区長の独断で、図書館・社教館などの存廃を決めることも可能に ~区議会第1回定例会・渋谷区組織条例の改正に反対 田中まさや議員が、区政リポート4月22日号を発行しました⑴
区議会第1回定例会・渋谷区組織条例の改正に反対
区長の独断で、図書館・社教館などの存廃を決めることも可能に
長谷部区長は、区民の多数の反対を押し切って、渋谷図書館の廃止を強行しました。区長と廃止条例に賛成した自民、シブヤ笑顔、公明などは、地域住民にとってかけがえのない文化、教養、教育の拠点を廃止した責任が厳しく問われます。
同時に、区議会第1回定例会には、図書館や社会教育館、美術館などの教育、文化施設を、教育委員会の所管から区長部局に移して、運営から存廃までも区長の思うままにすることを可能にする「渋谷区組織条例の一部を改正する条例」が、日本共産党とれいわ渋谷以外の賛成多数で強行されました。
日本共産党区議団は、総務委員会や本会議で、条例の問題点と危険性を明らかにして反対しました。
以下、本会議で私が行った反対討論(要旨)です。
本案は、渋谷区組織条例にデジタルサービス部、産業観光文化部、生涯活躍推進部、まちづくり推進部を新設し、財務部を廃止するとともに、これにともなって各部の所掌事務を移動または整理するものです。
反対理由の第1は、渋谷区の組織の在り方を、いっそう大企業の儲けに奉仕する体制にする
今回の組織改正では、デジタルサービス部を創設し、デジタルサービス推進担当課を新設、スマートシティ推進室を経営企画部から移管することで、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、行政サービスの質の向上を図るとしています。
政府と財界は一体となって新自由主義経済政策をすすめ、国民のいのちと生活を守ってきた規制を緩和し、格差と貧困をひろげてきました。(中略)
政府は、個人情報をもうけの種にした「ビッグデータ利活用」を成長戦略として位置づけ、官民データ活用推進法やデジタル改革推進法と自治体DXによって、行政手続きや業務のオンライン利用を原則化し、国や自治体保有の個人情報を民間企業が活用できるようにしました。自治体DXについて、経済産業省のガイドラインは、「業務そのものや組織、プロセスなどを変革し競争上の優位性を確立する」と定義しており、データの利活用が優先され住民サービスの後退や、個人情報の保護も後回しにされかねません。
今回の組織改正は、財界戦略に沿って個人情報の利活用による大企業の利益追求を可能にする体制を構築するものであり認められません。まず個人情報やプライバシー権保護のルールを確立すべきです。
デジタル化は利便性の向上の面で必要ですが、デジタル化自体が目的となり、住民サービスが後退する事態が起きています。(略)渋谷区でも、コロナワクチン接種の予約で、インターネットを利用しないかできない高齢者などが予約しにくいという事態がすでに発生しています。
渋谷区の責任は、すべての区民に等しく、だれ一人取り残さず行政サービスを提供することであり、デジタルを利活用できない区民への支援こそ重視すべきです。
今回の組織改正は、渋谷区の組織を、個人情報の利活用による大企業の利益追求に奉仕する体制をくるもので認められません。
第2は、図書館、社会教育館を生涯活躍推進部へ、美術館、郷土博物館・文学館、文化財保護を産業観光文化部へ、教育委員会の所管から区長部局へ移すこと
条例案の付則では、「図書館、郷土博物館・文学館、美術館及び社会教育館の設置、管理及び廃止に関する」権限を「教育委員会」から「区長」に変えています。つまり、すべての権限を教育委員会からはずし、区長が握るものです。これでは、社会教育のための施設を、区長の独断で、施設や事業の改廃や、他施設との複合化・共用化、有料化もできることになり、あらゆる人の学びの機会を広く無料で保障する社会教育の視点より、産業振興や儲け、効率化が優先され、区民から社会教育や文化・教養・教育の機会を奪いかねません。
条例改正の質疑で、これまで同様社会教育の機会が保障されることを担保する条項はないこと、23区の中で、図書館や社会教育館、美術館などを区長部局に移している区はないとこも明らかになりました。
すでに長谷部区政は、富山臨海学園や山中高原学園、新島青少年センターを廃止し、今度は、トップダウンで渋谷図書館まで廃止しようとしています。これまで社会教育の施設については、教育委委員会で教育的な視点から集団的に熟議して決めていたものが、今回の組織改正によって区長のトップダウンで決められることになります。
国会が根拠法の改正の付帯決議で「公共社会教育施設が国民の知る権利、思想・表現の自由に資する施設であること」に「格段の配慮」を求めたのは、社会教育の視点が後回しにされる危険性を指摘したものに他なりません。
渋谷区のかけがえのない社会教育の場を奪いかねない組織改正は認められません。社会教育館、図書館、郷土博物館・文学館などは教育委員会にとどめるべきです。