引きこもり体験、発達障害の2人「生きづらさ界隈」対岸
ひきこもり生活10年の体験者で、第一回引きこもり文学大賞受賞者の山添博之さん(41歳、台東区在住)。現在、旅行者に無料で自宅の空いているスペースを宿泊場所として提供し合うオンラインプラットフォーム(カウチサーフィン)に参加し多くの国内外からの旅人を迎えています。発達障害をカミングアウトする濱田智樹さんが訪問しました。「生きづらさ界隈」の2人に対談していただきました。
濱田 これまで何人のゲストを迎えたのですか。
山添 170人です。米国、欧州、アジア、中東、アフリカ、南米…ほぼ世界中といっていいと思います。
濱田 すごい。山添さんはゲストと一緒に街歩きし、ガイドもされるそうですね。
山添 ええ。先日も谷中を散策しました。旅館やホテルだと精算したら終わりですが、この営みは無料ですからその後もつながりを保てます。時間や体験をともにし、さらに交流を深められるのが魅力です。次は私がゲストになれます。「おもてなしごっこ」と言っていいかもしれません。
濱田 まさに異文化交流ですね。私と山添さんとは、ひきこもり体験を発信する山添さんと、自分の発達障害を探求する私が「生きづらさ界隈」で結びつきました。山添さんの「ひきこもりから国際文化交流」へというのは、すごい発展のように感じますが…。
山添 小学6年生の時、学校での友人のいじめで不登校になり、家族との軋轢も激しく10年間部屋に引きこもっていました。その後、働き始めると職場での偏見やいじめなどに遭い、外の社会全部が敵のように感じていました。
濱田 山添さんの自叙伝「十年引きこもりから世界へ」を一気に読みました。ひきこもり時代の壮絶な体験、自殺しかないができない苦しみ、など心の動きが私の心にぐっと迫りました。
山添 大きく変わるきっかけになったのが、32歳の時、SNS友達を訪ねたドイツ旅行でした。初の海外旅行先で私を家族のように温かく迎え入れてくれた友人とそのお母さん。人間不信がとれる入口になりました。
深い歴史と洗練された文化、自然に囲まれた美しい街に魅了されました。重度のひきこもり時代には想像できなかった可能性がひらけたような気がしました。「もっと様々な異国を旅したい」と思うようになったのです。
濱田 英語が上手ですね。私も勉強しています。
山添 海外を旅したい、との一念で勉強しTOEIC905点をとれ、自分の知性を少しは信じられるようになりました。いくつかのウエブサイトを運営し、その広告収入で十分自活ができるようになり、どんどん一人で海外旅をするようになりました。
「もっと異文化体験をしたい。異文化の人たちと出会いたい」と、今まで抑圧されていた願望が爆発しました。一度出ると3週間から2か月は日本に戻らない世界放浪を繰り返したのです。
濱田 今の日本社会をどう見ていますか。そしてこれからどんなことをやっていきたいですか?
山添 家庭でも地域でも職場でも、一人ひとり孤独な状態にあるのではないでしょうか。ひきこもりの居場所、人とのつながりができるきっかけが大事だと思います。周りはみんな敵、と思っていた私が、日本人にも優しい人がいる、と今は思えるようになりました。(笑)これからも異文化交流をさらにすすめていきたいです。
濱田 日本では外国人を排除する風潮が強まっています。山添さんの活動はそういう方向とは真逆ですね。草の根の国際交流が深まることはとても大事だと感じました。今日はありがとうございました。
写真は、右から濱田さん、山添さん。この日はドイツから高校卒業して世界旅行している女性2人が宿泊していました。