代表質問。区長「コロナ後方支援ベッド確保を検討」。
日本共産党の秋間洋です。
激動の2021年。今年を、なんとしても新型コロナウイルス危機を乗り越え希望ある年にしたい。その立場から、先日の所信表明と来年度予算案に表れた、服部区長の政治姿勢について質問します。
第一は、コロナに立ち向かう自治体の長の責務についてです。
区長は先日の所信で「私は基礎的自治体の長として、何よりも大切な区民の命と暮らしを守り抜く」と決意を表明しました。
区内では年末から年明けにかけ爆発的に感染が拡大し、入院できず、自宅や施設で待機を余儀なくされる区民が続出しました。ピーク時には200人を超えました。
重い持病のある84歳の夫を介護していた76歳の妻が感染し、直後に夫も陽性になった二人暮らしの区民がいました。妻は毎晩39℃を超す発熱の中で夫を介護し続け、血液中の酸素濃度も低下してきました。医療も介護も及ばない自宅待機が10日間続き、ようやく葛飾区の病院に入れました。息子さんは「朝晩毎日電話したが、出なかったらどうしようと仕事が手につかなかった」と振り返ります。かかりつけ医が入院先を心配してくれましたが、区内には感染症病床はなく、病床が少ないいため他区の病院に頼らざるを得ませんでした。しかし他区の病院も、普段から連携のある同じ区内の医療機関を通じての患者を優先します。
1月末から2月にかけて、介護老人保健施設・千束では29人、特別養護老人ホーム蔵前では17人、区立の2つの高齢者施設でクラスターが発生しました。その中には家族の希望もあり入院できないまま亡くなった区民が出ました。死後陽性が判明した区民もいます。
日本共産党区議団は、高齢者・障害者施設などの入所者・従事者全員のPCR検査を反復して行うべきだ、と何度も区長に要望してきました。しかし区長は消極的でした。都の動きもあり、やっとこの1月から高齢者・障害者施設の検査が始まろうとしている矢先、このクラスターが発生したのです。私たちの提案に耳を傾けていれば今回の事態は防げたはずです。
区長、保健所が入院が必要と判断しているのに自宅や施設で待機せざるを得ず、死者まで出してしまったことについてどう責任を感じていますか。区内の病床が少ないことによるしわ寄せが、今回の自宅待機問題の背景にあるという認識はありますか。今後、重症化する危険のある感染者が自宅や施設で待機しないようにするため、どうしていくのでしょうか。答弁を求めます。
もう一つは、区内の感染状況を区自ら掌握・分析し、区として自分
の頭で考えた感染拡大防止策を展開することです。
緊急事態宣言に関連し、区長は2回、区民にメッセージを出しました。しかし2回とも、「不要不急の外出自粛を」とのお願いにすぎません。
自治体の長であるなら、検査や保護、医療など、感染拡大を食い止める区の具体的方針と、くらしと営業の支援策を示し、協力を求めなければ区民の心を動かすことはできません。
東京23区の10万人当たり感染者数を16日現在で比較すると、一番多い新宿区が1843人・最も少ない江戸川区は608人で、3倍の違いがあります。台東区は1006人で7番目に多い区です。感染は均等に広がるものではありません。
この間理事者は、人の移動が多い都心部では、区独自の感染防止策には限界がある、と国や都の方針待ち。区単独の施策については極めて消極的でした。
墨田区は、自宅待機者を減らすための入院ベッド確保のため、先月臨時議会を開いてまで補正予算を組み、台東区の半分しかない基金でも1億1千万円取り崩しました。
世田谷、杉並、江戸川、千代田、港なども、地域の感染・医療を分析し、国や都の判断待ちにならず独自の施策を打ち出しています。
区長。台東区内の感染や医療の情勢をどう認識しているのでしょうか。根拠も含めお示しください。また今後、区独自の施策をすすめるつもりがあるのか。あるならどういうものなのか。答弁を求めます。
質問の第二は、ケアとくらしを優先する区政についてです。
日本はコロナで救えるのに救えない命をたくさん生んでしまいました。効率最優先の新自由主義が、医療と公衆衛生、社会保障を破壊し続けてきたことが根本にあります。
