「化石賞」の国の水準を脱せぬ区長の「脱炭素」方針~一般質問から

台東区

 私は12月2日、第4回定例会で一般質問に立ち、気候危機の打開と子どもを主権者として尊重する台東区について、区の姿勢をただしました。答弁も含めた全内容です。

 

日本共産党の秋間洋です。

第一に地球温暖化・気候危機の打開。第二に子どもと若者が主権者として尊重される台東区の実現。二つのテーマで質問します。

 (秋間質問①)

まず、気候危機の打開についてです。

さきごろ開かれた国連気候変動枠組み条約・COP26は、気温上昇を産業革命前比で1.5℃に抑えることで合意し、COPとして初めてクリーン電力普及の加速、石炭火力発電や非効率な化石燃料の削減を加速させることを呼びかけました。不十分な点はありますが、「脱石炭」に向けエネルギー転換をすすめることを国連の会議として指し示したことは前進です。

ところが岸田首相は、石炭火力発電であっても、水素とアンモニアを混ぜて燃やせばCO2排出を削減することになる、と未確立の技術を強調し、石炭火力を温存する演説を行いました。多くの先進国が2030年までに石炭火力ゼロを宣言する中で、石炭に依存した日本は、温暖化抑制を妨げる国として国際NGOから「化石賞」を与えられました。

 

世界各地で、異常な豪雨、台風、森林火災、干ばつ、海面上昇が発生し、日本も「経験したことのない豪雨」や暴風、猛暑など極めて深刻です。環境省が作成した「2100年の夏の天気予報」は、東京43.3℃沖縄以外全国各地で40℃を超え、瞬間最大風速90メートルのスーパー巨大台風が何度も襲ってくると予想しています。

気候危機は途上国の国土と農林漁業などの生業を奪い、飢餓と貧困を広げます。生態系・生物多様性・森林を破壊し、動物が持っていたウイルスが人間に移り、コロナにととまらず新しい感染症が次々生まれてくるでしょう。

日本共産党は2050年CO2排出ゼロを実現するために、2030年までに2010年比で最大60%削減します。石炭火力と原発はゼロにし、省エネで4割削減、再エネで電力の50%をまかないます。「公正な移行」によるグリーンリカバリーをすすめ、新たな雇用の創設と地域経済の活性化で持続可能な成長を実現する提案です。

 

先の決算特別委員会で理事者は私に、区の環境基本計画を、国の目標にあわせ2050年排出ゼロを目標にした計画に改定する、と答弁しました。事実上のゼロエミッション宣言の予告です。極めて重要であり、区民の生存と台東区の子どもたちの未来にかかわる大事業です。

国際社会は、コロナからの復興はグリーンリカバリー、脱炭素化を通じて経済成長を進める方向です。

区長。修正する長期総合計画では脱炭素の位置づけを抜本的に高め、全ての施策の基本に据えるべきではありませんか。

政府の30年までの目標は10年対比で42%削減に過ぎません。区長。環境基本計画の改定に当たっては、台東区は国際水準の50%削減と、政府を上回る目標にすべきではないでしょうか。

また、計画は家庭・業務・運輸など分野別に、2050年までのカーボンニュートラルの道筋を具体的に示すものにすべきだと思いますが、それぞれ所見を求めます。

 

(服部区長答弁)

  秋間議員の質問にお答えします。

  ご質問の第一は、気候危機打開に向けた区の方針についてです。

  まず、修正後の長期総合計画の中で、脱炭素の位置づけを高めることについてです。地球温暖化の進行に伴い自然災害のリスクがさらに高まることが予測されており、区民生活にも大きな影響が危惧されることから、脱炭素化に向けた取り組みは大変重要であると認識をしています。

  脱炭素社会の実現に対する課題やとりくみ、指標等については、国の各計画や「台東区環境基本計画」の改定に向けた検討を踏まえ、長期総合計画の一部修正の中で適切に位置付けて参ります。

  次に、本区の温室効果ガスの削減目標と2050年までの道筋についてです。

  本区の削減目標や各分野におけるカーボンニュートラルへの具体的な内容については、今後、環境基本計画を改定する中で検討して参ります。

 

(秋間質問②)

人類の生存がかかるこの課題に真剣に立ち向かうには、台東区の姿勢を大転換しなければなりません。3つの提案を行います。

第一は、区内での再生可能エネルギーの電源開発と活用についてです。

台東区には再エネ電源を開発する方針がありません。

先日、市民主導で再エネ発電開発をすすめる、江戸川区のNPO法人足温ネットの活動を視察しました。高齢者住宅の屋上、立体駐車場の2階などを借りて太陽光パネルで発電し、施設の電力を賄ったうえで売電。10年で初期投資が回収できています。子どもの居場所「松江の家」はソーラーパネルだけで発電・充電し一棟まるまる賄うオフグリッドハウスです。

