台東区はガバメントクラウドの利用やめよ
マイナンバーとのひも付けに伴う個人情報の漏洩トラブルが後を断たないのに、健康保険証廃止・マイナ保険証強制をすすめる岸田政権。そんな中で、台東区はじめ全国の地方自治体が情報システムの標準化とガバメントクラウド利用への対応が急ピッチで迫られています。個人情報が脅かされないか。標準化により自治体独自の施策が後退しないか。職員への事務増大で区役所業務がパンクしないか。費用が膨らまないか…などの問題をどうするかが問われます。
一昨年、住民記録、税、福祉など自治体の機関系業務を、令和7年度までに国が策定する標準化基準に適合したシステム(標準準拠システム)で行うことが義務付けられました。また、国によるクラウド基盤(ガバメントクラウド)を利用するよう努めることとされ、台東区も検討を始めています。
台東区は7月25日の区議会企画総務委員会に「令和8年1月から標準準拠システムを稼働させる」との方針を示し、今年度は標準化移行とガバメントクラウドとの接続について対応をすすめるとしています。
最も危惧されるのが、ガバメントクラウド利用により個人情報が脅かされないか、という問題です。大本にはマイナンバーでのトラブルに象徴される、個人情報保護を軽んじる政府への不信があります。
自治体が利用するガバメントクラウドは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクル系列の4企業に限られています。4つとも米国の巨大企業です。
米国には「海外データ合理的使用明確化法」(クラウド法)があり、米政府は自国企業が保存しているデータの提供を強制できます。実際、すでに日本政府がクラウドとして利用しているアマゾン・ウェブ・サービスが米国政府から提出要求された情報は年間390件(2020年下期)にも及びます。同社クラウドは2020年8月、2021年2月と9月にシステム障害をおこしサービスに支障が出ています。すでにヨーロッパ各国の政府・機関は米国企業クラウドからの撤退を進めています。
私は25日の企画総務委員会で、これらの点をただし、ガバメントクラウド利用は「努めるもの」と定められており義務ではない。台東区は個人情報の保護を大切に考え、ガバメントクラウド利用はやめるべきだ、と主張しました。
システムの標準化では今年度、区の独自施策など標準仕様にない機能への対応が検討されます。福祉や介護、児童保育などのシステムは区民本位に繰り返しカスタマイズされ現在に至っています。区は「標準仕様にないからということで独自施策を見直すことはない」としていますが、今後、標準化が独自施策の後退につながらぬようチェックが必要です。
台東区は標準化の準備に、令和4年度で7千3百万円、5年度で9千2百万円と多額の予算を計上しています。ガバメントクラウドを先行して利用開始した自治体の運用コストが「倍増」した(埼玉県美里町)との報道もあります。財政的な負担も重大な問題です。