自民党政権は1980年代以降、医療費を大幅に削減してきました。感染症ベッドは8分の1まで減らされ、人口当たりの医師数はOECD36か国中現在32位まで落ち込んでしまいました。
それなのに政府は、区立台東病院を含む公的病院の再編統合を、小池都知事は都立病院の独立行政法人化・民営化を進めようとしています。入院できず亡くなる人が出る中で、効率より命優先で地域医療を支えている自治体病院を攻撃するとは、正気の沙汰ではありません。
保健所は90年の850か所から472か所へ減らされ、台東区も2つあった保健所が1つにされました。今回のコロナでの、保健所職員の不眠不休のがんばりでも仕事がこなしきれず、都は先月、濃厚接触者の追跡を縮小しました。保健所をリストラし過ぎた結果であり、コロナウイルス変異種が不気味に広がる中、追跡する力が小さくならないか心配です。
これらはなにより効率を優先する新自由主義がもたらしたものです。国民に自助努力と受益者負担を押し付け、医療・介護・保育、福祉、全分野で「ゆとり」が奪われています。
区長。効率ばかり追いかける社会から、ケアに手厚い社会に切り替える道こそ、コロナ後の社会のあり方の基本にすべきではないでしょうか。
区長は所信で財政危機を繰り返し強調し、効果的・効率的な区政運営と財政基盤の強化を訴えました。また、長期総合計画の着手に当たっても効率を表明しました。効率を強調すれば区民福祉は後退せざるをえません。
今回提案された来年度予算案はその入口でしょうか。171事業、12億円を削減します。介護・福祉人材の育成、浅草在宅サービスセンターのデイサービスの廃止、学校図書の大幅削減など、福祉や教育の予算を細部まで削っています。
区長。私は所信と予算案を受け、区長は区民の現状が本当にわかっているのだろうか、と疑問に感じました。
介護や障害福祉を担う事業所は人材が確保できず、従事者は処遇が向上せず疲弊しています。高齢者や障害者はサービスを受ける権利があるのに提供者がいない事態が生まれています。区民の福祉の足元が流され始めていたところにコロナが襲い、苦しみが広がっています。
来年度予算の策定や長期総合計画の改定にあたって効率を強調することは、「区民の生命と健康を守り抜く」という区長の基本方針を危うくするのではありませんか。
地域経済も経験したことのない苦境です。浅草ど真ん中の仲見世で閉店が相次ぎ、新仲見世や観音通りは地上げで商店街が寸断され始めています。それが製造・卸業にも波及しています。
このままでは、区内の経済や福祉を担っている貴重な財産がどんどん失われてしまいます。コロナ後、台東区が活力を取り戻せなくなってしまうのではないか、と強い危機感を感じます。
区長は、「ウイズコロナの時代」に対応するため、従来の福祉・くらし・行財政運営の3つの柱に加え、「まちの活力を取り戻し、持続可能な発展につなげる」と、新たに4つ目の柱を打ち出しました。4本柱を比重を調節を調整しつつ施策を展開する、と発言しました。
しかし区長。「ウイズコロナの時代」どころか、コロナ感染を止められぬ無為無策の国の政治により、その前に倒れてしまいそうな区民がたくさんいます。4つの柱を横並びで調整するのではなく、台東区の経済や福祉を現に支えている事業所や働き手を守り抜くことを、「ウイズコロナ」の基本に据えるべきではありませんか。所見を求めます。
第三の質問は、区民とともにコロナを克服していく姿勢です。
科学的な知見の普及と徹底した情報公開こそ区民と共同で感染拡大防止をすすめるカギです。しかし、感染症法の改定で逆流が生まれました。
日本共産党は罰則を導入する一方、具体的な補償を義務付けないこの改定は、感染拡大防止を逆に妨げる、と反対しました。
「正当な理由」なく検査や入院を拒むと罰則が科せられます。このことは、陽性になることを怖れ発熱での受診を我慢する、検査結果を隠蔽する、などにつながります。生活や仕事、家庭のやむを得ぬ事情があり入院できない人を「犯罪者」扱いすれば、今以上に感染症や感染者への偏見・差別は広がります。