足温ネットの山崎求博事務局長は「地域内の再エネ開発は、環境だけでなく、地域経済、貧困や防災対策など、持続可能なまちづくりの問題」と話していました。視界が開ける思いでした。

 

台東区にも再エネの潜在力があります。

東京都「ソーラー屋根台帳」によると、台東区の39,639軒の建物の屋根面積は約142万㎡あり、全てに太陽光パネルを設置すると年間1.7億kW時の電力量になります。これは区民の電力消費量の約3割に当たります。すべて区が設置し、現在の電力料金26円で販売すれば区全体で44億円の収入になるほどの規模です。

 

再エネ開発のためには施策と区民参加が必要です。

区が事業体をつくり、区民から提供してもらった場所にソーラーパネルを設置する。提供者の区民には自家消費分の電気を供給し、設備利用料として徴収します。設備利用料相当の太陽光発電単価は電力会社の電気料金よりはるかに安いので家計支援になります。「ゼロ円ソーラー」という手法です。

化石燃料原価の高騰で変動する市場や制度に左右されぬ料金で区民は電気を供給され、区は10年で設備投資を回収できます。さらにこの電源は、災害時、送電されなくなった際の地域自給電源にもなります。

区長。区内のあらゆる資源を活用し、区民参加で地域内の再生エネルギー電源の開発と活用をすすめるべきではありませんか。地産地消の再エネ方針についての見解を求めます。

 

(服部区長答弁)

  次に、区民参加による再生可能エネルギーの電源開発と活用についてです。

  区内においては、機器等の設置する場所の確保や、発電量の変動に対応するための調整技術が必要なことに加え、電力需給を担う事業者の選定などの課題があります。今後もこれらの課題を解決する技術革新などの動向を注視して参ります。

 

 

 

(秋間質問③)

区の施設や事業での削減をゼロエミッション型に進化させることも重要です。

現在すすめている第5次区有施設地球温暖化対策実行計画は、省エネが中心です。再エネについての角度が極めて弱いと言わざるを得ません。

固定価格買取り制度・FITの契約終了後、いわゆる卒FITの太陽光発電の余剰電力を、区有施設の電源として区民から区が買い取れば、卒FIT電力を安く買いたたかれている区民を支援し、区は安く調達できます。エネルギーの地産地消により、CO2削減、区民生活支援、区財政への貢献、「一挙三得」の方向です。

区長。区有施設、公共事業、自治体業務など区自らの実行計画の改定についての所見を求めます。

 

(服部区長答弁)

区ではこれまでも再生可能エネルギーとして、学校などの区有施設において、清掃工場の熱を利用した発電電力の活用や、大規模改修時に太陽光パネルを設置するなどのとりくみを行っております。

今後の改定については、施設の役割や状況を踏まえ、検討して参ります。

 

(秋間質問④)

第二は、積極的な省エネ・創(つくる)エネの誘導です。

現在行われている、省エネ機器の導入や住宅の断熱工事、戸建て・共同住宅への太陽光発電システム設置助成などの区の支援策は多彩でそれぞれ重要です。

しかし、区民の自発的な取り組みの推奨にとどまっています。しかも予算枠内で打ち切りの事業が多く、きわめて不十分と言わざるを得ません。

低所得・貧困家庭はなかなかエコ家電への買い替えなどができず、効率の悪いエネルギー消費の環境で高い電気料金や燃料費を支払っています。しかし区には支援策がありません。

冷蔵庫やエアコンを省エネ型に買い替えるだけで電力消費量は半分にできます。買い替えや二重窓設置などの断熱工事をすすめるため、節約できる電気代相当額をその期間無利子で貸し出す制度をつくる、都や9都県市首脳会議などがすすめる省エネ家電買い替えキャンペーンに上乗せ支援するなど、積極的な施策を講じるべきです。

環境省「平成31年度・家計部門のCO2排出実態統計調査結果」によると、1世帯の年間平均電気料金は106,000円です。台東区124,000世帯でかけると130億円。毎年130億円が化石燃料を燃やす電気料金として地域の外に流出しています。この1割を節電しただけで13億円が区民福祉に貢献する地域再投資に回ります。

これは台東区の障害福祉手当、児童扶養手当、児童育成手当の年間合計給付額に匹敵します。

区長。これまでの区民の自発に委ねる施策ではなく、温室効果ガス排出量削減目標にふさわしい省エネ・創エネ誘導策を講じるべきではないでしょうか。お答えください。

 

