コロナ対策。区民の現実踏まえ、機敏な対応を~予算総括質問

台東区

日本共産党の秋間洋です。

物価が上がる一方で賃金は上がらず、年金給付は削減、消費税インボイス導入など、くらしと営業の不安の中、新型コロナウイルス感染症は収束が見通せません。

本委員会は、台東区の来年度予算が、そんな区民にどうこたえるのかが最も大事なテーマです。

私はコロナから区民の命をまもることを中心に区長の政治姿勢について質問します。

第一は、感染拡大による区民への影響をよくつかみ具体的な対策をすすめることです。

私は委員会で区民の実態を報告しました。

複数の障害者グループホームで、同時期に入居者の感染が広がったため、区が補助している医療的ケアが必要な人のショートステイが1か月以上休止になりました。

ある認知症高齢者の女性は、その方を介護している夫の感染が判明。濃厚接触者になったということで、お泊りデイサービスから自宅療養している夫のもとへ帰らざるを得ませんでした。

小学6年生の担任が感染し休んだとたん、児童は丸1日自習、オンライン授業は数日休止になりました。

これらは、あってはならないことです。

区長。第6波はピークを越えたとはいえ、感染者数は高水準のまま推移しています。感染対策は、早期発見・早期診断・早期治療が重要です。第6波で果たしてそういう対応ができたのでしょうか。

保健所、医療機関、介護・福祉施設、学校や保育園などに寄せられた第6波での区民の声に耳を澄ますべきです。こういった意見を踏まえて、機敏に施策に取り組むべきではありませんか。お答えください。

(服部区長)

区は感染拡大に備え、「台東区保健・医療提供体制確保計画」を策定し、感染状況に応じた保健所体制やPCR検査体制の整備を進めて参りました。今回の感染拡大時においても計画に基づき、感染症対策に取り組むとともに、希望者が安心してりようできる区内の宿泊療養施設を、都と連携して速やかに開設しました。また、医療機関や福祉施設などと必要な情報を共有し、患者や施設の状況に応じた対策に、全庁あげて取り組んでおります。引き続き、関係機関との連携を強化するなど、新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組んで参ります。

(あきま)

「台東区保健・医療提供体制確保計画」は感染力が強いオミクロン株により、わずかな期間で計画が破綻してしまいました。

数日前、わが区議団に、子ども3人含む家族家族が家庭内感染してしまったケースが寄せられました。その家族の中に血液疾患の子どもがいましたが、保健所はそれをを知らず、自宅療養を指導しました。このケース、奇跡的にこの子だけ感染せずにすんでよかったのですが、保健所が忙しく感染者の疫学調査ができないことがこんなことになった要因です。親が若く家族内の感染者が軽症だった場合、自動的に自宅療養にするのは誤りです。

こういうケースもあります。区民一人ひとりに起きていることをしっかりつかんで、感染拡大を防ぐ、速やかな医療の対応を行うべきではありませんか。区長の答弁では、また想定外の事態を繰り返してしまいます。

第二は、コロナ対策本部の位置づけを高め、区内の感染状況を把握・分析し、区として科学的な方針をつくり、対策をすすめることです。

質疑での理事者の答弁は、一人ひとりのコロナでの苦しみを、区が主体的に取り除くというより、国や都の指示待ちが目立ちました。

訪問・通所系の介護・福祉サービス従事者へのPCR検査、重症化リスクの高い区民の防衛策、学校での濃厚接触者の判定や学級閉鎖の基準…など、国や東京都だよりの発言ばかりでした。

学校での子どもの間での感染の有無や、感染者の率が学校により8倍も開きがあるのにその原因がわからない、など感染拡大を防ぐため事態を解明しようという姿勢が見えなかったのも残念です。

私はその大本に、コロナ対策本部の位置づけの低さがあると思います。区の対策本部は、緊急事態宣言やまん延防止措置の発出・延長の時にだけ開かれ、公共施設や職員の運営体制を決定することが専らの仕事のようです。それでいいのでしょうか。

区長。対策本部は本来、区内の感染情勢を的確に把握し、科学的・総合的な方針を示すべきです。位置づけを高め、専門家を入れ思い切って体制を強化し、コロナから区民をまもる中心に座るべきではありませんか。所見を求めます。

(区長)