全国保健所長会は「保健所の感染症対策の実効性の確保は、感染者をはじめとする市民の理解、協力を得ながら対応していくのが基本」「保健所は住民に寄り添い業務を行っており、罰則を振りかざした脅しで住民の私権を制限することになれば職員の気概は失われる」…など、保健所長の生の声を政府に伝えています。
区長。台東保健所も義務違反の調査や立入り、通告という職務が与えられました。これを職員にやらせるのですか。罰則ではなく区民との協力でコロナを抑え込むことを基本にすべきではありませんか。療養や検査の拒否・虚偽の回答などでの「正当な理由」という判断基準をどこに置くのでしょうか。見解を求めます。
最後は、基金の活用についてです。
区長は所信で、コロナによる税収減からの回復に数年かかる。厳しい財政運営が強いられる、と言いました。確かに税収減は軽視できないし、財政には限りがあります。
しかし現在、台東区の財政には十分な体力があります。
今年度のおおよその決算に近い今年度最終補正予算は、繰越金が40億円、財政調整基金積立金が28億円、減債基金積立金が7億円となりました。合計75億円。これは基金取り崩しの66億円をはるかに上回っています。
コロナ渦中で厳しかった今年度でも実質収支は大幅黒字であり、500億円に迫る基金を維持して新年度を迎えられそうです。
一方、区民はコロナとのたたかいが長期化し、外出自粛による高齢者・障害者の健康悪化、商店街・地場産業の疲弊、子育て・教育の悩みの深刻化、女性・児童への虐待急増など、かつてない苦しみの中にあります。
区長。区財政は区民のためのものです。ケアに手厚い施策の拡充、くらし・営業応援、区民との協働推進のためにいまこそ思い切って500億円の基金を取り崩し、区民が元気になって、オール台東でコロナ危機を乗り越えることが大事ではありませんか。区長の見解を求め私の質問を終わります。
区長答弁:
入院や宿泊施設での療養を勧めてきたが、先月の急増の際は病床や施設がひっ迫し、入院できず、自宅や高齢者施設での滞在となった。亡くなられた方々のご冥福、ご家族の皆様にお悔やみを申し上げる。感染症病床は都内で4700勝確保されているが、今後区でも感染症回復期にある患者の転院受入など、後方支援病院の確保要請を検討していく。
区内では現在、新規陽性者数は急拡大前の昨年11月上旬の水準に戻ったが、高齢者の割合が増加しており警戒を続ける必要がある。PCRセンターを区として整備し、これまで必要に応じて検査数を増やしてきた。高齢者施設等での速やかな集団検査、陽性者への連絡や濃厚接触者への調査などに遅滞が生じないよう職員体制の整備や実施方法の見直しなど、感染拡大防止に向け施策を講じてきた。また、医師会と連携し、発熱患者の診療体制や年末年始の医療体制の柔術などを図ってきた。今後も必要な施策を積極的に推進する。
ケアとくらしのために、永寿総合病院の体制強化への支援、区内中小企業者への特別融資など区民や事業者を守るため着実に推進してきた。区の経済や福祉を支えている事業所や働き手を守り抜くためには、4つの柱をもとに区政を推進することが必要と考えている。
感染者が入院や宿泊療養などの要請に従わない場合や、保健所の調査に対し、虚偽の申告や拒否をした場合には過料を科すことが可能になった。区はこれまで、宿泊療養の拒否や調査に協力いただけない方に対し、感染拡大防止の必要性を丁寧に説明し協力していただけるようお願いしてきた。今後も、対象者との信頼関係が構築できるよう、丁寧な対応に努めていく。
基金の活用は、景気変動へのリスクや将来の行政需要の増加などに備え、中長期的観点に立ち適切に活用することが重要だ。令和3年度予算編成に当たっては、減収の長期化も想定されたため、令和4年度以降も必要な行政サービスを確実に実施できるよう、財政調整基金については一定の基金残高を維持するとともに、「公共施設建設基金」などを積極的に活用した。その結果、基金取り崩し額は前年度を上回る72億円となった。持続可能な財政基盤を堅持することで区民の生命と暮らしを守り、事業者を支える取り組みを着実に推進していく。