神戸市の行政データ利活用を視察
台東区議会企画総務委員会は10月27〜29日、姫路市・伊丹市・神戸市の兵庫県3市を視察しました。姫路市は日本初の世界文化遺産・姫路城の保存活用、伊丹市は新庁舎建設と全業務フリーアドレス(職員が定席を持たず仕事を行う) 、神戸市のDXとデータ利活用などが視察テーマでした。それぞれ学ぶことの多い視察でしたが、神戸市のデータ利活用、EBPМの推進に絞り報告します。
EBPМ(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)とは「証拠に基づく政策立案」という意味です。経験や勘に頼るのではなく、政策の目的を明確にした上で、データや科学的な根拠(エビデンス)に基づいて政策を立案・実行する考え方です。
神戸市の担当者は6年前、市民に対してコロナの情報を、市と保健所が保有するデータを公開したことで市民の行動変様を促すことができたのがきっかけになった、と話します。
神戸市は2002年からBIツール(ビジネス・インテリジェンス)=企業が持つさまざまなデータを収集・分析・可視化して、経営判断や業務改善を支援するソフトウェアを使い、市が保有するデータを統合し、グラフやダッシュボードなどでわかりやすく表示するEBPМを進めます。
一つは「神戸データラウンジ」で庁内向けダッシュボード、もう一つは「神戸データラボ」で公開ダッシュボードです。自治体をめぐる急激な外部変化に柔軟に対応するためには、外部の専門家任せにせず「職員自らやる」という意識と人材育成を推進します。ローコードツールを活用した内製化です。
例えば163ある小学校区別に人口・世帯構成、将来人口推計、公共施設の配置などをダッシュボード化し政策課題を導きます。
国内外の学術論文を既存のエビデンスとして活用するとともに、内製化で得たデータ分析により新たなエビデンスを創出し、前年度以降、35件着手した分析中21件完了し、妊婦歯科健診や小学校区内の公園数と運動時間などで、政策に反映させているといいます。収納や保健師日報などの業務改革につなげていることも報告されました。
テーマが広く深いだけに、職員を3層に分けてのデータ利活用人材の育成計画、「神戸データラボ」で一般公開されているダッシュボードの利活用については時間がなく、ほとんど聞けませんでした。
神戸市のEBPМは大変先進的で台東区の相当周回先を行っています。確かに経験と感に基づく政策立案だけでは効果は期待できません。しかし、政策目標を明確にしなければ、エビデンスの利活用による正しいデータも生かせないのではないでしょうか。
私は、20年前「子育てするなら台東区」という区長の政策目標が、全国の基礎的自治体に先駆けて「子どもの医療費無料化」につながったことを紹介。ちょうど3日前に4期目を勝ち取った久元神戸新市長が「コベカツ」という、中学校のクラブ活動を来年8月から全面的に地域移行するという、野心的政策を掲げているから、163の小学校区のデータを生かすことができるのでは、と質問しました。
これに対し担当者は、政策目標を掲げるなどエビデンスは一定の条件のもとで生きる。同時に、データ利活用・可視化により政策立案の動機付けにもなる、と答えました。