人権教育など不十分で拙速ないじめ防止条例に反対 ~第3回区議会定例会・中間本会議開かれる 田中まさや議員が区政リポート10月1日号を発行しました

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第3回区議会定例会・中間本会議開かれる

人権教育など不十分で拙速ないじめ防止条例に反対

9月27日に開かれた区議会第3回定例会中間本会議では、区長提案の「公益的法人等への職員の派遣等に関する条例の一部を改正する条例」、「渋谷区いじめ防止等対策推進条例」、2021年度補正予算(第3号)の評決が行われました。

日本共産党区議団は、条例2件には反対し補正予算には賛成しました。今号では、トマ孝二議員が行ったいじめ防止条例に対する反対討論(要旨)をご紹介します。

 当区でいじめ防止等対策推進条例を制定するにあたっては、全国各地の取り組みから学ぶことが重要です。昨年11月には町田市の小学6年生が、今年2月には旭川市の中学2年生が、いじめにより自殺に追い込まれるという痛ましい事件が起こっており、こうした教訓を十分に生かして条例に反映させることが求められています。

 いじめは区内の小中学校でも起きており、子どもや保護者、教職員、いじめ問題にかかわる多くの専門家などの意見を十分に聞き、条例を生きた効果的なものにしていくことが重要です。

 ところが本条例は、平成25年に制定された「いじめ防止対策推進法」の条文をなぞったもので、当区の子どもや保護者、教職員とともに深く検討を行って作成されたものではありません。

 第一の問題は、第6条の(学校及び学校の教職員の責務)で、「いじめは重大な人権侵害であって決して許されないものであるとの認識」と規定しながら、その責務については、「学校の教育活動全体を通じて児童等に対しいじめの問題に関する啓発、指導を行うこと」と定めるだけで、児童・生徒の人権を守っていく教育の内容についての記述はありません。

 いじめをなくすためには、一人ひとりの子どもが人間として尊重され、安心して生活できるようにするための教育が強く求められます。教育は、学校・教職員が主体的に判断して進めていくことで成果が上がります。それだけに、学校・教職員の自主性を尊重し、一人一人の児童・生徒の言葉に耳を傾ける誠実さ、困っている状態を理解し共感する温かさをもって児童・生徒の人権を守っていく教育活動の在り方を明記することがもとめられます。2012年に制定された岐阜県可児市の条例は、憲法と子どもの権利条約の立場に立って、「学校は、子どもがいじめをなくすために主体的な行動をとることができるよう、子どもに対して、人権に関する教育を行います」と定めています。本区でも学校の責務として人権に関する教育を明記すべきです。

 第二の問題は、第7条の(保護者の責務)第1項で、「保護者等は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、その保護する児童等がいじめを行うことのないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努める」と定めて、いじめを家庭の責任としていることです。

 多くの保護者はいじめをしない子に育ってほしいと願っています。それをどう果たすのかは、保護者が主体的に考え、自主的に行うもので「規範意識を養うための指導」を一方的に条例で命じるものではありません。

 いじめをしない子に育てるには、家庭の深い愛情や精神的な支えのもと、親子の会話や触れ合いで信頼を深めることなどが重要で、規範意識を指導し強要するやり方は間違いです。

 また、第2項で「保護者等は、その保護する児童等がいじめを受けた場合には、適切に当該児童等をいじめから保護するものとする」と規定しています。

 しかし、いじめを受けている子どもの多くは、はずかしい、親に心配をかけたくない、自分をみじめな存在と認めたくない、あるいは知らせたらいじめがよりひどくなる、などの思いから、保護者が心配して聞いても、ほとんどの子どもは、「大丈夫」などと言って本心を言えないものです。実際、町田市の保護者は報道で、わが子がいじめられ苦しんでいたことを死ぬまでわからなかったと述べているように、いじめられている子どもを発見した場合、学校側は、いち早く保護者に知らせ一体となって解決にあたるべきです。

 本条例は保護者に対し、「いじめをうけた場合には、適切に当該児童をいじめから保護するものとする」と一方的に責務を押し付けるだけの条文となっていることは、きわめて不十分と言わなければなりません。

 第三の問題は、当区でも230件のいじめが発生し、その中には、重大事態である不登校となった子どもがいる中で、いじめについて徹底的な議論を尽くし、条例を実効性のある内容にしていくことが重要であるにもかかわらず、議論が全く尽くされていないことです。

 実際、本条例についての文教委員会質疑の答弁では、教育委員会での本条例の審議は2回だけで、時間も15分程度ということでした。また、条例は、区民に広く周知し、地域ぐるみでいじめをなくすために制定すべきものであり、子どもはもとより、保護者、教職員、専門家、地域住民など広く意見を求めることが不可欠です。条例が提案されていることを知った児童委員からは、「私たちの声もぜひ聴いてほしかった」という声も寄せられています。条例を拙速に制定することは認められるものではありません。

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