(服部区長答弁)

温室効果ガス排出量削減のためには、まず、区民への意識啓発に努めてい参りたいと考えており、議員ご提案の誘導策については、考えておりません。

 

(秋間質問⑤)

第三は、計画策定に若者の力を活かすことです。

パリ協定以降、欧州では無作為抽出の市民が脱炭素社会の実現について討議する「気候市民会議」が政府や自治体に提言を行い、政策に活かす手法が広がっています。日本でも札幌市でスタート、川崎市では住民が先行して運動しています。

変化が激しく、複雑多様な気候問題に迅速・柔軟に対応していくには市民の参加は決定的です。とくに今、行動を開始した若者のエネルギーを取り入れることは不可欠ではないでしょうか。

COP26には世界中から多くの若者が集まり、連日デモを行いました。グレタさんが呼びかけた毎週金曜日の行動が全世界に広がり、私たちの未来を奪わないで、と声を上げ、その運動は、気候変動により広がる貧困・格差、人権の侵害、人種差別、ジェンダーギャップなどの課題を打開しようと「気候正義」の行動として広がっています。

 台東区には、こども環境委員会の活動をはじめ環境問題に関心のある若い力が育っています。

区長。まもなく始まる環境基本計画の改定に当たり、若者の声が十分反映されるよう、審議委員への登用、アンケート調査などあらゆる工夫をすべきではないでしょうか。所見を求めます。

 

(服部区長答弁)

これまでも計画の策定に当たっては、有識者や区民代表などから意見をうかがうほか、区内小中学生と区職員などが参加するシンポジウムを行い、意見交換ができるような機会を設けて参りました。

引き続き幅広い世代の方々からの提案や意見をいただけるよう努めてまいります。

 

(秋間質問⑥)

 

二つ目のテーマは、子どもと若者が主権者として尊重される台東区をつくることです。

国民が主権者として政治に参加する最も身近な行動は選挙ですが、10代・20代の投票率の低さは心配です。もちろん、先日の衆院選の全体の投票率は55.9%、戦後3番目に低かったのですから、低投票率は若者に限った問題ではありません。

しかし、台東区で見ると、18歳選挙権が初めて行われた2016年参院選で18歳は64%の投票率でした。その18歳のその後の投票率をみると、翌年19歳での都議選が35%・同年衆院選39%でした。その翌々年、私たちが選ばれた台東区議選は彼らが含まれる20代前半の投票率は22%。私たちは4人に1人の審判さえ受けていないのです。

民法改正により来年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。しかしその年代は、奨学金と言う借金を背負わされ、正社員で働けない。社会的経済的に親から自立できないことが、主権者として育まれない一因ではないでしょうか。

 

ただ私は、先の総選挙で、これまでになく若者の政治への関心の強さを感じました。特に地球温暖化への反応が極めて高かったと思います。日本共産党の気候危機打開の政策ビラを配布していると、何人もの高校生から「読ませてください」と声をかけられました。上野駅前の街頭演説に聞き入っていた二人の高校生は、まだ選挙権はないが気候問題にすごく関心がある、と話していました。10代の投票率が前回総選挙より高くなったことはうなずけます。

区長。台東区の10代・20代の投票率についてどう考えていますか。低投票率の原因はどこにあると考えますか。所見を求めます。

 

  (服部区長答弁)

  ご質問の第二は、子どもと若者が主権者として尊重される台東区についてです。

 まず、10代・20代の投票率については、多くの選挙で、他の世代と比較して低くなっています。

 若年層の政治参加が進められるよう、選挙権年齢の引き下げが行われましたが、投票率が低いことは憂慮すべきものと受け止めており、政治的関心や、投票への義務感が低いなどの問題が考えられます。

 若年層の投票率向上のため、一層の取り組みを強化を図るよう選挙管理委員会に伝えて参ります。

 

 (秋間質問⑦)

憲法はすべての国民に政治活動の自由を保障しており、18歳選挙権は当然の権利です。ところが政府は、18歳選挙権導入直後に高校生の政治的活動を禁止・制限する通知を出し、一部には集会参加や演説会を聞きことすら届け出制にしている高校まであります。明らかに憲法や国連子どもの権利条約に違反しています。

選挙権が認められた以上、投票行動に当たり、各政党や候補者の政策に触れる機会に参加したり、自ら政治的表現行うことができる自由は保障されなければなりません。それが若者の投票率の向上に寄与することは明白です。

 

