区役所本庁舎、区長の「改築視野に」は勇み足

台東区

区議会第2回定例会で決まった台東区庁舎整備基金条例。補正予算で早速30億円の基金を積み上げました。日本共産党区議団は、現在進めている「公共施設保全計画」との整合性に欠け、区民や議会の合意形成も不十分として、条例、補正予算ともに反対しました。

服部区長は定例会初日、「本庁舎は竣工50年、老朽化が進行」「区民ニーズの多様化に伴う事務の増大」を理由に、「改築も視野に」庁舎整備をすすめる、と所信表明しました。「改築とは決まっていない」と区の理事者は言いますが、区長が改築という表現を公にした以上、改築方針が加速することは必至です。

東上野4丁目の現区役所本庁舎は1973年に竣工。その後1985年に10階部分を増築しました。10年ほど前の2012~14年、37億円かけて大規模改修工事が行われました。

台東区は2015年度に区有施設の保全についての基本計画「公共施設保全計画」を策定。それまで建設後40数年程度での解体・建て替えを見直し、適正な保全と長寿命化・既存ストックの有効活用へと方針を転換しました。本庁舎は同計画の対象施設の一つ、長寿命化施設に入っています。

さらに2022年度には同計画の進捗を踏まえた中・長期の保存計画を策定。躯体を80年程度使うことを目標に修繕・大規模改修する方針とそれにかかる費用を算出しました。本庁舎の費用も当然この中に入っています。

26日の区議会企画総務委員会で、本庁舎を公共施設保全計画からはずすのか、という私の質問に対し、理事者は「本庁舎は現時点で使用年数80年の長寿命化施設の一つに変わりない」「改定計画の試算の中に、10年後の2035年に空調などの大規模修繕を行う費用を25億円見積もっている」と答弁しました。

本庁舎は目標使用年数の80年になるまであと30年あります。10年後の大規模修繕も計画されているなかで、区長が「改築を視野に」という発言をしたのは勇み足だったのではないでしょうか。

今回積み上げた基金30億円は、旧上野区民館売払い代金を除く公共施設建設基金(すべての区有施設の整備に充当するための基金)の前年度の積み上げ分に相当する大きな額です。また「電気代を節約するためエアコンを控えている」「夏休みの子どもの食費を考えると不安」…など、物価高騰に苦しむ区民生活・福祉への予算を圧迫します。今後、見直させていくことが大事です。

改築ありきでなく、まず

狭い・暑い環境改善を

本庁舎は狭く、職員がひしめき合って仕事をしています。空調の悪い階やPC等のケーブルが床に這うなど、安全上も問題が山積しています。これは改築以前に解決すべき課題です。

旧下谷小学校跡地の区が所有する敷地(間もなく解体が始まります)、上野警察移転後の跡地活用との関係も全く示されていません。数百億円かかる本庁舎の改築を、コンセンサスが不十分なまま、なし崩しですすめるべきではありません。