「生きさせろ」! 要介護・一人暮らし高齢者に5万円超す光熱費。
1月末に飛び込んできた相談。
要介護3、寝たきりに近い、一人暮らしの高齢女性に1月、51,354円の電気・ガス代が。生きていけない、と。
この1か月、原因の解明と対策に動いた。まとめ報告と感想を投稿する。
政府よ、東京ガスよ、「生きさせろ」!
◎1月28日(土)
86歳女性・Aさんから電気・ガス代(ともに東京ガスとのセット契約)が5万円を超えた、これでは生きていけない、と訴え。
1月分はガス38,095円・電気12,759円、合計51,354円。Aさんは要介護3、ベッドにほぼ寝たきりのため、電気毛布と電気カーペットが暖をとる主な手段であるため、電気代は納得できるという。ただガスについては、風呂は週2回のデイサービスだけ、自炊できないためコンロは使わず、湯沸かし器も手洗いと湯呑を洗う程度。ファンヒーターだけがほぼガス使用量といっていい。Aさんは、電気・ガス代の負担がかねてから重かったので、使うのは一番寒い朝と夜、2~3時間利用している。設定温度は一貫して16℃(設定温度を変える方法を知らなかった)。
それなのに1月検針で187㎥の使用量。私は夫婦二人、1日8時間以上ガスファンヒーターを使う、風呂も毎日入るがそれでも同月86㎥だったので、比較すると異常な使用量だと疑問に思った。(その後、4人家族や床屋さん・飲食店などで聴き取ると、Aさん宅の使用量は異常だと確信した)
土曜日だったので、週明けに東京ガスに問い合わせることを約束。
◎1月30日(月)
東京ガスお客様センターに電話。なかなかつながらず、仕事をつづけながら時間を見計らって3回電話し、ようやくつながる。センターは昨年同月も175㎥使用しているので間違いないはず、と回答。どうしたらこんなに多い使用の理由を解明できるのか、との質問には「できない」との対応。「それでは払えなくなり、ガスを止められたら生きていけなくなる」と主張すると、ライフバルによる現地調査を約束した。
同日午後、ライフバルがAさん宅を訪問し調査。ガス漏れやメーターの異常はない、との見解を伝えてきたので、異常使用料についておかしいと思わないか、と質問。わからない、と言うので、確かにAさんだけの使用量なのか、他の需要家が混じりこんでいないかを調べてほしいと要望。ライフバルはすぐに調査し、Aさんだけの使用である、と回答してきた。
ファンヒーターの性能に関係がないか、と思い、メーカーであるノーリツに型式を伝え問い合わせた。ノーリツは使用している機器は5.81kwという力のある機器であり、「1日8時間・強で使って月108㎥ほどになる」と答えた。
◎1月31日(火)
専門知識のある人の意見が欲しく知り合いの東京ガスOBのI氏に相談。Aさん宅に同行して見てもらった。I氏はヒーターの使い方、作動させてメーターの動きを見て、莫大な使用量になる理由についてはわからない(この日は室温が16度と、選定温度と同じだけあった)が、Aさん宅の断熱性の問題を解決することが重要だ、建築士にアドバイスしてもらうのがいい、また、東京ガス本社に行って原因解明を要望すべきだ、と助言してくれた。
◎2月1日(水)
浜松町の東京ガス本社に要望に。二人が対応。確かに高齢者の一人暮らしの使用量としては大きい、と認めながら、ライフバルが現地でガス漏れ等の異常がないことを確認した以上、できることはないと思う、という姿勢。ファンヒーターの型式とカタログを示すと、対応した一人が電卓をたたき、この機器なら1日8時間で120㎥は使用する、と発言した。Aさんが使用している機器がガスをたくさん使う型式であることは分かったが、メーカー、東ガスともに、187㎥も使用する根拠を示せなかった。
そこで、本社の指導で現場を踏み、なぜこんな量になるのか解明してほしい、と要望。その日のうちに1週間後の9日に調査にくる約束が返ってきた。この時の東京ガスの迅速・誠実な対応には敬意を表したい。
◎2月2日(木)
知人の一級建築士K氏とAさん宅を訪問。Aさんの住居は4軒長屋(2軒ずつ2棟)づくりで断熱材はなく、外壁はトタンとベニヤ板が主体で、玄関のサッシのドアは南向きでカーテンはあるのだが手が不自由なので夜カーテンを閉めることができない。北側の勝手口のサッシは経年でピタッと閉まらず、わずかだが常時隙間がある。2階にあがる階段が下の暖気を吸収してしまうという問題など、K氏は見て、2か所にカーテンを設置すること、サッシに透明断熱シートを貼ることをアドバイス。とにかくヒーターで温める部屋の体積を減らすよう助言をした。この対策は子どもさんと相談し、現在、実行中だ。
◎2月9日(木)
