区民に負担増と福祉切り捨ての一方で、大企業優先とトップダウンの予算に反対 ~共産党区議団は、27年連続で予算修正案、条例提案を提出 田中まさや議員が、区政リポート4月5日号を発行しました

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共産党区議団は、27年連続で予算修正案、条例提案を提出

区民に負担増と福祉切り捨ての一方で、大企業優先とトップダウンの予算に反対

区議会第1回定例会は、渋谷区の2024年度予算が提案され多数で可決されました。日本共産党区議団は、物価高騰がくらしや営業を直撃し、防災対策の抜本的強化など、いのちとくらし最優先の予算が求められているとして、区長提案の予算に反対し、27年連続となる予算修正案や条例提案を行い実現に全力をあげました。

2024年度渋谷区予算の票決結果

今号では、牛尾議員が最終本会議でおこなった区長提案の一般会計予算に反対する討論(抜粋・要旨)をご紹介します。

第一に、区民のいのちとくらしを守り、中小事業者を支援する施策が不十分

 実質賃金が22カ月連続で低下し、物価高騰による二人以上の世帯の負担増は3年間で年間28万円にのぼるなど、深刻化する区民のくらしや、燃料をはじめ原材料費の高騰にあえぐ中小業者への支援を行うことは区の一番の役割です。ところが新年度予算には区独自の支援は、無利子の事業資金融資とハチペイ以外にはほとんどなく、自治体の役割を果たそうとするものではありません。わが党が提案している、低所得者への給付金や、中小事業者の直接支援、若者や子育て世帯への家賃助成など、ため込んだ基金も活用して区民のくらしと営業を守る予算にすべきです。

 能登半島地震が発生して多くの建物が倒壊しました。劣悪な避難所の環境や、在宅避難者への支援の乏しさが問題となりましたが、新年度の復活予算には防災対策の抜本的強化の予算がつけられていないことは重大です。建物倒壊からいのちを守り、避難所運営の改善にもつながる住宅耐震化や、在宅避難支援、避難所運営基準の改善と段ボールベッドなどの配備の増強、福祉避難所の拡大などの予算を計上すべきです。

 区として実現可能な賃金引上げに背を向けていることも重大です。

 公契約条例の対象工事を、5000万円以上に拡大し、労働報酬下限額を抜本的に引き上げるとともに、条例の適用対象を、すべての委託契約と指定管理協定に拡大すべきです。

 会計年度任用職員の男女比は、男性31%、女性69%で、女性の平均賃金は男性の68%にすぎません。非常勤で3年以上勤務する職員が56%を占めており、正規雇用に変えるべきです。また、最低賃金以下で任用している会計年度任用職員の賃金を早急に改善すべきです。

 保育士や介護職員などのエッセンシャルワーカーの処遇は、国の公定価格や介護報酬の低さや処遇改善の不十分さから、全労働者の平均賃金との格差は縮まっていません。区独自の賃金引き上げの予算措置を実施すべきです。

 昨年10月の特養ホーム待機者は328人で、そのうち介護度4.5の人が半数以上の193人となっており、依然として深刻です。ところが、新年度から3年間の高齢者保健福祉・介護保険事業計画の特養ホーム増設計画は、神宮前に60人規模1ヶ所だけです。しかもこの施設については、けやきの苑・西原の大規模改修時の入所者の受け入れ施設として利用することになっており、実質は増床にはなりません。特養ホームの待機者ゼロに向けた増設計画を示すべきです。

 第2に区民に負担増を押し付け、福祉、教育を切り捨てている

 新年度予算では、平均で国保料が1万7311円、介護保険料基準額が2520円、後期高齢者医療保険料が6514円のトリプル値上げが提案されています。物価高騰で区民生活の困難が増す中で、医療や介護保険料を軒並み値上げする予算は認められません。

 敬老祝い金は、民生委員の負担の重さや財政を理由に、支給対象者を2万4290人から9172人にして6割以上の高齢者を対象から外し、予算額は2億4408万円から1億1773万円に半分以下に大幅削減しようとしています。高齢者に敬老の意を伝えるとともに見守りを行なってきた区が誇るべき施策を大きく後退させることであり認められません。

 奨学資金貸付制度は、貸付の申請者が3年前から減少し、昨年ゼロになったことを理由に廃止しようとしています。しかし、都内の私立高校の新年度入学納付金は、平均で95万円をこえています。区内のある私立高校では初年度納付金が120万円で、国と東京都の支援金の上限額47万5千円を受けても、50万円近い保護者負担が残ります。

 足立区のように貸し付け対象を大学や大学院生までに拡大し、貸付金額の増額、給付制の奨学金を導入するなど経済的理由で進学をあきらめることがないよう、制度を拡充させるべきで廃止は認められません。

第3に、大企業奉仕と不要不急の事業を進める無駄遣いの予算

 渋谷駅中心五街区整備事業では、駅街区北側自由通路に5億1200万円、南口北側自由通路に2850万円の税金が投入されます。大企業のためのまちづくりに多額の税金を使うことはやめるべきです。

 駅街区北側自由通路は、事業の遅延と価格高騰のため、新年度の予算を加えると、当初、国と区で40億円としていた補助額を超えることが明らかになりました。区は、これまでの3回の事業変更で、総事業費が750億円に120億円増えたことにより、国と区の負担も12億円円増え52億円になったと説明しましたが、議会に報告も一切行わず、債務負担行為の議決も求めず、なし崩し的に予算を付けるやり方は、財政民主主義にも反するもので認められません。

