【談話】2017年第1回定例会を終えて
2017年3月30日
日本共産党東京都議会議員団 幹事長 大山とも子
今定例会では、小池知事のもとで編成された初の本格予算である2017年度東京都予算案が審議され、わが党は、切実な都民要求実現のため全力をつくしました。また、石原都政以来の「都政の闇」の象徴ともいえる、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転問題について、都民世論とわが党の提案によって実現した百条委員会の場などを含めて真相解明と、豊洲移転を中止し築地市場の再整備に向けた本格的検討を進めていくために力をつくしました。
1.2017年度東京都予算について
(1)わが党は、小池知事が編成した来年度東京都一般会計予算に賛成しました。 それは第1に、予算案に保育園の待機児解消目標の大幅引き上げや保育士給与の引き上げのための補助、23区内の保育園に土地を貸し出す方への固定資産税・都市計画税の減免措置が行われること、私立高校生の3割を占める年収760万円未満の世帯に対し授業料無償化の拡大がおこなわれること、都立高校生への給付型奨学金の創設など、都民要求にこたえる施策が一定程度盛り込まれているからです。これらは、かねてから都民の強い要求と実現を求める運動があり、わが党が実現に向けて力をつくしてきたものです。
また、著しく不十分な高齢者福祉の充実を求めたわが党の質問に対し、知事は低所得で暮らす方がいることは十分認識しており、そうした高齢者の方々にとって東京を安心して暮らせるまちにしていきたいと答弁しました。さらに、NICU(新生児のための集中治療室)や子どもの医療費助成など、区部と比べて多摩地域が立ち遅れている、いわゆる「多摩格差」を指摘し、格差解消をどのようにするのかを質したのに対し、知事が「多摩格差ゼロをめざすような政策、これを立案、そして実践していきたい」と石原都政以降、初めて「多摩格差」解消の立場を表明するなど、いくつかの積極的答弁がありました。
こうした予算や知事答弁で示された積極面は、切実な都民要求から見ればまだ部分的であるとはいえ、石原都政以降の都政の流れから見れば一定の変化であり、重要だと考えます。
投資的経費は13年ぶりに減額されたとはいえ、外郭環状道路や住民の強い反対がある特定整備路線などに巨額の投資がおこなわれ、石原都政以降つづけられてきた幹線道路整備を重視する予算配分は変わっていません。このためわが党は、問答無用に住民を追い出して生活やコミュニティを破壊してしまう道路建設や、貴重な緑を奪い自然を破壊する開発のあり方にメスを入れることを求めました。これに対し知事が「事業の必要性や経費の内容を厳しく検証し、見直すべきは見直しを行う」と答弁したことは、重要であり、わが党は今後の方向を注視していくものです。
一方、臨海部開発をいっそう促進するために巨大道路建設などに莫大な投資をおこなう臨海地域開発事業会計などには反対しました。
わが党は、新年度の一般会計予算には賛成しましたが、さらによりよい予算にするために、住民が反対している大型道路建設予算などを削減し、特別養護老人ホームの増設、介護職員の賃金引き上げなど高齢者福祉の充実、保育園のさらなる増設、35人学級の推進、若者応援・正規雇用の促進、中小企業対策の拡充など切実な都民要望を進めるための予算組み替え提案をおこないました。残念ながら提案は否決されましたが、今後、提案を実現するために全力をつくすものです。
(2)わが党は、生活者ネットワークとともに、「東京都シルバーパス条例の一部を改正する条例案」を提案しました。内容は、現在、所得が125万円を超えると2万510円となる費用負担を、所得に応じた費用負担に区分すること(現在の負担額が2万510円で所得190万円以下の方への3千円パスの発行を想定)、多摩モノレールやゆりかもめにも乗車できるようにすること、都県境を超えて使用できるようにすることです。しかし、他会派から継続審議を求める提案があり、わが党も継続審議に賛成しました。議会内外の運動をいっそう強化して、第2回定例会での成立に全力をあげるものです。
2、築地市場の豊洲新市場への移転問題について
