明治大正演歌、唯一の後継者・岡大介さんにインタビュー
カンカラ三線の岡大介(おか・たいすけ)さん(46)が浅草をはじめ活発に活動しています。岡さんは明治大正演歌を継承する現代唯一の存在です。19世紀末の自由民権運動の時代、演歌は庶民の政治権力者への抵抗の歌でした。岡さんも演歌に乗せ、裏金や利権にまみれた現在の日本の政治をバッサリ斬っています。話をうかがいました。
あきま…岡さんの若さで明治大正演歌というのは意外です。出会いについて教えてください。
岡…20歳代前半は、親の影響からか70年代フォークソングをギターで演奏していました。吉田拓郎さんが大好きでしたが、メッセージ性のある高田渡さんの歌にも惹かれていました。
その後、小沢昭一(俳優、エッセイスト)さんと会い、明治大正演歌師の添田啞蟬坊の存在を教えていただきました。高田渡さんは啞蟬坊の作品を自己流のアレンジで歌っていました。
演歌は演説歌です。演歌師は無伴奏で街頭に立ち、政治的な主義主張を行い、歌本を売って生計を立てていました。明治から大正へ、レコードとバイオリン伴奏の登場で、歌詞も反体制的・政治的な色彩が、社会風刺に変わっていきます。
私は明治から大正初期の演歌が好きです。政治権力への抵抗と庶民の叫びをストレートに表現しているからです。70年代フォークは反戦やプロテストなのになぜ米国のメロディーなのか。演歌という明治大正の抵抗歌があるのにだれも興味をもたない。なら私が、ということです。
あきま…カンカラ三線を使うようになった経過は?
岡…20歳代、吉祥寺などでストリートライブをやっていると色々な楽器をもってくるミュージシャンがいます。その中にカンカラ三線がありました。
戦後の沖縄で、基地のために土地収用される民間人は収容所に集められ、米軍の配給用缶詰の空き缶と、パラシュートの紐などで手作りの三線をつくりました。日本政府に何度も裏切られてきた沖縄の人々の心を表現できるこの楽器は演歌にもってこいではないか、と思ったのです。
フォーク歌手のなぎら健壱さんは明治大正演歌の洗礼を受けた先輩ですが、演歌をギターのコードをあてはめて歌います。私は「そもそも演歌にコードは当てはまらない」と、なぎらさんに言ったことがあります。やはり三線が似合います。
あきま…目標は何ですか?
岡…日本人全員に演歌を知ってほしい、ということです。今、落語協会の寄席に出させていただく機会も得ました。引き続き街頭でもやっています。
東日本日本大震災後、仮設住宅で演奏し続けた石巻の人たちが毎年コンサートで呼んでくれます。今年の石川県での演奏会には能登半島地震で避難している方たちの前で歌うことができました。
生きている庶民の叫びを、政治への主張、抵抗、風刺や笑いで表現する演歌をつくり歌い続けたいと思っています。
オッペケペー節(明治22年)
曲:川上音二郎
詞:岡大介
♪アメリカの大統領が変わったくらいで景気が出るなら枯木に花よ
オッペケペー オッペケペー オッペケペッポーペッポッポー
米を喰らって生きてるが アメリカさんの言いなりに 憲法・原発・TPP 人のためより金のため 見ザル聞かザル言わザルで 厚くなってた面の皮 今こそ新しい判断で どこまで経っても道半ば しらけたこの国いい事に 一人でアンダーコントロール 積もり積もった負の遺産 バトン隠して知らん顔 スガスガしい顔なぜできる どうぞご無事であの世まで
三途のキシダでズッコケた
オッペケペー オッペケペー オッペケペッポーペッポッポー
岡大介 東洋館独演会
10月6日(日)18時開場 18時30分開演
会場:東洋館
出演:岡大介 助演:のまど舎+山田宣人(チンドン・アコーディオン・サックス)
木戸銭:3000円
[予約問い合わせ] 070‐5012‐7290