 一般社団法人渋谷未来デザインに区から派遣している職員3人分の共済費に加え、新たに退職した区の幹部職員を雇用するために980万円を増額し、2397万円を計上しています。

 一般社団法人渋谷未来デザインは、区が官民共同で設立したもので、区民の公共財産を出資企業に活用させて、新たな収益事業をおこし儲けをあげさせるための団体です。民間企業の利益のために区民の税金や職員や財産を差し出す、自治体本来の役割を逸脱した事業への税金投入はやめるべきです。

 グローバル拠点都市推進事業には前年度比で約4千万円増の3億5702万円余が計上されており、その狙いは海外の優れたスタートアップの招致にあります。予算にはシブヤスタートアップス株式会社への追加出資1億3千万円が含まれています。すでに今年度の当初予算で1億円、補正予算で7000万円が出資として執行されており、新年度の出資を合わせると3億円にものぼります。区内の中小企業支援とは無縁の施策に多額の税金を使うことはやめるべきです。

 帰宅困難者対策として、シブヤ・アロープロジェクトに4190万円の予算を計上していますが、帰宅困難者の誘導効果にも疑問がある事業を民間丸投げで実施することは、税金のムダ遣いでやめるべきです。

第4に、区民の声を聞かずトップダウンの政治手法のすすめ方

 新しい学校づくり整備方針には、小学校費に1億4363万円余、中学校費に15億3772万円が計上されています。

 区民の声を聞かず、トップダウンで進めたために、教育環境を後退させる重大な問題が起きています。広尾中学校では、説明会を学区域内の住民全体に知らせず、保護者や学校関係者、近隣住民からは、説明の場も意見・要望を言う場もない、学校は地域、住民のコミュニティと防災拠点だ、もっと意見を聞くべきという意見が出ています。また、特別教室が大幅に減らされれば部活動などが継続できなくなるという声も聞かれます。松濤中学校ではプールをなくすことが突然報告され、関係者から怒りが出ています。専用グラウンドのないスポーツセンター仮設校舎にも、批判が広がっています。

 神南小学校は、民間資金を活用し隣接する渋谷ホームズと一体の開発で整備を進めようとしていますが、敷地境界から8mのところに超高層マンションが建つことや、民有地から子どもが学校に入らなければならないなどの環境悪化に批判が寄せられています。この再開発は、区道の廃止や神南小学校の容積率の移転など、区の協力なしには成り立ちません。区民の財産を民間事業者に提供したうえ、区民の利便性も、子どもの教育環境も犠牲にする計画は認められません。

 新年度予算で検討が始まる4校の統廃合による小中一貫校整備についても、地域や関係者の声を全く聞いていないことに、まち壊しだと厳しい批判が上がっています。

 学校建替えに当たっては何よりも子どもの教育環境を最優先にすべきです。改めて計画を白紙に戻し、保護者や一部の人だけでなく多くの区民、学校関係者の意見、要望を聞くべきです。

 玉川上水旧水路緑道整備事業の予算総額は14億5319万4千円で、工事請負費として笹塚緑道西側に約1億5300万円、大山緑道西側に約1億2300万円、幡ヶ谷緑道に約2億6300万円の3件の工事が盛り込まれています。区はこれによって620m、緑道の24%を整備するとしています。また、工事を早く進めるために、原材料費として舗装材の平板2億2100万円、15台のベンチと車止めに6240万円など6億809万円を計上し、工事契約を待たずに区が直接発注するとしています。

 しかし、住民の間では、樹木を残す世論が急速に広がり、区は当初予定していた189本の樹木伐採の方針を変更し、「樹木はできるだけ残す」「農園を作るために樹木は伐採しない」などと言わざるを得なくなっています。多くの住民はこれまでどおりの静かな緑道の存続を望んでおり、農園にも様々な意見が出されています。

 そもそも、緑道再整備は区長が描いた区西部のまちづくりの青写真がもとになっているものです。緑道を拠点にコミュニティと賑わいを生み出そうと、ササハタハツのまちづくりとして、多くの区税を投入してすすめてきました。しかし、住民多数の意思とは言えない整備工事は中止し計画を白紙に戻すべきです。

第5に、公平、公正さを欠き、弱者置き去りの区政運営だから

 中小企業振興の中で、地域通貨ハチペイに9億7582万6千円の突出した予算が計上されています。しかし、利用者のうち区民認証されているのは4万1千人にすぎず、利用できる店舗も3100店舗で区民や商店の一部です。区長は、区民生活支援と言っていますが、多数の区民、とりわけスマホを利用することが困難な高齢者や低所得者を置き去りにするやり方は認められません。困っている高齢者や中小事業者に届く支援を実施すべきです。

 商工振興費の24億円のうち、ハチペイとスタートアップ支援で13億3200万円余と半分以上が占められ、中小企業振興予算がゆがめられています。商店街と中小事業者は区民のくらしと雇用を支え、文化をはぐくむ大切な役割を果たしてきました。ここにこそ中小企業振興予算の中心をおくべきです。

 ふれあい植物センターには、1億2894万6千円の運営費のほかに、改修工事費として加計塚小学校の区民菜園のあったところに農園ハウスを設置するための予算が盛り込まれました。区は、植物園のレストランで使う野菜を栽培するための施設と説明しています。農園ハウスの運営は、一般競争入札で行うとしていますが、植物センターと離れた運営はありえないだけに、植物センターを指定管理するNPO法人アーバンファーマーズクラブをさらに支援するものにほかなりません。また、近隣住民への説明もないまま、農園ハウスを建設することはやめるべきです。

 以上反対討論とします。

区政リポート2024.4.5docx