介護人材「不足感」6割の事業所に—区長に改善求める~田中まさや区議会議員が、区政リポート8月23日号を発行しました
介護人材「不足感」6割の事業所に—区長に改善求める
区として、賃上げ助成など介護労働者の処遇改善を
深刻な介護労働者不足と介護労働者の処遇改善の緊急性が、8月に公表された介護労働安定センターの調査で明らかになりました。
同センターの2018年度の「介護労働実態調査」は、全国9102介護保険サービス事業所と2万2183人の介護労働者の回答をまとめたものです。
介護労働者の2割超が60歳以上に
調査によれば、介護労働者の1割以上が65歳以上で、60歳以上では2割を超えることが明らかになりました。また、介護人材の「不足」を感じている事業所は67.2%と5年連続上昇しました。不足の「理由」は、「採用が困難」で9割を占めますが、その理由の上位は、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が56.2%と「他産業に比べて、労働条件が良くない」が54.9%でした。
労働者も事業者からも悲鳴が…
労働者に尋ねた「職場での労働条件・仕事の負担に関する悩み、不安、不満等について」では、「訪問系」・「施設系」いずれも、「人手が足りない」がトップ、「仕事のわりに賃金が低い」が2位、「有給休暇が取りにくい」が3位と上位を占めました。
これらの背景に、介護労働者の処遇改善が進んでいないことがあります。実際、労働者の平均賃金は、正規・月給の訪問介護員で月21万1732円(前年比7097円増)、介護職員で月21万7465円(同2614円増)と増えてたものの、依然として全産業平均(月30万6200円)に比べて約9万円低くなっています。
安倍政権が処遇が「改善した」という根拠にしている「処遇改善加算」については、加算を取得している事業所が行った実際に行った処遇改善は、「一時金の支給」「諸手当の導入・引上げ」が6割だったのに対して、「基本給の引上げ」は4割にとどまっています。労働者に尋ねた「賃金や手当等の希望」では、「基本給の引上げ」が6割を超えていますが、事業所の経営状態などが反映して「基本給の引上げ」に踏み切れず、労働者の願いにこたえられていない事態も明らかになりました。
実際、介護事業所が「事業を運営するうえでの問題点」では、「良質な人材確保が難しい」が56.3%、「今の介護報酬では、人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」48.0%、「経営が苦しく、労働条件や労働環境改善をしたくてもできない」32.0%と続いています。
安倍政権は、処遇改善加算を引き上げましたが、介護報酬本体を引き下げてきたことが介護事業所の経営を圧迫しているのです。
介護労働者の抜本的処遇改善を
介護労働者が希望を持って働くことができ、人材不足を解消するためには、介護報酬の削減を止め、増額・底上げに踏み出すことが必要です。国費の直接投入や自治体独自の賃金助成などによって賃金を大幅に引き上げ、労働環境の抜本的な改善を進めることが求められます。
区独自の処遇改善求める
私は、第2回定例会の一般質問で、区長に区として介護労働者の処遇改善を実施するよう求めました。以下は、質問と答弁の要旨です。
現在、介護職員の賃金は全産業平均より約8万円も低く、福祉の仕事に魅力を感じながら、低賃金などを理由に、働き続けられない深刻な事態が続いています。区内の訪問介護事業所では、介護士不足のため利用者を断らなければならない事業所も出ています。ある区立の特別養護老人ホームでは、介護士が16人も欠員で、派遣で対応している。利用者は、寝返りの回数が減り「褥瘡」ができたと話しています。区長はこうした実態をつかんでいるのですか。どう対応しようとしているのか伺います。
政府は、消費税増税と引き換えに、「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円賃上げ」するとしていますが、介護士の平均勤続年数は6年で、しかも賃上げの判断は事業所任せのため、多くの介護士には処遇改善にならないとの懸念が広がっています。いま求められているのは、すべての介護職員に対する賃金の引上げです。区として、区内の介護施設や介護士の賃金を引き上げるための助成制度を作るべきです。また、保育士と同様に介護職員にも、区独自に宿舎借上げ助成制度を実現すべきです。区長の所見を伺います。
区長答弁
介護士の処遇改善については、区には原稿の処遇改善加算に加えて、今年10月からは特定処遇改善加算を設け、経験・技能のある介護職員に対する更なる処遇改善を実施するとしております。これらの制度は、介護士の処遇改善につながるものと考えており、区独自に賃金改善のための助成制度を作る考えはありません。
一方、介護職員の人材確保・定着は重要な課題であると認識しており、引き続き実効性のある施策の検討を進めてまいります。