今議会でわが党は、豊洲移転を中止し、築地市場の土壌汚染の調査・対策や必要な補修を行いつつ、都民、専門家の英知を集め、市場関係者の合意を得ながら、現在地再整備の本格的検討を進めるよう全力をつくしました。
重大なことは、今年1月、豊洲新市場用地の9回目の地下水モニタリンング調査の結果、環境基準の79倍のベンゼンをはじめ環境基準を上回るヒ素、シアンなどが検出されたことが発表され、3月の再調査でも、環境基準の100倍のベンゼンをはじめ環境基準を上回るヒ素、シアンなどが調査地点の多くで検出されたことです。これは、豊洲市場予定地の地下には大量の汚染物質が残されていることを明確に示したものであり、地上も地下も環境基準以下にするという、都の都民への約束が、破たんしたことを示すものです。これに対し、自民党は、築地市場は、土壌が汚染している、危険だなどという質疑をくりかえし、築地市場の東京ガス豊洲工場跡地への移転を知事にせまり続けています。しかし、自民党の言い分は通用しません。戦後、進駐軍によって接収されていた時期にクリーニング工場やガソリンスタンドがありましたが、当時のクリーニングでは、現在使われているような有害化学物質は、使われていません。ガソリンは微量のベンゼンを含むものですが、豊洲新市場のように、何十年間も敷地に流された大量のタールに含まれていたベンゼンと違って、揮発しやすいので、土壌中の残留は少ないとされているのです。
また、築地市場の一部で環境基準の2・4倍のフッ素などが検出されていますが、その周辺地域では検出されていません。築地市場の汚染は、豊洲新市場予定地の汚染に比べて、質的にも、量的にも比較にならないほど少ないのです。自民党は、築地市場は老朽化しているとか交通事故の危険があるなどとも言っています。しかしそれは、石原都政以降、移転を前提に建物や道路などがまともに補修・改修されてこなかったからであり、当時、最大与党だった自民党こそ、築地市場の改修などを放置してきた責任は重大です。
小池知事がつくった都の市場問題プロジェクトチームによれば、技術の進歩により、築地市場を営業しながら改修することは支障がないし、工事費用も豊洲新市場の約6000億円に対し、500億円から800億円ですむことが報告されています。築地市場の再整備こそ、最も現実的な方向だと言わなければなりません。
3、百条委員会について
今議会では、豊洲市場移転問題に関する百条委員会が設置され、証人喚問がおこなわれています。百条委員会では、4回の証人喚問がおこなわれました。石原元知事の尋問は全体で1時間にすぎず、わが党の質問時間はわずか9分という制約のもとでしたが、これまで公表されなかった記録の提出も含め、重要な事実を明らかにし、石原元知事の責任を明確にすることができました。すなわち尋問を通じて、石原元知事が汚染を知りながら移転を決裁し、土地購入にあたっても、本来、売主である東京ガスに汚染を除去させるという原則を投げ捨て、東京ガスの負担はわずか78億円にしただけで、瑕疵担保責任を免責することまで了承していたことが明らかになったのです。
さらに都は、東京ガスが負担すべき防潮護岸の負担をなしにするなど、東京ガスにとって、いたれりつくせりの「確認書」を密かに結んでいたことが明らかになりました。しかし、百条委員会に課せられた調査事項全体から見れば、調査はまだ入り口に過ぎません。わが党は、石原元知事や浜渦元副知事の再尋問を含め、徹底解明をおこなうため、ひきつづき奮闘するものです。
4、議会改革について
今議会で、議員報酬の2割削減、政務活動費の減額と会計帳簿や領収書のインターネットでの公開、費用弁償の廃止についても全会一致で決定されました。わが党は、この3つの課題も含めた幅広い議会改革の提案をおこない、一致点での改善をはかる努力をしてきました。今回の決定は、さらなる議会改革への重要な一歩だと考えます。
わが党は、ひきつづき幹事長専用車・会派への優先車の廃止などの公用車使用のルール化や現行の海外調査の中止と見直し、知事との1問1答方式の質疑の保障をはじめ議会質疑の活性化など、さらなる議会改革の推進のために力をつくすものです。
以 上