東京ガスの担当がAさん宅に調査に。ガス機器の配置、使用状況を確認し、メーターが正常に作動しているか、ガス漏れはないか、など検査した。しかし異常はない、という。使用量を上げているのはファンヒーターだけと、使用の方法を確認、セーブ機能を使うこと、温度を感じるセンサーが玄関からの冷気に直接触れることを避ける、など助言。やはり、187㎥ほどの使用量になる理由は解明できない。ただ、Aさん宅でその量のガスがメーターを通り消費されていることも否定できない。
これらの結果から、莫大な使用量はファンヒーターのガス消費量の大きさにあると推測される。その要因は、断熱性に欠ける長屋の構造と室内気温の低さ、ヒーターの燃焼容量の大きさなどが影響していると考えられる。Aさん宅に早朝お邪魔して、ヒーターを使用している間のガスメーターの動きを再現、データ収集するしかない。
◎2月22日(水)=Aさん宅の現地調査・1日目
午前5時5分~6時5分の1時間、3分ごとにメーター使用量(㎥)、ヒーターのセンサー感知室温(℃)、温度計の室温(℃Ⓒ)の数値を記録した。その他唯一のガス機器・湯沸かし器は不使用。
開始時間の外気温3℃、室温10℃。
5:05開始時点でのメーター使用量は392.665、センサー5、温度計10。その後、5:11…392.707、7、15。5:35…392.885、14、18。5:56…393.089、15、20。6:05…393.166、15、19。
3分ごとに0.025~0.027㎥の消費量は、1時間ほぼ一定であった。1時間のファンヒーターガス消費量0.501㎥。
◎2月23日(木・祭)
午前6~7時の1時間、3分ごとに前日同様測定。開始時間の外気温5℃、室温11.5℃。
6:00…395.666、9、12.5。6:06…395.717、13、16。6:30…395.922、16(設定温度に)、19.5。6:36…395.973、16、20。ここまでは3分間で0.025~0.027㎥消費だったが、6:39…395,994、16、20とこの3分は消費量0.021に減少。以降、0.015~0.016に減って一定の消費量に落ち着いた。センサーが設定温度に達し数分で4割程度消費量が減ることがわかった。7:00…396.102、16、19。
1時間のファンヒーターガス消費量は0.436㎥。
前日22日の朝の調査終了以降、23日の調査開始まで2.5㎥使用していた。22日は5時間ほどつけていた、と言う。これは調査の1時間0.501㎥と符合する。調査の1時間も含めると22日の使用量は3㎥となる。
2月22日は気象庁のデータでは東京の最低気温0.2℃、最高気温10.4℃。このような日でAさんは1日ファンヒーターで3㎥ガス使用しているということになる。12月、1月の寒さは1月半ばの一時期を除けばこの日は平均気温の日と言えるのではないか。
そうすると、1日3㎥×35日=105㎥となり、ヒーターのメーカーや東京ガスの試算と近い数値である。やはり187㎥は使用量としては大きすぎる。
Aさんは認知的な問題はない人であり、10時間以上使っているのに5~6時間と虚偽申告する理由はない。謎は結局解決しないままである。
ただ、2月検針では26日で115㎥となり単位消費量は82%に減少した。それでも多いが、私が毎日調査するわけにもいかない。
玄関や勝手口のサッシに断熱シート貼る、カーテン等でヒーターが暖める部屋の体積を狭くする、などの断熱対策や、セーブ機能を使う、センサーを外気に最も触れる位置から変えるなどのヒーターの使い方対策は行っているところだ。
経済的な余裕があれば、ヒーターを5.81kwから小型で新しい省エネ性能のよいタイプにすることも大事だ。
Aさんのように、週2日のデイサービス以外ほとんど寝たきりで24時間家にいなければならず、年金収入で断熱工事や省エネ機器の購入ができない人は、昨今の光熱費急騰を乗り越えることは極めて厳しい。
Aさんは、年末に給付された食料品と光熱費の高騰に対する臨時特別給付金を節約し、5万円のうち3万円とってあったので5万円を超す代金を払うことができた。しかし、2月分はいまのところ支払える目途がたっていない。
政府による、2月からのガス30円/㎥、電気7円/Kwhの支援は焼け石に水だ。
政府や東京都、台東区がこういう高齢者らに経済的支援を追加で何度も講じていくべきである。
東京ガスは前年2022年3月決算で過去最高の増収増益で株主への最高額の配当を行っている。こういう時こそ公益企業として、利益を消費者に還元すべきだ。コロナ禍の中認めてきた、ガス・電気代の分割払いの復活もやる気になればできるはずだ。