区民に冷たく、大企業優遇、住民無視の予算に反対 ~区議会第1回定例会・・・党区議団は独自に、福祉増進の条例提案 田中まさや議員が、区政リポート4月4日号を発行しました
区議会第1回定例会・・・党区議団は独自に、福祉増進の条例提案
区民に冷たく、大企業優遇、住民無視の予算に反対
物価高騰がいっそう区民のくらしを困難にしています。区議会第1回定例会で日本共産党区議団は、区民に冷たい区長提案の予算に反対するとともに、議員提案権を活用して、独自の条例案や予算修正案を提案し、くらしを守り区民福祉を増進させるために全力をあげました。(下表参照)
今号では、最終本会議で牛尾議員が行った、渋谷区予算に対する反対討論の要旨をご紹介します。
物価高騰が続き、賃金も年金も実質低下する中で、区民のくらしと中小業者の営業は厳しさを増しています。とりわけ、主食のコメは昨年の約2倍に高騰し、低所得の方からは「食事の回数を減らすしかない」などの深刻な声が聞かれます。
渋谷区は、住民に最も身近な自治体として、区民と滞在者の安全を守り、住民福祉の向上を図ることがかつてなく求められています。
ところが、区長が示した新年度予算案は、区税収入だけでも50億円も増え、過去最大の予算規模でありながら、区民生活を支える施策はわずかで、自治体の役割を投げ捨てるものと言わざるを得ません。以下、予算に反対する理由を述べます。
第1に、区民のくらしをまもり、中小事業者を支援する施策と温暖化対策が不十分
予算には物価高騰で困難となっている区民への独自の支援は全くありません。区長が唯一の物価高騰対策と言って一昨年から開始されたハチペイの50%ポイントキャンペーンも、利用できる区民は2月末時点でも約5万3千人、店舗は約4300店舗に過ぎず、物価高騰で困っている区民や区内中小業者の一部にしか届きません。しかも、新年度は抽選でハワイ旅行が当たるキャンペーンまで実施する予定です。物価高騰対策として実施する施策というならば、区民の誰もが利用でき、商店街の多くの店舗も利用できるよう紙の商品券やクーポン券の発行などを合わせて行うべきです。また、私たちが予算修正案で提案した、低所得者への給付金や、中小業者への直接支援、高齢者と若者への家賃助成、出産一時金の増額、子育て世帯の教育費の負担軽減などを、増えた税収を活用して実施し、区民のくらしと営業を守るべきです。
区として実施できる賃金引上げに背を向けていることも重大です。
24年度の渋谷区の委託契約の労働報酬下限額は1260円ですが、25年度から新宿区は1438円、世田谷区は1460円に引き上げます。このままでは、渋谷区の公契約を受ける事業者はいなくなります。労働報酬下限額を抜本的に引き上げるべきです。また、小規模事業者への区独自の賃上げ支援を行うべきです。さらに、公契約条例の対象については、5000万円以上の請負契約と2000万円以上の委託契約、すべての指定管理協定に拡大すべきです。
保育職員の賃金が低いため、必要な職員が確保できません。今年は40人の募集に対して10人も不足する事態となっており、給与の引き上げは急務です。また、区立保育園の保育補助の会計年度任用職員の時給は、労働報酬下限額よりも低いだけに、抜本的に引き上げるべきです。
気候危機を打開する取り組みが弱いことも問題です。区の温室効果ガスの削減目標は、国や都の不十分な目標に合わせたに過ぎません。新年度は、庁舎のゼロカーボン化が示されたのみで、住宅太陽光発電助成や総合相談窓口も未実施です。ただちに2050年ゼロカーボン宣言を行い、2030年までの温室効果ガス排出量50%以上削減を目標に実現に向けた施策を実施すべきです。
第2に、施設使用料値上げなど区民に負担増を押し付け、福祉や教育を切り捨てている
公共施設使用料が7月からいっせいに値上げされ、区民への負担増になります。予算には、使用料の歳入として、地域交流センターが523万8千円、代々木八幡区民施設が316万6千円、インクルーシブセンターが、6万6千円などの増額が見込まれています。公共施設は、区民の誰もが必要な時に利用できなければならず、物価高騰に追い打ちをかけ、住民が利用しにくくなる施設使用料の値上げは認められません。
区民が利用する施設の廃止が進められようとしています。
社会教育館は単なる貸館ではなく、社会教育法に基づく施設で、地域の学習や家庭教育、体験活動など、住民が無料で利用できる教育施設です。区は、昨年3月にまとめた「公共施設の再配置の基本的考え方」で、社会教育館について、貸館として機能が類似しているためとして、今後、建て替えを機に、コミュニティセンターへの転換を進めるとしていますが、社会教育の拠点としての役割を否定するもので認められません。最初に建て替えが予定されている幡ヶ谷社会教育館は、23年度の決算時点で228団体が登録しており、多くの利用団体が求めているように、工事中の代替施設をふくめ、社会教育館として存続させるべきです。