「台東区新型コロナウイルス感染症対策本部会議」は、区内の感染状況やワクチン接種状況、区有施設の利用状況などを共有するとともに、感染拡大防止に向けた区としての対応を検討し、決定しています。感染症対策は広域的に対応すべき業務であり、感染状況や医療提供体制等を広域的に分析し、連携して取り組むことが重要です。そのため区では、東京都が実施するモニタリング会議での専門家による分析や、東京都の緊急事態措置などを踏まえて具体的な対策を定めているところです。今後も国や都の動向を注視し、適切に区の本部会議を運営して参ります。

(あきま)

広域的業務といいますが、児童数にたいする感染児童の割合が一番低い2.2%の学校と、17.8%の学校がなぜ生まれるのか、わからない。子どもの間の感染があったどうかもわからない、と区教委は言います。感染状況を自分の頭で分析しようとしていないところが問題です。専門家も入った本部体制をつくり、対策を講じていくべきです。

第三は、検査の抜本的拡充です。

オミクロン株以上に感染力が強く、デルタ株以上に強毒の新たな変異株にも対応するには、第6波までの教訓をあまさず生かすしかありません。「想定外」の言い訳は許されません。

コロナ感染症による直接の肺炎での死亡でも、ウイルスが既往症を悪化させての死亡でも、これまでの犠牲者は圧倒的に高齢者、持病のある人です。ここを徹底して食い止めることは、速やかなワクチン接種と、早期発見・早期診断・早期治療体制が確立できれば可能であることは明白です。

ワクチンは国の動きに左右されますが、重症化する恐れのある人を感染源から遠ざけること、子ども・若者を通じての感染の急速な拡大を抑えることを両輪ですすめることは区でも周到に準備すればできます。

カギはPCR検査の位置づけを抜本的に高めることです。

ところが委員会では「PCR検査はその時点での状態しかわからない」など検査を軽視する答弁がありました。学校で40個、幼稚園で20個と抗原検査キットの備蓄がけた違いに少ないこともわかりました。

区長。高齢者・障害者施設はもちろん、在宅・通所系サービスの従事者のPCR検査を定期的に行うべきではありませんか。

教育長。クラスで1人陽性者が発生したらクラス全員のPCR検査をすぐに行い、速やかに対応すべきではありませんか。

それぞれお答えください。

 

(区長)

高齢者・障害者施設のPCR検査については、従前より施設内での新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図ることを目的として、利用者及び従事者等に対する定期的なPCR検査を行っています。また、都においても集中検査として、入所施設などの従事者を対象に週一回程度のPCR検査を実施しています。訪問・通所に関わるサービス提供事業所については、これまでの日本財団によるPCR検査に加え、本年2月より、都による週1回程度の抗原定性検査が行われています。区立の入所施設や通所事業所などは、引き続き、この取り組みを確実に実施していくとともに民間事業所には有効にご活用いただけるよう、さらなる勧奨に努めてまいります。

(教育長)

学校園においてこれまで感染者が発生した時には、必要に応じてPCR検査を行うとともに、その結果により学級閉鎖等を実施して参りました。教育委員会といたしましては、現在の「台東区立学校園版感染症予防ガイドライン」に基づき、学校行事等において、実施内容やその方法を工夫し、密を避ける取り組みを徹底して参ります。また、感染者の発生時には、子どもたちに対するより一層丁寧な健康観察や、抗原検査キットを活用するなど、引き続き感染症対策に全力を挙げて取り組んで参ります。

(あきま)

委員会では、訪問・通所系サービスの従事者が、陽性者の方に接せざるを得ない決死の介護の実態を訴えました。ただでさえやめていく人が増えている介護・福祉従事者です。安心して仕事ができなければ、だめです。

第四は、情報公開です。

災害時の危機管理は、正しい情勢判断と区民への的確な情報伝達が行政の一番大事な仕事です。区民が正しい情報を得ることで、自ら身を守るとともに、行政と一緒に地域のために力を発揮してくれます。

ところが台東区の姿勢はどうでしょうか。

子どもの保護者は「クラスで陽性者が出た」との学校からの通知に、いつも「濃厚接触者はなし」「通常通り運営」という結論だけ繰り返されることに不信感を持っています。

学校や保育園での感染爆発で、保健所の疫学調査が及ばず、学校園と教育委員会で協議の上、チェックリストに基づき「濃厚接触者の候補者」を決め対応しています。しかし、その判定基準が保護者に示されず、不安を広げていることが委員会で問題になり、理事者はチェックリストの公開を検討すると答えました。