私は先日、20年続く山形県遊佐町の少年町長・少年議員公選事業を視察しました。

中高生自ら町長・議員に立候補し、政策を掲げ公報を発行し、投票により選びます。年間45万円の独自予算をもち、町長や議員は施政方針、一般質問を行い、これに対し町の理事者が答弁に立ちます。

この間、町のイメージキャラクターの策定、地域特産品の開発、若者の居場所の整備、ミュージックフェスティバルの開催などを実現してきました。

帰宅時間の電車の増便や街灯・防雪柵の設置など、年間予算ではできないものも要望書をつくり町行政や関係機関と協議し、一部実現してきました。

 

高1女子の町議は「私たちの居場所を、と言っても大人は居場所のイメージが違う。私たちの目線を知ってもらうことができた」。高2男子町議は「山間地に街灯をつけてほしいと要求したが、まだ実現できない。何とかしたい」と、町の政治にかかわり、動かすこともできる、という自信や意欲が伝わってきました。

前期町長を務めた斎藤愛彩(あや)さんは、少年議会を発足させた20年前の元町長に、なぜこの事業を始めたのかを聞きにいったそうです。元町長は、遊佐町の中高生は保護、指導される存在として扱われ、政治に参加する一員とされていないと疑問に思い、立候補・予算付け・政策提起をもつ少年議会の発足を考えた、と話してくれました。斎藤さんは感動し、「今の町はまだまだ若者不在で様々なことを進めていないか。自分の故郷に対しての当事者意識を持てるよう、さらに参加できるシステムをつくりたい」と議会で発言しています。

 

台東区はどうでしょうか。子どもたちを主権者として本当に尊重する区政運営になっているでしょうか。

子どもたちは意見が受け止められ、生かされる体験を積むことで主権者としての自覚を高めていきます。台東区政はその点が弱いと感じます。

学びのキャンパス台東アクションプランは、主権者教育の推進について「参政権や政治に関する教育を推進し、児童・生徒の社会参画意識を向上させます」としています。知識を与える、という色彩が強く子どもの主体性を引き出す面が弱いのではないでしょうか。

教育長。子どもたち自らの意見が届く機会を増やし、主権者として尊重される経験を重ねることが真の主権者教育ではないでしょうか。その面での施策を展開すべきですが、お考えをお聞かせください。

 

(矢下教育長答弁)

主権者教育につきましては、主体的に考え、対話によって自らの考えを深める学習活動を通して、社会参画への意識を高める教育活動を各学校で展開しております。

また、「学びのキャンパス台東アクションプラン」におきましても、学習指導要領がめざす「主体的・対話的で深い学び」によって、主権者としての意識が醸成されるよう、各事業を展開しています。

今後も主権者教育に資する児童生徒の社会参画への意識情勢に向けて、教育活動の充実を図ってまいります。

 

(秋間質問⑧)

子どもにとって最も身近なルールである学校の校則が、髪型や服装の強要など人権を侵害するようなものになっていることが社会的な問題になり、改善の動きが出ています。

区教委は4月、校則等の自己点検・見直しを行うことを各校に呼びかけ、学校段階では改善がすすんでいるようです。しかし、その過程で、子ども自身が見直しに関し、意見を表明するなど、直接の参加はなされていないようです。

 「マスクをしての持久走でクラスメートが何人も倒れているのに意見を言えない」「校則で認められていないが、健康のため寒い日にスカートの下に短い体操着をはかせて登校させている」など、子どもと保護者の声はまだまだ学校に届いていません。

 主権者教育は自分の人権についての自覚、めざめから始まります。納得のいかないルールを、疑問を持つことを許されないような環境に慣らされていくことは、社会に主体的にかかわっていく熱意を削いでしまうのではないでしょうか。

 教育長。子どもを主権者として育むスタートとして、まず学校で、児童・生徒の参加のもと校則等のルールを見直す討議をすすめるべきではありませんか。答弁を求め、私の質問を終わります。

 

(矢下教育長答弁)

学校のきまり等の見直しにつきましては、児童生徒が学校の決まり等に対する理解を深め、自分たちのものとして守っていこうとする態度を養うことができるとともに、児童生徒の主体性を培う機会とするものと考えております。

 国や都に先駆け、4月に各校に対し、学校のきまり等の点検・見直しを行うよう依頼するとともに、校長会を通じて指導や助言を行って参りました。

 これを受け、各校におきましては、児童生徒が生徒会で考えたり、学級ごとに話し合ったりするなど、見直しを行っているところです。

 今後も、学校のきまり等の見直しをはじめ、児童生徒が自ら考え議論するなど、学習機会等を通して、自らの将来の生き方を考え、主体的に社会の形成に参画する意欲と態度を育んでまいります。