一部にすぎないということだと思います。音楽の授業も少なくなっているようです。
具体的には、区市町村教育委員会の権限と責任において行われるということはそのとおりだと思いますが、さまざまな研究団体などが行っている研修会をさらに広く周知することや、すぐれた経験を紹介するなど、都教育委員会としても、子供たちに、洋楽器もいいけれども、日本にはこういう楽器があるよ、和楽器があるよ、無理なく教えられるように工夫していただきたいと思います。
以上、この陳情は、趣旨を採択することを求めて意見といたします。