区立の特別養護老人ホームではクラスターは発生していないという答弁があった一方で、「重篤化リスクの高い高齢者が入院できず、施設が苦慮した」との答弁もありました。

区立施設での感染については施設名を含め公開していますが、同じく区が利用調整している民設の高齢者・障害者の施設では、陽性になった本人と家族だけには連絡されますが、他の施設・通所サービス利用者には陽性者が出たことが知らされていません。

これでは不安と不信が募るばかりです。

区長。区民が感染状況を把握し、自覚的に感染しない・させない行動ができるよう、情報公開のあり方を見直し、発展させる考えはありませんか。

教育長。保護者が「子どもを学校に行かせて大丈夫か」と不安にならないような情報の伝達を工夫すべきではありませんか。

それぞれお答えください。

 

(区長)

新型コロナウイルスの感染状況については、区民の皆様に、迅速に情報をお伝えすることが重要です。また、その情報は、個人が特定できない配慮を行うなど様々な調整を行った結果、現在の公開の方法としています。感染者が発生した場合は、可能な限り関係者に個別にご連絡し対応しています。今後も、関係者はじめ区民の皆様に、適切な情報提供ができるよう鋭意努めて参ります。

(教育長)

小学校や幼稚園において新型コロナウイルス感染症の陽性者が発生した場合には、発生事実の報告及び学級閉鎖等の実施について、関係する保護者の方々に対し、情報提供を行っております。学級閉鎖等につきましては、文部科学省で示されている「学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルス感染が確認された場合の対応ガイドライン」に則して、学校内での感染状況をもとに総合的に判断しています。このガイドラインにつきましても区ホームページでお知らせして参ります。

 

(あきま)

質問の最後は、財政運営についてです。

新型コロナ感染症はこの2年、公衆衛生と医療、雇用、福祉、教育など広い分野で、日本社会のもろさを浮き彫りにしてきました。

台東区もその中にある、と5日間の審議で実感しました。

複数の委員から、保健所職員の激務、介護・福祉人材の確保の困難、教員不足、困窮者やDV・虐待の急増、中小事業者の売上減少などについての質問がありました。新自由主義がもたらした、命とくらしを支える力の弱体化が区内でも表れています。

こういう時こそ、台東区が区民に寄り添い、元気を与えるべきですが、本予算は国や都の施策の枠内、従来の延長にとどまっており、区民に希望を与える内容になっていません。それどころか、10月から75歳以上の医療費窓口負担が倍になるのに、後期高齢者医療保険料を値上げする予算です。

 

区の財政は、今年度、都交付金と区民税収の大幅な増収で、予定していた財政調整基金を取り崩さずに済み、区債発行も24億円縮減しました。そのため一般会計の基金が史上最高の512億円に達する見込みです。「金余り」状態です。

それなのに本予算では基金活用を20億円減らし、区債発行も26億円減らす引き締めです。住民福祉を使命とする自治体の財政として「不健全」ではないでしょうか。

区長は、自分の一番の仕事は区民の命とくらしを守ること、と繰り返し表明してきました。基金は「いざという時のため積み上げる」と言ってきました。区民が経験したことのない苦しみの中にある今こそ、豊かに積み上げた基金を使い区民をまもるべきではありませんか。お答えください。

 

(区長)

令和4年度予算においては、これまで培ってきた財政の対応力の下、基金を55億円活用し、コロナ禍において顕在化した課題などに積極的に対応しています。また、感染症や世界情勢の動向などから、先行きの不透明感が増していますが、社会経済状況の変化に対しても、引き続き迅速に対応していく必要があると考えています。今後とも基金などの財源を有効に活用することで、区民の生命と生活を守り、事業者を支えるための取り組みを確実に実施して参ります。

 

(あきま)

今の答弁では予算を認めることはできません。

日本共産党区議団は本委員会に予算修正案を提案しました。

第一に、コロナ感染症の対策を7.8億円増やし、対策本部と保健所体制の強化、介護・福祉・教育関係者の定期的PCR検査、医療・療養体制の拡充をすすめます。

第二にくらし応援の予算を14.9億円増やします。ふれあい入浴券の枚数を倍に、10万円の出産支援金、学校給食の無償化、介護・福祉の人材確保、コロナ対策融資の大幅な返済猶予を行います。

第三に、被爆地への中学生派遣の拡大、芸術・文化支援、再生エネの市民電力育成など、区民の希望と潤いのために2.1億円予算化しました。

以上、合計24.9億円の区民予算の増額です。財源には512億円の基金の4.8%を充当します。ご賛同をお願いし、質問を終わります。

                      以上