本町子育て支援センターは、1月までに電話・面接相談924件、子育て広場13,409人、短期緊急保育150人、子育て教室144人と多くの利用実績があります。今後は本町リサイクルセンター・レインボーほんまちの3階に移転する予定ですが、相談事業と子育てひろばは継続されますが、保護者が緊急に保育できないときに予約なし無料で子どもを預けられる短期緊急保育等は実施できません。子育て世代にとってかけがえのない施設となっている本町子育て支援センターを廃止することは認められません。
借上げ高齢者住宅は、住宅確保が困難な高齢者に低家賃の公営住宅を提供する区独自の施策として大きな役割を果たしてきました。しかし、区は笹塚2丁目のウインベル平野を4月末に、本町2丁目のやまぎしクオリティを9月末に廃止し、借上げ高齢者住宅を全廃します。
今年度の区営住宅募集では、世帯用は募集がなく、単身用は応募倍率が19倍となっており、高齢者の住宅確保は引き続き区政の重要課題となっています。区営住宅の増設計画も立てずに、借上げ高齢者住宅を廃止することは認められません。2か所の借上げ高齢者住宅の契約を更新して入居者を募集するとともに、区営住宅の増設を行うべきです。
第3に、大企業奉仕と不要不急の事業を進める無駄遣いの予算
渋谷駅周辺整備の中心五街区整備事業では、駅街区北側自由通路に2億7600万円、南口北側自由通路に3億2880万円の税金が投入されます。また、80億円の公費を投入して開設された桜丘口開発のさくらステージにつながる補助18号線の整備にも、16億9600万円が計上され、合計で23億円の公費投入が行われます。再開発をすすめる大企業の利益のための事業に、自治体が多額の税金を投入することはやめるべきです。
グローバル拠点都市推進事業には1億7394万円が計上されていますが、その中心的な狙いは、海外の優れたスタートアップの招致などにあてられます。スタートアップ戦略は投資を呼び込んで急成長する企業を作り出すことを狙うものです。こうした事業に多額の税金を使うことは、基礎的自治体の中小企業支援とは言えず認められません。また、新年度は、一般社団法人渋谷国際都市共創機構を設立。スタートアップ企業支援を一本化して進めようとしていますが、区民福祉の増進とは無関係であり、区から職員2名を派遣することはやめるべきです。
河津さくらの里しぶやには総額で3億1554万円が予算化されています。定員を2倍にするため、隣接する土地2か所の取得に1944万円、増改築の設計費として1億4248万円を計上しました。区民からは交通の利便性の悪さが指摘され、令和5年度の決算では、宿泊者一人当たり1万3千円近くを区が負担しています。施設の大規模化ではなく廃止して、より効果の高い区民の宿泊支援事業に転換すべきです。
第4に、区民の声を聞かずトップダウンの政治手法で進める事業に、多額の税金を投入している
玉川上水旧水路緑道再整備事業の予算は総額33億2158万円で、そのうち4か所の工事費として28億3378万円を計上し、大山緑道から初台緑道までの全ての区間で工事に着工することを予定しています。総額で113億円もの工事費と10億円の設計費はあまりに高額だという、区民の批判を押し切って工事を強行することは認められません。
地域の住民は、2月に3027人の計画の見直しを求める署名を区長に提出しているのに、新年度に大半の区域で工事着手する予算は、住民の理解を得て進めるという区の言明にも反する住民無視の工事強行と言わざるをえません。
しかも、区民環境分科会では、令和7年度予算に計上されたテラゾ材は、原料費だけで、舗装材として7200㎡分を単価16万3千円で11億7360万円、ベンチ50基として1億8500万円で1基370万円と異常に高額なのに、区と委託事業者で決めたというだけで、区民が納得できる説明はできませんでした。農園についても、やめてほしいという住民の方々と、農園をやりたい方々とが話し合い、農園の設置場所は緑道内でなくてもよいという方向で一致が見られているのに、引き続き話し合いを進めると言いながら、農園にすることに固執しています。
多くの住民は、区がすすめる緑道再整備に納得しておらず、住環境を優先にした静かな緑道の存続を望んでいます。整備工事の強行はやめて計画を白紙に戻し、住民の意見を聞くべきです。
新しい学校づくり整備方針に係る予算のなかで、学校統廃合による小中一貫校建設に向けた基本計画業務委託費は、猿楽小学校と鉢山中学校が2億8176万円、千駄谷小学校と原宿外苑中学校が1億6469万円となっています。学校関係者や住民に説明もせず、意見も聞かずに区長のトップダウンで決めた学校統廃合計画を進めることは認められません。統廃合を知った区民からは、小学校を廃校にして小中一貫校にする計画はいつ誰が決めたのか、などと計画に疑問の声が上がっており、鉢山中学校の準備委員の中からも、決定事項なのかと質問が出されたと聞いています。住民の合意が全くない計画は白紙にもどし、準備委員だけでなく広く学校関係者、住民の意見・要望を聞くべきです。(以下略)
以上一般会計予算に反対の討論とします。